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転生デビュー 〜おバカ王子とツンデレ悪役令嬢のジレキュンな日常〜  作者: 春風悠里


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40/53

40.アナザーストーリー2

「パトロール隊の活動、すごく楽しそうだね」

「ああ。顧問の言ってた通りになったな」


 ニコラとは学科が違うことだし、俺はパトロール隊室に入る前に、いつもこの旧校舎の屋上へ寄ってセイナに会っている。入口近くを上から眺めながら雑談し、パトロール隊のメンバーが集まった頃に俺も部屋へと入る。


 案外皆、上は見ない。


「先生も、トラちゃんのことは意外だったみたい」

「そうなのか?」

「ネコキャラがいるとは聞いてないな……とかなんとか言ってた。なんだか寂しい。先生だけは、私と同じものを見てるんだってずっと信じてたのに」

「前世を覚えていると」

「うん」

「俺も寂しいよ。俺の知ってるニコラとラビッツとはさ、やっぱり少し違うんだよ」

「あははっ、寂しい同盟だね」


 伊達に幼馴染をやってたわけじゃない。というか、ニコラは隠さなさすぎる。『飯の美味い世界でよかった』とか、隠す気があったら言わねーだろ。


「ま、バカなままだけどな」

「いいな、羨ましい。私には仲のいい友達なんていなかったから」

「そうなのか?」

「うん。学園でも、仲がよくなる前に……ね」


 こんなに毎日のように会っているのに、まだセイナについて何も知らないんだなと思う。


「変な丁寧語を使うからか? 今はなくなってきたけどな」

「し、失礼だよぉ。だって、私すぐに距離感間違えちゃうから。それで引かれちゃって、ひとりぼっちになっちゃうの。だから、気をつけようとしてるんだよ」

「そんな理由か」

「うぎゅぅ……」


 金持ちの愛人の子。

 母親も奔放。


 父親の金でお手伝いさんが世話をしてくれたものの、愛に飢えている。だからこそ、距離感を間違えるんだろう。


 家庭教師もつき頭はよく魔法の才能もあったので、学園に入って学園警備隊の話を持ちかけられ、ニコラの父親と共に活動し……死亡、か。


「ま、話したいように話せばいいさ。皆、いい奴らだしな。距離感だっていくらでも間違えたらいい。フォローしてやる」


 そういえば、ルリアンも丁寧語で話す。あっちは祖父母にそう教育されたらしい。家族相手でも誰に対してもそうするようにと。もう癖だと言っていた。


「うん。その時が来たらそうするね」

「皆に姿は見えなくてもさ、参加したらどうだ」

「……そんなの、リュークくんが誰もいない空間に向かって話す、変な人になっちゃうよ」

「事情を皆に俺から伝えればいい」

「それだけは駄目。皆、私に同情しちゃう。前の時と同じになっちゃう。バルトくんの時に天に還れなかったのは……きっと、そういうことなんだよ」


 それでもさ。

 パトロール隊の話をする時、いつも羨ましいって顔をするからな。


「そっか。じゃ、ひっそりとついてきな。近々、面白い企みがあるらしいしさ。その時になったら一緒に来いよ」

「だから、私のことが見えるのはリュークくんだけなんだってば」

「話しかけたりしねーよ。でも、近くで見た方が楽しいだろ」


 セイナが迷っている顔で「うぎゅー」と言いながら俺を見たり、ぎゅっと目をつむってみたりと表情をコロコロと変える。


「私、旧校舎以外の場所だとふわふわしちゃうんだよ。先生はほんとに生きてるみたいだけど、私は違うの。透けてふわふわするの」

「分かった。ふわふわするんだな。心の準備をしておく」

「う、うぎゅぅ。行くかどうかは分からないからね!」

「ああ。どうせふわふわしているなら、俺の肩にでも乗っとけ。肩車してやる」

「うぎゅ〜……っ」


 どこか不安気で、でも期待しているように見えた。


 ◆


 それから、セイナはたまに俺たちの活動に参加するようになった。


 台車レースの時も一緒に遊んだ。


「俺の速さについて来れるかな!」

「リュークくん、はっや〜いっ」


 セイナは俺の台車に乗ってはしゃいでいた。重さはまるで感じなくて、確かにふわふわしていた。


 好きなお団子発表の時も俺の隣でふわふわしていた。


「俺はピリ辛団子だ。甘い団子が多い中で辛さが光ったな」

「私はトラちゃんと一緒! 炭酸レモン団子が食べてみたいと思いましたっ」


 交流立食会では、ドレスがなくて恥ずかしいからと入ってこなかった。


 ――だから翌日、俺たちは旧校舎の屋上で待ち合わせをしたんだ。

 


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