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転生デビュー 〜おバカ王子とツンデレ悪役令嬢のジレキュンな日常〜  作者: 春風悠里


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19/21

19.突然の……

 こうして『学園パトロール隊慰労会』は、想像以上の盛り上がりを見せ、参加者の満腹と満足の声とともに、無事閉幕となった。


 最後には、一人ずついちばん美味しかったお団子発表をした。教室の前方に用意された審査員席に座った順に、まずは俺からだった。

 

「俺の一番は焼き醤油炙りチーズ団子だ。表面の香ばしさととろけるチーズの塩気が絶妙にマッチして、最高だった」


 ガッツポーズを決める男子生徒がいて、選んだ俺まで嬉しくなった。続いてはラビッツとベル子だ。


「私は、抹茶あずき団子。ほっとする味だったわ。どこか懐かしい味がして心が落ち着いたの」

「私も……抹茶あずき団子。ジャパリス国でも抹茶が好きだった。やっぱり好き」


 セヴォルトの一品だ。台車レースのあとにベル子に聞いたらしいからな。リサーチの勝利だ。ラビッツが抹茶好きなのも意外だった。取り寄せようかな……。


「私はもちろん全部美味しかったですけど、チョコレート団子が特に好きです。もっちりとした食感にとろけるチョコレートの組み合わせが幸せの味でした!」

「にゃーは炭酸レモン団子にゃん。シュワシュワが癖になるにゃん」

「私は団子クリームラテね。コーヒーの新しい楽しみ方を知ったわ」

「俺はピリ辛団子だ。甘い団子が多い中で辛さが光ったな」


 俺たちに続いて他の生徒たちも次々と自分の作品と番号、そしてお気に入りを発表していき、終始和やかな空気だった。


 こうやって交流が広がっていくのだろう。


 興奮冷めやらぬまま、翌日の日曜日もなんとなく旧校舎に皆で集まった。約束したわけではなく、活動しない日でも誰かいるかなーと覗く場所になっている。


 他の生徒が来ないのは、古くさくて来る気になれないのもあるだろうが……顧問以外のもう一人のこの世ならざる者の存在により、パトロール隊に用がない生徒は追い返されるからな。夜の肝試しが目的の生徒なんかは、気づいたら元の場所に戻っている。そろそろ新入生にも少しずつ噂が広がっている頃だろう。


 リュークも、一回目の顧問イベントくらいは発生しただろうな。いや、それどころか……。


「そういえば、抹茶あずき団子を学食のメニューに加えられないか交渉するらしいですよ。セヴォルトさんたちに偶然会った時に教えてもらいました」

「おっ、バイキングの一つになったら嬉しいよな。ピリ辛団子は無理かな……」


 今は考え事をしている時じゃないよな。リュークもいつも通りにしているわけだし。


「ピリ辛は、私にとってはピリではなかったですから。難しいかもしれないですね」


 しばらく、ゲームと同じ台詞は聞いていない。ルリアンとリュークがこうやってよく会話するのは同じだ。ゲームでは細かい部分が見えなかったものの、ルリアンは誰かと話しながらも他のメンバーにも目をやり、皆と会話してる感を出そうとしている。ルリアンが気配りの女の子なのも変わらない。


「お団子の次が楽しみにゃん。早く次を催してほしいにゃん」

「……それ、やっぱり私も参加しなければならないのかしら」

「にゃーの保護者だから仕方ないのにゃん♪」


 ゲームではほとんどここに来なかったオリヴィアも、トラにお願いされて来る頻度が上がった。好きだったゲーム世界の中で、新しい話が紡がれていく。こういうのって、いいよな。


 ラビッツは可愛いし!


 円卓で俺の隣が定位置になったラビッツをチラリと見る。


「……なによ」

「可愛いなって」


 ――スパーン!


 軽快に扇子が降ってきた。


「そーゆーのやめて。場所考えて。空気読んで。周りも困るでしょ」

「あはは、私は気にしないですよ〜」

「……らぶらぶ」

「らぶらぶだな」


 リュークにまで突っ込まれた!?


「私は気にするの!」


 人前で褒めるのは駄目か……思ったことを口にしただけなのに。それなら、さっき気になったことを聞こう。


「そういえば抹茶、取り寄せるか?」

「抹茶!? いきなりなによ」

「ベル子もラビッツも好きだろう? あ、学園長に言おうぜ! こんな時こそ学園長の出番だろ。活動に抹茶が加わることで無敵になりますとか適当に言ってさ。ここで飲もうぜー」

「……適当すぎるわね」


 抹茶たてるのはヘタだけどな。この世界ではチャレンジしたことすらない。


「毎日寮まで書類持ってくる侍従に頼んでもいいんだけどさ」

「書類?」

「サインさせられたり、ついでに勉強させられたりしてるんだよなー。課題もあるのに。王子も楽じゃねーよ。学園長がダメなら、侍従その1やその2に頼むかなー」


 あれ。

 なぜかシーンとしたぞ?


「寮に戻ってもそんな……大変ですね。私、恵まれてたんですね」


 いやいや、ルリアンのが大変だっただろう!? 俺はゲームやってるから知ってるぞ!? あー、ここでは知らないことになってるから突っ込めない。もどかしい!


「王子……大変」

「おう。その代わりにプータローにはならないぜっ!」

「ラビさん、ニコラさんとらぶらぶしてあげて」

「えっ」

「じーーー」

「そっ、そんな目で見られてもっ」

「じーーー」

「だ、だからっ、えっとっ」


 ベル子はまだラビさん呼びか。他のルリアンもだろうな。いつからだったかなー、呼び方が変わるの。もうゲームとは違うからな。


「そろそろラビちゃんでいいんじゃないか?」


 つい、口に出てしまった。


「えっ」

「ラビちゃん……」


 ベル子となぜかルリアンまで、「ラビちゃん、ラビちゃん……可愛い」と呟き始めた。ラビッツはこっちと二人を見てワナワナしている。


 軽率だったか?


「ニコラさんのお墨付き……ラビちゃん、ニコラさんとらぶらぶしてあげて」

「ちょっ、ちょっと待って」

「じーーー」

「も、もう! 分かったわよ! たまには考えるわ、たまにはね! 皆のいないところでね!」


 皆のいないところで!?

 いかんいかん、興奮する。

 静まれ、俺。

 ここで興奮するわけにはいかない。

 興奮するわけには……!


「皆のいないところで、俺とえっちなことをしてください」


 ――スパーン!


「しないわよ!」

「分かってた。つい言ってしまった。止められなかった」

「もー!」


 ――スパン! スパン! スパン! スパン! スパン!


「連続技ぁ!?」

「つまらぬ者を叩いてしまったわ」

「つまるよ!? 王子だよ!?」

「つまらぬ王子を叩いてしまったわ」

「つまってるからな!?」


 トラが「うにゃ〜」と呑気な声を上げつつ、机の上に置かれたおやつに手を伸ばした。購買で買ってきたらしい『シュワ玉』だ。齧るとシュワッとする魔法加工された駄菓子のような扱いだ。昨日からお気に入りになってしまったようだ。


 うーん。購買に抹茶の粉だけ置いてもらえないか聞いてみるか。製菓用にも使えるしな。今は持参のコップに魔法でチョイチョイと水を入れて飲んでいる。


「平和にゃんね〜。こんな時は何か起きるにゃ

ん」


 昨日の今日で何か起こるわけないだろう。そう思った時――。


 コンコンコンコン――ガチャ! と大きな音がして扉が開いた。



 


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