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「ごめんね」のその先は   <魔女と弟子の最後の時の過ごし方>            作者: 文月みい


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少女が魔女になった日①

選んでくれてありがとうございます。よろしくお願いします。

 昔々、魔女の森と呼ばれる森の奥深く、一人の魔女が住んで居ました。


 魔女は元々人間で、ある村で両親と二つ上の兄と、生まれたばかりの妹と、貧しいながらも幸せに暮らしていました。


 そんなある日のこと、村に一人の魔法使いが現れました。黒髪に紫目のとても整った顔立ちの美しい男でした。魔法使いは、人探しの為に村を訪れていましたが、目当ての人がどこにいるか知ってるかのように、迷うことなくある家を目指して歩きます。

 家に着き扉を叩くと、中から少女が出てきました。まるで海を思わせる透き通った青い瞳に、青みがかったグレーの髪。家の仕事を手伝って外で過ごすため、うっすら陽に焼けてはいますが、とても可愛らしい少女です。

 少女は、魔法使いを前に大きな目を、さらに大きく見開いて、じっと魔法使いを見ています。魔法使いも、しばらく少女の姿に驚いていましたが、ハッと気づいたように笑顔を作り少女に声をかけました。


「こんにちは、可愛いお嬢さん。僕は魔法使いのルドルフ。ちょっと人を探していてね。さっきこの村に着いたんだ。」


 笑顔で話しかける魔法使いに、少し警戒しながらも、少女は答えます。

  

「えーと、こんにちは、魔法使いさん。人を探すなら村長さんに聞くのがいいと思います。案内するので、少し待っててもらえますか?」


 少女は、そう言うと家の中に戻るため扉を閉めようとしますが、咄嗟に魔法使いが「待って!」と声を上げました。


「もう探し人は見つかったんだ。」


振り返った少女を見て魔法使いは言いました。


「君を探していた。僕の弟子になって欲しい。」


驚く少女に、魔法使いは満面の笑顔でそう告げました。

 扉の方が騒がしいため、何事かと母が様子を見にやって来ると、魔法使いは、さらっと挨拶をし、村に来た理由から少女が目当ての人で、弟子になって欲しいことなど伝えます。説明を聞いた母親は驚いていましたが、取りあえず家の中に魔法使いを招き入れ、少女へ父親を呼んでくるよう伝えました。


 家族全員揃ってから、魔法使いはもう一度初めから説明しました。母親は困惑して、父親は難しい顔をしていました。兄は反対して、魔法使いを睨んでいます。少女もそんな家族と魔法使いを見て不安げにしていました。


「これは黙っていても、いずれ知ることになるので話しますが、僕の弟子になることは決定事項なのです。王命と同じで拒否することは出来ません。」  


王命と同じという言葉に誰もが息を呑みます。


「僕は、結界の魔法使いです。」


その場が静まり返り、驚きの顔で魔法使いを見つめます。

 結界の魔法使いとは、たった一人で、この国に結界を張り魔物や外敵から国を守っている魔法使いです。その弟子になるということは、次代の結界の魔法使いになるということです。


「なぜ、妹なんですか?うちは平民で魔力なんて持っていません。それなのに魔法使いの弟子なんて無理に決まってます」


 兄は納得出来ないとばかりに、魔法使いを睨みつけ声を荒げます。


「結界の魔法使いは平民から選ばれるのです。僕も元平民です。僕たち結界の魔法使いは、弟子となる平民の魔力持ちを感じることが出来ます。」


「それでは…この子は…魔力が…」 


母親が何とか声を絞りだし魔法使いに問います


「魔力を持っています。」


その言葉に全員が、少女を見て固まります。


「そんな、この子が、罪人…」


 この時代、魔力は王族や貴族が持っているもので、平民が魔力を持つことは罪だと言われていました。実際、平民で魔力持ちは、ほぼ生まれません。昔は、魔力持ちの平民は罪人扱いされ、最悪処刑されることもありました。今は、処刑されることはありませんが、それでも罪人と呼ばれ不遇な扱いを受けることは多かったのです。


「僕の弟子が生まれたことは、王家はすでに知っています。僕の後継となる魔法使いの家族には、その見返りとして報奨金が与えられることになっています。」


 その言葉に少女が一番に反応しました。その様子をみて、父親が魔法使いに言いました。


「事情はわかりました。少し家族で話す時間が欲しいので、明日また来て貰えますか。」


 父親の言葉に、魔法使いは申し訳なさそうな顔で答えました。

 

「すみませんが、僕に与えられた時間は今日だけなのです。少しだけ時間を作ることは出来ますが、今日中に彼女も一緒に戻らねばなりません。」


 弟子になることは決定事項ならば、家族と過ごす時間はあと僅かということです。家族は納得は出来ませんでしたが、少しでいいと話す時間もらい、その間、魔法使いは外で待つことにしました。


 家族だけになると、両親も兄も少女に逃げるように言いましたが、少女は報奨金が貰えるなら受けると言って聞きません。

 結界の魔法使いについて、国を守っていることは知っていますが、詳しいことは謎で、その生活やどんな人なのか誰も知らないのです。もし、少女が魔法使いになるなら、生きている間に家族に会えることは無いということなのです。 

 まだ14歳になったばかりの少女にとって、大好きな家族に会えなくなることは辛く悲しいことで、知らない男の人と一緒に行くことにも恐怖心がありました。

 それでも、報奨金の話があった時点で、受ける以外の選択肢はなかったのです。少女は、これから家族が楽に暮らせるなら、喜んで魔法使いになろうと決めました。

 結局、逃げても捕まってしまうリスクを考えると、どうやっても受けるしかなく少女と家族は少しでも一緒に居られるように別れの時間を過ごすことに決めました。


 日付の変わる少し前、少女は小さな鞄を片手に持ち、家族と共に外で待つ魔法使いの元にやって来ました。


「僕と一緒に来てくれますか?」


魔法使いは少女に尋ねます。


「はい、私を弟子にしてください。」


少し緊張した面持ちで少女は答えます。


「これからの僕の人生全てを使って、君に魔法使いとしての知識を教えるよ。」


魔法使いは静かに答えます。


「よろしくお願いします。」


 少女は、ペコリと頭を下げて魔法使いに告げた後、家族に向き直り、一人一人と抱き合い最後の挨拶を済ませます。

 お待たせしましたと少女が魔法使いの隣に立つと、魔法使いは少女を見つめて言いました。


「最後の時まで、僕は君を大切にすると誓おう」


その言葉は、余りに小さく少女にも聞こえませんでしたが、「なんですか?」と聞き返す少女に魔法使いはニコッと微笑んで、「なんでもないよ。」と告げると、あっという間に転移魔法を発動させたのでした。

 

 その日、日付の変わる数分前、ある村から一人の少女が姿を消しました。それから、少女を見た人は誰もいません。


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