表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生デビュー 〜おバカ王子とツンデレ悪役令嬢のジレキュンな日常〜  作者: 春風悠里


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

50/53

50.かけがえのない日常

 授業も始まり、セイナがいるのも当たり前となり、日々の流れが少しずつ落ち着いてきた頃。俺とラビッツは湖へと足を向けた。


 春の光が水面に反射し、柔らかな風が俺たちを包む。二人だけの静かな時間だ。誰かが来てもいいように、木陰で人目を避ける。


「ラビッツ、ありがとな。いろいろ」

「なによ、あらたまって」

「たくさん助けられたなって」

「そんなの……私だって」


 ラビッツの左手の薬指には、いつも通り俺のあげたビーズリングがはめられている。決して高価ではないのに、大切にしてくれているのを感じる。


「手、繋いでいいかな」

「……っ、皆の前では繋がないんだからねっ」

「分かってる」


 俺がどうしてここに来たか。


 それは、秋から一度もしていないキッスをしたいからだ!!!


 と、叫びたいけど叫べない。


 ムードづくりゼロ点と言われるのが目に見えているからな。一応、木陰まで来るのも拒否はされていないし、俺の気持ちを察してくれている……のかもしれない。


「ほんとに感謝してるんだよ。今を迎えるために、ラビッツにはたくさん支えてもらった」

「……あんた、よく泣いてたもんね」

「涙腺弱いんだよ! 悪いかよぅ」

「私も弱いし。悪くはないわよ」


 リュークとセイナが想いあっていることに気づいてから、どうしても耐えられず……ラビッツと一緒にダンスを練習したあの部屋で、実はよく泣いていた。俺が「あとから寮に戻るよ」と言って離脱するとラビッツもついてきて――、一緒に泣いていた。


 はー……、かっこ悪い。


 いや、ここでしょぼくれてはいけない。そう、今こそムードづくりをすべき時なんだ。


「俺、もうほんとに何度も何度もラビッツのことが好きだと思って。暗くなりそうな時にも明るい気持ちにさせてくれるしさ」


 ラビッツの顔がだんだんと赤くなる。


「笑った顔も、怒った顔も、拗ねた顔も、全部大好きだ。全部愛しているんだ」

「う、うん」


 ラビッツの両肩に手を添える。


「ほんとにさっ、すごくすごく好きでっ……」


 我ながら語彙力が消え失せている自覚はある。可愛いラビッツを見ていると、頭がおかしくなる。


「ずっと我慢してた。今はそんな時じゃないって。先のことを考えて辛かったのもあるけど、やっぱりラビッツのことが好きだから何もしないのも辛くて」


 語彙力皆無だな!?

 気持ちは伝わってると信じよう。


「ま、待って。落ち着いてっ」

「待てない。もういいよな。もう我慢したくないんだ」

「わ、分かったからっ」


 俺が顔を近づける度になぜか遠ざかるぞ!?


「た、頼む、ラビッツ」

「ちょっ、ちょっと待っ……」


 ラビッツが後ろへと体勢を崩した。


 ――ドサッ。


 すかさず、倒れきる前に腕を差し入れた。覆いかぶさる形になってしまう。


「だ、大丈夫か」

「まままま、待って! わ、私にだって心の準備ってものがっ、あ、い、嫌ってわけじゃなくてっ。で、でもっ、あのねっ」


 夏には何度もキスしたのに。なんで遠ざかったんだ。もしかして俺のこと、もう……。


「ま、待って、泣かないで! 違うの、まだ早いと思うのっ。そ、それに、ここ外だし!」


 外だけど……人目はない。

 人目がない場所では以前はキスも受け入れてくれた。やっぱり俺のこと……。


「そ、それに、前世の記憶はあるけど、ここでは王子と令嬢だし! こ、ここ、婚前交渉は駄目だと思うの!」


 ……ん?


「そ、そりゃね、あ、あんたも男の子だしね、わ、分からなくもないけどっ、で、でもねっ」


 ラビッツの顔は真っ赤で、目の焦点が合っていない。手を突っ張って必死に距離を取ろうとしている。


「だ、駄目なんだからっ!」


 ……そうか。

 今、ラビッツの頭の中で、俺とラビッツはそうなっているのかもしれない。それはそれで萌えるな。


「そうだな。婚前交渉はよくないな」

「そ、そうよ」


 俺はそんなに興奮しているように見えたのか。


「キスだけならいいかな」

「う、うん……」


 小さく頷いてくれる。


 その仕草に導かれるように、そっと顔を近づける。距離がゆっくりと縮まり、彼女が目をつむった。


 ――唇が触れる。


 ラビッツの温もりに愛おしさが増す。というか、押し倒されているラビッツの図に興奮してきた。


「この体勢だと、ラッキースケベ事件を思い出すな」

「……あんたは本当に余計な一言が多すぎるわ」

「他の場所も触っちゃ駄目か?」

「もうっ、駄目に決まってるでしょ!」


 そう言いながらも、ラビッツの腕が俺を引き寄せた。


「私も好き」


 もう一度、唇が触れた。


「ラビッツ……!」

「じゃ、そろそろ行きましょう。はい、起こして」

「もう一回したい。ついでにもう一回好きだと言われたい」

「また今度ね」


 悪戯っぽく微笑まれた。そうハッキリ言われては、何もできない。


 ツンで、デレで――、

 そして大好きな俺の恋人との日常。


 それがこれからも続くと信じて、ラビッツと二人、並んで歩き出した。


「早くラビッツと結婚したいな」

「あなた次第でしょ」


 そっと空へと手を伸ばす。 

 願いの光が二つ、青空へと溶けていった。


 願いの光は、別名「願い星」。

 星が空へと昇る世界。

 ここは、願いが叶う世界だ。


 突然、人生が終了してしまった俺たちや、前世を覚えていないかもしれないけど、他の皆も叶えられなかった願いを胸に、この場所へ辿り着いたのかもしれない。


「二人きりの約束、する?」

「約束?」

「そう。幼い頃の三人の約束じゃなくて、今の私たち二人だけの約束」


 ラビッツと小指を絡ませ合う。


 ――ずっと一緒にいよう。


 ここは、願いを叶えて次へと向かう世界。あまりにも唐突に終わってしまった前の人生。好きだった世界で見つけた、奇跡のような輝き。


 君とここで、歳を重ねていきたい。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ