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転生デビュー 〜おバカ王子とツンデレ悪役令嬢のジレキュンな日常〜  作者: 春風悠里


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25/45

25.女子会

「お二人とも、同時でしたねっ!」


 今日は交流会の翌日、ベル子ちゃんとラビちゃんが部屋へ遊びに来てくれました。ラビさんのことはラビちゃんと呼んではいるものの……高貴なお方の空気を感じて、心の中ではたまにラビさんと呼んでしまうこともあります。


「……お邪魔します」

「邪魔するわね」

「はい、どうぞ中へお入りください。ちょうど紅茶を入れたところなんです」

「いい香りね」

「はい、お気に入りのローズティーです。お口に合うかは分かりませんが……」

「ありがとう」


 日差しがやわらかく差し込む部屋の中で、ティーテーブルには三つのカップと、手作りのクッキーを並べた小さなガラス皿。


 うん!

 ちゃんと女子会してますよね!


「このテーブルクロスも可愛いわね。さすがルリルリ」

「えへへ。お店で見つけて一目惚れしちゃって」

「ルリルリの部屋……全部、可愛い」

「ほんとよね」


 今までは学校が終わるとすぐに家に帰らなければならず、家庭教師だったり習い事だったりと大忙しでした。


 女子会なるものが流行っていることは知っていましたが、これが初めてです!


 皆で「いただきます」とクッキーを食べて美味しいねと笑い合ったりラビちゃんが「私の釘が打てそうなクッキーとは大違いね」と少し落ち込んでいるのを慰めたりと時間が過ぎていきます。


「それで本題。昨日はどうなったの」


 ベル子ちゃんがいきなり切り込みましたよ!?


「それが……全然ダメだったの」


 ラビちゃんが顔を覆って落ち込んでいます。たまに、こうなっちゃうんですよね。……ニコラさんの前では強がっていますが。


「進展なし?」


 ベル子ちゃん、容赦なしです!


「可愛げがなさすぎて自分にガッカリする……。で、でもね、ニコラだって悪いのよ!」

「うん、分かる。ニコラさん、鈍そうな気がする」


 だからベル子ちゃーん!


「た、確かに鈍いけど! でもほら、ああ見えてえっと……か、顔とか可愛い系でしょ?」


 フォローに入りましたね!


「はい、可愛い系だと思います」


 王子様の見た目に対して、この返答でよかったんでしょうか。


「それに、たまには……か、かっこいいところもあるわよね」

「はい、ニコラさんの采配にすごいなと思ったことも何度もあります」

「そうよね、頼りがいがあるところだってあるし、たまには私だってドキドキしたり……おかしくないわよね?」

「はい、ニコラさんはとっても素敵な人です」

「うん。素敵な人」


 ラビちゃんの顔が明らかにニヤけて嬉しそうになっていきます。


「そうよね、自信持っていいと思うの。いいと思うのに……今回も、デートに誘ってもらえなかったの。たぶん私が断ると思ってるからだろうけど――ううう。おかしいわよね、甘い空気が漂ってる気がするとか言って私も否定してないんだから、デートくらい誘ってくれてもいいのに。察してちゃんになってる自覚はあるけど、私から二人で話したかったとまで言ってるんだから……ね。もうちょっと、もうちょっと……」


 ごにょごにょと声が小さくなっていきます。


「ラビちゃんから、ちゅーとかしてみたら誘ってくれると思う」

「ハードル高いわよ!?」


 ベル子ちゃん、グイグイいきますねー。そしてラビちゃんはものすごく奥手で可愛いです。貴族の方のイメージが変わってしまいますね。


 ニコラさんに伝えたくなってしまう気持ちはありますが……ラビちゃんは望んでいないでしょうからね。


「実際問題、王子が外出デートって少しだけハードルが高いのよね」

「やっぱりそうなんですか」

「隠れて護衛が何人かつくし、事前調査も必要だし」

「王子……大変……」

「貴族も誘拐を警戒して一人で行動はしないけど、王子ほどではないわ。私は一応、人質として有効だから気を付けないといけないけど」


 いきなり物騒な話になりましたね。


「でも、それでも……。昨日も、手しか握れなかったし。手袋もしていたから布越しだったし」

「ラビちゃんが拒否するから」

「だ、だって恥ずかしいもの。いざとなると引いちゃうの! それで、あとから後悔する……」


 また顔を覆ってしまいました。


「でもでも! ニコラだって悪いの。もし私が素直になったらね、なんか……やらしいことしそうだもの」

「むしろ健全」

「ええー……」

「やらしいこと、してあげればいい」

「そ、そんなのっ、無理ぃ」


 ラビちゃんが、赤くなってきゅう〜となっています。こんな時のラビちゃんは、ラビさんじゃなくて、ラビちゃんって感じますね。


「うう〜、二人は何かないの?」

「何かですか?」

「知り合いも増えたし、それにリュークといい仲になりそう……とか」


 仲間を探そうとしてますね?


「リュークは私のことをよく、かばってくれてた。言葉とかヘタで誤解されることもあったから」

「あ、そういえば剣術科で一緒ですもんね」

「今は少しずつ言葉も慣れてきたし。親しい人も多くなって姉も……、たまに会うと少しだけ手を振ってくれる」

「よかったわね、本当によかった」


 ラビちゃんがぶわっと涙ぐみました。


「きっと、少しずつ仲よくなれるわ」

「……ありがと」

「はい、絶対に仲よしになれます! そんな日が来ますよ」

「うん。その日に向かって頑張ろうと思う」


 控え目に笑って決意を瞳に宿すベル子ちゃんは、応援したくなりますね。


「そういえばリュークは最近、オリヴィアさんと仲よし」 

「「え!」」


 それは意外でした。知らなかったです。


「な、なんでオリヴィア!? 全然接点感じなかっ……あ、呼び捨てにしちゃった。今のなしで! えっと、オリヴィアさんとリュークがいい仲なの?」


 ラビッツさん、私たちと話している時は貴族感がまったくないですよね。


「いい仲じゃないけど……よく名前が出る」

「ええ!?」

「トラのことで相談されてるみたい」

「そうなの!?」


 ラビッツさんとリュークさんは幼馴染らしいので、よけいに驚くのでしょうか。


「知らなかったわ。探ってみたいけど、二人ともポーカーフェイスだから厳しそうね」

「ラビちゃん、覗き見……する?」

「しないわよ!」


 部屋の空気はずっと女子トークでゆるやかです。ラビちゃんの話には心がふわりと温かくなりますし、頬がゆるみっぱなし。ベル子ちゃんの突っ込みも雰囲気を和やかにしてくれますし、なんだか幸せを感じますね。


「……楽しい」


 ぽそりとこぼしたベル子ちゃんの声。どうやら私と同じことを考えていたみたいです。


「私も、すごく楽しいわ」

「私もです。二人は私の大事なお友達です」

「こういうの、またしたい」

「ええ、今度は私の部屋に来てちょうだい。これから先も……ラビちゃんって呼んでくれる友人はいないと思うの」

「もちろんです」

「私も行きたい」


 夢のような時間。


 私は、まだまだ恋愛は先でいいかなと思っています。祖父母がいつか、いい人を見つけてくるのかなと思うと少し憂鬱ですが。まだ先のことです。


 お姫様のようなラビちゃんも、突っ込みが鋭くて実はとっても元気で明るいベル子ちゃんも、きっとパトロール隊がなければ仲よくなってはいませんでした。


「パトロール隊の隊長さんになれて、二人と知り合えてよかったです。とても幸せです」


 紅茶を注ぐ音、クッキーを齧る音、そして笑い声が部屋をやさしく彩る。なんて幸せな時間なのでしょう。


「それで、ルリルリは? よく、あの慰労会に見せかけたお団子品評会で知り合った男の子と話しているのを見かけているわよ」

「学科違うから知らなかった。ルリルリ、どうなの」


 私の話になってしまいました!? 二人のご期待に添える何かはないですよ?


「キリキリ吐いて」

「ベル子、こーゆー時は積極的ね!?」


 二人とも、恋愛話が好きですね。今日のこの午後は、キラキラした宝石のような思い出になりそうです。


 パトロール隊もこのお二人も。

 仲よくなった他のお友達も。

 みんな、大好きです!

 

 


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