魔女と弟子 《二年目》
翌日から、夜明け前に起きて、薬を作り始め、朝食後に薬草採取に向かう。
国からも薬草は送られて来たけど、森の方が質のいい薬草が多く、薬の質のことを考えると、自分でも採取は必要になってくる。
昼食後は、また薬を作る。感染症は、高熱が出るらしく、解熱薬を多めにして、体力回復のために、回復薬も多めに作っておこう。
夕食後にも、寝る前まで薬を作り、お風呂に入って、あとは寝るだけ。
薬は、1日3回出来上がったら納品するを繰り返して、かなりの数の薬を納品できたと思う。
そういう生活を数週間、ずっと続けていたのに、感染症が落ちついたという報せが、なかなか届かなかった。
たまに外から遊びに来る鳥達も、感染症については知らないみたい。
こんなに薬を渡してるのに、感染症は、まだ抑えきれないのかな。何も連絡がないと、不安な気持ちが強くなってくる
私の薬が効かないの?
それとも、まだ数が足りないだけ?
苦しんでいる人はたくさんいるの?
みんなが、早く平穏を取り戻せるように願い、私は、ずっと薬を作り続けていた。
「ルーナ、お前食事は取ってるようだが、ちゃんと寝ているか?顔色が悪いぞ」
朝食を食べていると、ラピスが私の顔を見て心配そうに聞いてきた。
レントも心配そうに見ている。
「大丈夫だよ。ちゃんと食事も睡眠も約束通り取るようにしてるよ。」
私は笑顔を作って、ラピスに答える。
「無理するなって約束もあるからな。ちゃんと、レントか俺を頼れよ。」
レントも頷いている。
「わかってる。無理はしないって約束も守るよ。二人とも心配しないで。」
私は、二人を見て、また笑顔を作って見せた。
(はぁ…二人に心配させちゃったな。ダメだな私。
一度、手紙で感染症の状況も確認してみようかな)
朝の分の納品と一緒に手紙を出してみる。すると、感染症は少しずつ落ちついて来たが、まだもう少し薬の納品を続けて欲しいと返事が届いた。
少しずつ落ち着いているなら、よかったな。私の薬が効いてるってことだよね。それなら、もう、あと少し頑張ってみようかな。
♢♢♢♢♢
【レント視点】
「レント少しいいか?」
朝食後、魔女が食堂を出ると、ラピスが俺に声をかけてきた。
「ルーナのことだが、無理をしないよう注意して見ててくれないか。あいつは、自分のことは後回しだからな。」
「わかった。ちゃんと気をつけておくよ。」
最近の魔女は、疲れてるようで俺も気になっていた。
いつもは、眩しいくらいの笑顔で、話すことも好きなのに、食事中もボーとしていることが増えた。
さっきも無理して笑って、笑顔に陰りが見えた。
魔女には、いつも笑顔でいて欲しい。
元気のない魔女を見ていると、こっちまで元気がなくなる。何だかモヤモヤして変な気持ちだ。
外の事なんて、放っておけばいいのに、薬だっていつも納品してるんだから、増やす必要ないだろう。いつも人のことばかりで、本当にお人好しだ。
疲れには、甘いものがいいと言うから、昼は、魔女の好きなパンケーキでも、作ってみるか。
そんな呑気に考えていた俺は、本当に魔女の事を何もわかってなかった。
ラピスにも忠告されていたのに、まさか、魔女がさらに睡眠時間を削ってまで、無理をしてるなんて考えもしなかった。
そして、その3日後、魔女が倒れた。




