表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生デビュー 〜おバカ王子とツンデレ悪役令嬢のジレキュンな日常〜  作者: 春風悠里


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/48

28.二人のボトル

 ラビッツと共に校舎の裏側にまわってみる。人気のないところの方が、生徒会長のボトルはない気がしたからだ。せっかくならゲームから外れてみたい。


 ボトルがどこに着地するかは、中身を入れた学生の意識も多少は反映する。誰にも見つけてほしくないと望む者のボトルは植え込みの中にある、といった具合だ。


「お。二つあるけどどうする?」


 人通りの少ないそこで、植え込みの間からチラチラと虹色の光が見えた。


「いいじゃない、それにしましょう」


 ラビッツが片方のボトルを拾う。指先が触れた瞬間、ボトルの虹色の光は静かに消えた。淡い光だけをわずかにまとう。俺も片方を拾い上げ、中を確認する。


 丁寧にたたまれた白いハンカチ一枚とヒントのメモ用紙。


『生徒会長』


 その文字を見てガガーンと崩れ落ちた。


「やっぱり生徒会長じゃないか……。なんでこんなところにボトルがあるんだよ。生徒会長なんて目立つことやってんのにさー。お、ハンカチにはボトルの刺繍がしてあるな。あー、ヘタでごめんってメモに書いてある。なるほど、自信がなかったからボトルがここに来たのか……」


 中に入れる宝物は、さすがに自由にすると金額が高くなる。購買でもこの時期には手作りキットがたくさん販売されていて、いくらまでと金額の上限も決まっている。


「私のはポストカードね。素敵な絵が描いてあるわ。ドーナツ岩があるから学園の湖ね」

「へぇ、綺麗だな」

「で、これ見て」

「おっ」


 ヒントの単語は『副生徒会長』だ。


「仲いいな」

「二つ並んでたものね」


 ゲームでは、リュークのボトルの相手はルートに入っている女の子になる。それ以外のヒロインが誰のボトルを手に取ったのかは分からなかった。


「なんにせよ、リュークとラビッツのルートはなくなったな。よかった……本当によかった」

「え。まだ可能性があると思ってたの?」

「だって怖いじゃんかよ。リュークはほら、カッコいいしさ」

「ん……そうね。カッコいい、わよね。でも、ほら、あんただって、その、あの、カ、カ、カ、ガ、ガンバッテるじゃない? ほら、王子のお仕事とか。えっと、鍛えてもいるみたい、だし?」


 なんでそんなにシドロモドロなんだ? 日頃ツンツンしているから、誰かをフォローするのも苦手なのかもしれない。


「ありがとな。確かに……前世よりも頑張ってる。そうすることでしか見えない景色もあるんだなって、やっと分かったよ」


 顧問には「楽しんだ先でしか見えない景色もある」と言われたけど、俺にはこっちの方が実感している。


「誰かの力になることの嬉しさとかさ。前にも旧校舎の屋上でそんな話をしたけど、今の記憶を持って元の世界に戻ってみたい気もするな」

「私もそうね。でも……戻れないわ」

「だな。ただ、ラビッツと結婚できない世界には、戻りたくないけどな」


 あの時は聞けなかったこと。


「ラビッツに、命の終わりの記憶はあるのか?」

「……あるわ」

「そっか。俺もだよ」


 やっぱり、あるか。


 人生は一度きり。

 終えてしまえば、こうやって転生しても過去の自分はどこにもいない。それまでの誰かとの関係性は全て絶たれる。


「ま、今世では頑張れるだけ頑張るさ! やれることは全部やる!」

「……うん」

「高校デビューならぬ、転生デビューだ! 友達も前よりたくさんできて、可愛い婚約者もいて、最高のアオハルだ!」

「……っ、もう」


 風がふわりと吹き抜けて、ラビッツの髪やスカートが揺れる。


「ねぇ……」

「ん?」

「他の人には、恋人がいないなんて言わないでよ」

「え?」

「さっき、言ってたでしょ。恋人がいたことがないって」

「あ……ああ」

「私、婚約者なんだから。立場がなくなっちゃう」

「わ、分かってる」


 くらくらする。寂しそうな複雑そうな、どこか縋るような瞳におかしくなりそうだ。知らない女の子のようで、俺はちゃんとラビッツのことを見ていたのだろうかと、不安になる。


「恋人だって……言っていいのか?」


 確かめたくて聞いてしまう。


「そう言ってもらわないと困る」

「俺たちは、恋人……なのか?」


 赤い顔で睨んでくるラビッツに、失言だったかもしれないと後悔する。恋人だもんなと、言い切るべきだったのかもしれない。


「違うかもね」


 グサリと心臓を突き刺された気分だ。


 そうだ……怖かったんだ。

 否定されるのが怖かった。


「だって、休みの日に二人で出かけたこともないものね!」


 えええ!?

 涙ぐむラビッツに、慌てて声をあげる。


「あっ、えっと、今度どこかに二人で行こう!」

「どこかってどこよ」

「それは……これから考える」

「そう」


 ツカツカとラビッツが俺の顔面に迫って――。


「誘うのが遅すぎるのよ!」


 そう叫んで背中をみせた。


 もう……一人じゃないのかもしれない。どんどんと距離が近づいている。


 そんな実感が、春の匂いとともに胸に満ちた。

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ