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刺殺された地下アイドル、悪役令嬢に転生する ~婚約破棄寸前ですが、前世の人間観察スキルで破滅ルートを全部潰します~  作者: 白昼夢


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2/3

【第2話】悪役令嬢ですが、人の心を見るのが仕事でした



――まず、私は現状を冷静に分析した。


敵が多い。

多すぎる。


この世界のルクレツィアは、

感情のままに怒り、

力でねじ伏せ、

「公爵令嬢」という肩書きに胡坐をかいて生きてきた。


その結果がこれだ。


味方ゼロ。

信用マイナス。

婚約破棄カウントダウン。


(……でも)


私は、地下アイドルだった。


地下アイドルは、

嫌われた瞬間に終わる。


だから私は、

「好かれる努力」じゃなく「嫌われない努力」をしてきた。


――やることは、決まっている。


敵を減らす。

一人ずつ、確実に。


朝食の時間。


私は、わざと少し早く食堂に向かった。


そこには、いつも私を警戒するメイドたちがいる。

特に、古参のメイド長・マルタ。


(この人が、屋敷の空気を握ってる)


地下アイドル時代、

現場を仕切っているのは“表に出ない人”だった。


私は席に着くなり、言った。


「……マルタ。昨日の紅茶、とても美味しかったわ」


一瞬。

本当に一瞬、彼女の動きが止まった。


「……ありがとうございます、お嬢様」


声は硬い。

でも、視線が揺れた。


私は畳みかけない。

笑顔も作らない。


ただ、続ける。


「今まで、私はあなたたちを“当然の存在”だと思っていた。

それが、どれだけ傲慢だったか……今なら分かるわ」


沈黙。


メイドたちが、互いに視線を交わす。


私は、頭を下げた。


「ごめんなさい」


それだけ。


命令もしない。

許しを乞わない。


結果。


マルタは、深く礼をした。


「……お嬢様。

私どもは、仕事をしているだけです。

ですが……そのお言葉、確かに受け取りました」


(よし)


この瞬間、屋敷の“裏の空気”は、私の味方になった。


次は、家族。


父は政治の人間。

感情は通じない。


なら、結果で語る。


母の部屋を訪れた私は、椅子に座るなり言った。


「私は、殿下との婚約が破棄されるでしょう」


母が、息を呑む。


「……ですが、ヴァルフォード家に傷がつかない形で終わらせます」


断言。


「どういう意味?」


「私が“捨てられる”のではなく、

“自ら身を引いた”形にします」


地下アイドル時代、

卒業発表は“負け”じゃない。


演出次第で、

次の仕事に繋がる。


母は、私をじっと見つめた。


「……あなた、本当に変わったのね」


「はい。もう、感情で動きません」


(これで、家は敵に回らない)


最後に、最大の地雷。


ヒロイン――エミリア。


彼女を呼び止めたのは、人目のある中庭だった。


「エミリア。少しだけ、話せる?」


彼女は怯えた。

当然だ。今まで散々いびられてきたのだから。


私は、先に言った。


「安心して。怒鳴らないし、責めない」


彼女は、戸惑いながら頷いた。


「……ごめんなさい」


最初に謝ったのは、私だった。


エミリアの目が、大きく見開かれる。


「あなたが怖かったと思うこと、全部、私の責任よ」


言い訳しない。

正当化しない。


すると、彼女の肩が、ふっと落ちた。


「……殿下が、優しくて……でも……」


ぽつり。


「優しいのに、逃げ道がなくて……」


(……やっぱり)


私は、確信した。


この子は、奪っていない。

ただ、巻き込まれているだけだ。


「エミリア」


私は、静かに言った。


「あなたは、誰かの“所有物”じゃない」


彼女の目に、涙が浮かんだ。


好意って、押し付けた瞬間に暴力になるのよ。



その日の夜。


私は一人、部屋の窓辺に立っていた。

カーテン越しに見える庭園は静かで、まるで何事も起きていないかのようだ。


使用人は、もう私を敵として見ていない。

家族は、私を「失敗作」ではなく「判断待ちの駒」として見ている。

エミリアは――少なくとも、私を恐れてはいない。


(……整った)


盤面は、綺麗に整った。


だが。


一番厄介な駒だけが、まだ動いていない。


――王太子、アーヴィン。


彼はきっと、こう思っている。


「婚約破棄を告げれば、

 傲慢な悪役令嬢は泣き崩れる」


あるいは。


「最後まで往生際の悪い女を、

 皆の前で断罪して終わらせる」


(……残念だけど)


私は、そんな役はもう引き受けない。


地下アイドルのステージは、

いつも一発勝負だった。


照明が落ちた瞬間、

言い訳は許されない。


――そのとき。


控えめなノック。


「お嬢様……」


メイドの声が、わずかに震えている。


「殿下より、

 明日の昼、学園大広間にて正式な場を設けるとの通達が……」


やっぱり。


婚約破棄イベント。

公開処刑のつもり、だろう。


私は、ゆっくりと振り返り、微笑んだ。


(……いいわ)


だったら、

その舞台――


私が、もらう。


「主役は、最初から最後まで――私よ」


明日。


泣くのが誰か、

それを決めるのは――王太子じゃない。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

少しでもスッキリしていただけたら嬉しいです。

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