表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
刺殺された地下アイドル、悪役令嬢に転生する ~婚約破棄寸前ですが、前世の人間観察スキルで破滅ルートを全部潰します~  作者: 白昼夢


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/3

【第1話】刺された先は、すでに詰んだ世界でした

「……推しが、こんな近くに……」


その声は、震えていた。

歓声の余韻がまだ耳に残るライブハウスの裏口。

物販を終え、スタッフに囲まれながら移動していた私――

地下アイドル《ミルフィーユ☆ルナ》こと、三坂ルナは、その声を聞いた瞬間、全身が強張った。


距離が、近すぎる。


「ありがとうございます、でも――」


言い終わる前に、腹部に衝撃が走った。


何が起きたのか理解するより先に、熱が広がる。

痛みは遅れてやってきて、息が詰まった。


「……あ……?」


視線を落とすと、赤。

私の衣装を汚す、現実感のない色。


「ごめんね……ルナちゃん……」


男は泣いていた。

笑ってもいた。


「独り占めしたかった……誰にも取られたくなかった……」


(……ああ)


理解した瞬間、背筋が凍る。


この人は、ずっと前からここにいた。

ライブにも、配信にも、SNSにも。


「応援してるよ」

「ずっと推すから」


そう言っていた、ファンの一人。


――距離を、間違えた。


地下アイドルは、近い。

手が届く距離で、夢を売る。


その代償が、これか。


視界が揺れ、床に崩れ落ちる。

スタッフの悲鳴が遠くなる。


(私、結局……)


大きなステージにも立てなかった。

売れもしなかった。

それでも必死に笑って、歌って、媚びて。


(……これで、終わり?)


スポットライトより暗い赤に包まれながら、

私の意識は途切れた。



「――お嬢様! お目覚めですか!?」


次に目を開けた時、視界いっぱいに白が広がっていた。


柔らかい天蓋。

絹のシーツ。

知らない匂い。


「……?」


声を出そうとして、違和感に気づく。

喉が、若い。


慌てて手を持ち上げると、

そこにあったのは、細く白い指。


「……え?」


混乱する私の頭に、急激な痛みが走った。


――記憶が、流れ込んでくる。


ここは、異世界。

貴族社会。

私は、公爵令嬢 ルクレツィア=ヴァルフォード。


王太子の婚約者。

名門中の名門。

魔力適性、最高ランク。


(……転生?)


一瞬、思った。


(勝ち組じゃん)


だが、その考えはすぐに粉々に砕けた。


「お嬢様……その……殿下が、また……」


言葉を濁すメイドの表情が、すべてを物語っている。


頭の中で、整理する。


ルクレツィアは――

傲慢。

高慢。

短気。


ヒロインをいびり、

使用人を道具扱いし、

婚約者である王太子を束縛し続けた。


(……あ)


悪役令嬢だ。


しかも、

すでに終盤。


前世を思い出したのは、

全部やらかした後。


昼、応接室に呼び出された。


王太子アーヴィンは、私を見るなり眉をひそめた。


「……君は、本当に変わらないな」


声は冷たく、感情がない。


「正直に言おう。君と話すのは、苦痛だ」


胸が、きゅっと締め付けられる。


「私は、君に何度も忠告した。

 だが君は、エミリアを傷つけ続けた」


エミリア。

ヒロインの名前。


(……詰んだ)


これは、前触れだ。

婚約破棄イベントの。


「近いうちに、正式な場で話をする」


つまり。


公の場で、

婚約破棄。

断罪。

破滅。


地下アイドル時代で言えば――

炎上後、運営から切られる瞬間。


部屋に戻り、私はベッドに腰を下ろした。


(なんで今なんだよ……)


転生した意味、ある?


もっと早く思い出していれば。

一度も人を傷つけていなければ。


(……でも)


私は、拳を握った。


地下アイドルとして生きてきた私は、

ずっと崖っぷちだった。


売れない。

忘れられる。

代わりはいくらでもいる。


だから、

人の顔色を見て、

空気を読んで、

生き残ってきた。


(詰んでる、けど)


私は、まだ生きている。


刺されて、

殺されて、

それでも、ここにいる。


(――だったら)


この世界でも、

生き残ってやる。


婚約破棄?

断罪?


(上等じゃない)


地下アイドルの人生、

ナメないで。


(詰んでる。でも、私はまだ死んでない)


その瞬間、

私の中で、確かにスイッチが入った。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

少しでもスッキリしていただけたら嬉しいです。

よろしければ、評価や感想をいただけると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ