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転生デビュー 〜おバカ王子とツンデレ悪役令嬢のジレキュンな日常〜  作者: 春風悠里


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16/19

16.カミングアウト

「よし、皆行ったな! それじゃ、オリヴィアとラビッツとトラ、交互に乗りな。俺が押してやるぜ!」

「「結構よ」」

「乗らないにゃん」

「なんでだよ!」


 自分も遊びたいと言い出せなかった貴族でありお嬢様でもある二人のために、トラはああ言ったんじゃないのか!?


 天才的な俺の察知能力で理解して、このメンバーで残れるよう促したのに、なんで全員に断られるんだよ!


「悪いわね。あなたたち二人と少し話がしたかったの。トラがああ言えば、残ってくれると思ったから」


 なんだ。オリヴィアがトラにお願いしたのか……って、めちゃくちゃ仲よくなってんな。それに、俺の天才的な察知能力まで加味していたのか!?


「単刀直入に聞くわ。二人とも、中身だけは違う世界から来たのよね? 元はこの世界の人間じゃない。違うかしら」

「えっ」


 ラビッツと顔を見合わせる。


「……トラから聞いたのか?」


 トラが別世界から来たのは疑う余地もない。そしてトラがもし同じゲームをプレイしたことがあるのなら、俺たちがゲームとは別人だと察することは容易い。


「ニコラ様は以前のあなたとは全く違います。仲間思いではあったけれど、今ほど他の方を気遣えるような方ではなかったわ。ラビッツさんも、そんなニコラ様を気に入っている。そうでしょう?」

「えっ、わっ、わたっ、えっと、そんなことっ」

「答えなくてもいいわ。とにかく、おかしいと思ってトラに相談したの」

「……なるほど」


 トラがふふんと得意げに体を揺らした。


「にゃーは最初から分かってたにゃん! あんなに変な目でにゃーを見る二人は、この世界の住人じゃないにゃん」

「変な目ってなんだよ」

「変な目は変な目にゃん」


 それがどんな目かって聞いてるんだけどな。 


「それに、二人がラブラブなんておかしいにゃん」


 やっぱりゲームはプレイ済みか。


「そっ、そんなっ、ラブラブなんて、そ、そんなこと、な、ないし!」


 うぉぉ。赤い顔してツンツンするなっ。さっきからラビッツが可愛すぎる。正常でいられなくなるから話を変えよう。


「にゃーにゃーうるさいな。お前、男か女かハッキリしないよな。ついてんのか?」

「うにゃにゃ!? ついてるわけないにゃん! こんなに可愛いドレスを着て男なわけがないにゃん!」

「猫にドレスっておかしいだろう」

「丸出しにする方がおかしいにゃん!」

「ってことは、元は女性か。その姿で男見つけられるのか? そもそも雄の猫といたすのか?」


 ――バシーン!


 ラビッツの扇子が降ってきた。


「バカ王子!」

「ほんとにゃん。それに、恋愛はもうウンザリにゃん。人間であることをやめたかったから、女神が希望を叶えてくれたのにゃん。にゃーは、もうにゃーでいいのにゃん」


 ……闇が深いな!?

 お前、闇が深いマスコットキャラだったのか。これからはもう少し大事にしよう。


「悪かった」


 オリヴィアの腕の中にいるトラの肩をポンとやる。……サラサラだな。しっかりとブラッシングされている。サラサラであったかい。ドレスのデザインも前と少し違う。肩出しで動きやすいドレスだ。オリヴィアが手配したんだろう。


「悪かったよ。調子に乗った」


 サラサラよしよしサラサラよしよし。


「鬱陶しいにゃん!」


 ペシッとはたかれた。


「とにかくにゃん。にゃーはせっかくだから、これから起こる悲しいことは、防げるのは全部防ぎたいにゃん。生徒のおかしな行為も止めたいにゃん。止められるのかが、知りたいにゃん」


 あー……なるほど。確かに魔法の杖での競争はトラのお陰で防がれた。


 共通ルートを思い出すと……生徒のおかしな行為は残り二つ。悲しいイベントで止められる可能性があるのはベル子の問題だな。


 止められないのは、顧問が見守っているまだ登場していないあの女の子の件か。


 ……泣きゲーだからな。


 リュークとルリアンが結ばれなかったら、どうなるんだろう。もしかしたらトラは……たとえ小さな出来事でも未来が変わると信じられたなら、あの子の運命だって変えられる――そんな希望を持ちたいのかもしれない。


「えーと、生徒のおふざけ行為は『変顔選手権。おかしな魔法行為で顔が固定化』と『ロシアンルーレットお団子事件。あわや大惨事』だな。ま、ロシアンルーレットじゃなくて運命の選択って名前だったが」

「酷い事件にゃん。にゃーがその二つは止めるにゃん」

「……任せていいのか?」

「基本的に頭のいい生徒ばかりにゃん。注意のビラを配ればきっと大丈夫にゃん」

「分かった、頼む」

「がってんしょーちのすけにゃん!」


 お前、絶対日本人だろ。


「ベル子にゃんのことはニコラ王子に任せるにゃん」

「あ、ああ」

「今のニコラ王子なら大丈夫だと思うにゃん」

「えっ。もしかして俺に惚れた? 悪いけどラビッツを愛してるし、猫に発情はしないぞ」

「にゃーもしないにゃん! やっぱり頼りにならないにゃん!」

「ははっ。ま、あんまり期待しないでくれ」

「ほんとに期待しないでおくにゃん」


 プレッシャーには弱いからなー、俺。


「じゃ、台車に乗ろーぜ!」

「「乗らないわ」」


 なんでそこだけ気が合ってるんだよ。


「ほらほら、トラが乗りたいと言ったんだ。オリヴィア嬢、トラを抱えたまま乗りな。ラビッツはあとで好きなだけ押してやろう」

「結構だと言ってるでしょう。昔のことに罪悪感を持ってるのかもしれないけれど、本当にもうどうでもいいの。それに、かつてのあなたはあなたじゃないし――、」

「分かった、私がオリヴィアさんを押すわ!」

「え?」

「へ?」


 いきなり何言ってんだ?

 ラビッツ?


「ほら。オリヴィアさん、乗って!」

「え、いえ、だから私は」

「バランス感覚悪いものね、ふるい落とされるのが怖いんでしょう」

「なんですって!」

「遊んでこなかったものね、私たちと。木登りは落ちるのが怖くて挑戦できなかったんでしょう。かけっこも負けるのが怖かった。だから、一緒に参加することから逃げたんでしょう?」

「ち、違うわよ! それに、あの時のあなたは今のあなたじゃないでしょう!?」

「似たようなものよ。あー、残念。すぐに落ちるオリヴィアさんが見たかったのに」

「うるさいのよ。乗ればいいんでしょう、乗れば!」


 な、なんだ?


 優雅ながらも恐る恐る台車に足を乗せて、オリヴィアがしゃがみ込んだ。安っぽい台車との対比が不思議な感じだ。ラビッツが、してやったりな顔でにやけた。


「そうよ、あとで私も押してもらうから」

「ふ、ふるい落としてやるわよ」

「やれるものならどーぞ!」


 言葉とは裏腹に、ゆっくりとラビッツが台車を押す。


「速度が足りないにゃん。もっとゴーゴーにゃん!」

「言ったわね!」

「私は言ってないわよ!?」


 なんだかんだ言って、オリヴィアもラビッツも楽しそうだ。笑顔が隠しきれず、二人とも笑い始めた。


 俺は見守るのに徹しよう。

 ラビッツも、オリヴィアに対して思うところがあるのだろう。


 数日後、いたるところにビラが張られることになる。


「 料理用形状固定調味料」と魔法の併用に注意!

▶人体に使用した場合、顔などが固定されて戻らなくなる危険があります。料理にのみ使用してください。


「パチパチスパイス調味料」と魔法の併用に注意!

▶効果を高くする魔法との併用で、火災が起こる可能性があります。料理に使用する魔法調味料は一種類のみとしてください(料理の基本です)


 現在、複数の事故が報告されていますと注意書きもある。どの講義でも先生から注意がなされる日も設けられた。


 これで大丈夫だろう……たぶんな。



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