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転生デビュー 〜おバカ王子とツンデレ悪役令嬢のジレキュンな日常〜  作者: 春風悠里


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51.輪廻転生(ニコラ)

 春休みも残り一週間。

 俺――白石晴真(はるま)は、鏡の前で決意を固めていた。


「よし……高校デビュー、完璧に決めてやる!」


 笑顔の練習、髪のセット、完璧だ。本番もこの調子でいこう。……なぜか母さんが廊下から覗いている。


「晴真、今日はどこかに行くの?」

「行かない。これから惰眠を貪るところだよ」

「そう……。さすがに入学式では整髪料をつけないでよ」

「最初が肝心なのに」

「まったく。お母さんの椿油を貸してあげるから」

「仕方ねーなー。入学式はそれで我慢するか」


 ばばくさい。と思っても言わない、やさしい男なのだ、俺は。


 ――ガチャリ。


 玄関の扉の音がする。


「おーい晴真。大量の漫画をもらって来たぞー」

「やったぜ」

「あら、惰眠を貪るんじゃないの?」

「漫画のが大事だ」


 父さんは昔、幼い頃にトラックにひかれそうになった。それを男子高校生が助けてくれたという。その人は亡くなり――、毎年、父さんは線香をあげに行っていた。そのご両親も高齢になり、家を処分することになって、「あの子の遺したものを息子さんに」と譲ってもらったらしい。

 

 遺品だと思うと少し怖いものの、漫画は読みたい。読み終えたら、父さんの部屋に置いといてもらおう。


「まだまだあるぞ。車に積んである。一緒に運んでくれ」

「マジか」


 漫画好きの男子高校生だったのかもしれない。目の前で小さな子がトラックにひかれそうになっていたとして、俺に助ける勇気は正直、ないと思う。


 漫画好きの、すごい人だったんだな……。


 しばらく父さんと一緒に段ボールを運び込み――。


「すごい量だな……」

「お前の春休みが潰れるな」

「望むところよ!」

「特に面白いのは、父さんに教えてくれ。読みたいからな。あ、汚すなよ」

「もちろんだよ。化けて出られたら困る」

「……化けて出てくれたら、お礼が言えるんだけどな」


 父さんの声が少しだけ沈む。


 今のは失言だった。「申し訳ありませんでした」と心の中で父さんの命の恩人に謝る。それから、早速ひょいひょいとカッターナイフを持ってきた。


「……開けてみてもいい?」

「まったく、開ける気満々だろう。いいぞ」


 テープを切ると、やや黄ばんだ漫画がぎっしりと詰まっていた。折れもなく状態はいい。几帳面な人だったんだろう。


 うむ。これはいい品揃えだ! 読んでみたかった昔の大ヒット作がたくさん……!


 ん?

 こっちの段ボールの中身はゲームか?


 一番上のパッケージに、大きな付箋が貼ってある。


『亡くなる直前に遊んでいたようです。友人とのメッセージのやり取りがスマホに残っていたそうです。感動したとのことで、ぜひそう伝えてとのことでした(昔のゲームなので動かないとは思いますが)』


 ……代筆のようだな。高齢らしいから、誰かに書いてもらったのだろう。


 ん? なんだ?

 付箋の隙間から見えるゲームの絵柄、見覚えがあるような……。


 付箋をはがす。

 イラストを見た瞬間――胸がドクンと鳴った。


『星が空へと昇る世界で 〜Last Memory〜』


 俺は、この世界を――知っている?


 特に、レッドブラウンの髪からウサギ耳を生やした少女がやけに気になって……。


「どうした、晴真」

「このゲームを知ってる気がして……ちょっと、スマホで調べる」


 部屋に戻ってスマホを持ってくると、タイトル名で検索する。情報が書いてあるページに飛び、キャラ紹介を確認する。


「ウサギ耳はバレッタなのか。それに、今のゲーム機でも出てるんだな」


 このゲームメーカーの信者は多いようだ。昔のゲームも、新しいゲーム機が出る度に移植されているらしい。


「父さん。今月の俺の小遣い返すからさ、これダウンロードしてもいいかな。たぶん昔のゲームは今のパソコンじゃ、動かないと思う」


 なぜか焦燥感が募る。

 思い出さなければ、と。


「うーん。命の恩人が最後にプレイしたゲームか。よし、特別に買ってやろう」

「やった」



 そうして俺は思い出したんだ。

 あの、かけがえのない日々を。


 俺はあの世界にいた。


 彼女と出会い、恋をして、共に生き、そして――見送られた。


 輪廻転生ってあるんだな。


 かつての婚約者で。

 結婚相手で。

 最愛の彼女。


 また、会いたい。


 この世界で――もう一度、君に。


 

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