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転生デビュー 〜おバカ王子とツンデレ悪役令嬢のジレキュンな日常〜  作者: 春風悠里


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13/17

13.パトロール隊記録

 昨日は夕方には完全に効果が抜けたので、一緒に外へ転移してもらい、早めの夕食を食堂でとった。


「いい? 私は変な液体を飲んでおかしくなっていたの。分かった?」


 と、ラビッツはちょっと赤くなりながらむくれていた。やはりツンデレはいい。転生最高、転生万歳だ。


 ただ、やっぱりゲームで見るのと実際は違う。もっと恋人のような関わりをしてみたいとは思う。


 ……どうしても、贅沢にはなる。あんなに期待を持たされるとな。


 転移が疲れることは分かっているのでそのまますぐにラビッツを寮へと見送った。俺はポケットの瓶だけはその日のうちに職員へと渡し、夜のうちに軽く報告書をまとめた。今朝はリュークに経緯を話しながら朝食を食べ、すぐに報告書を職員へと渡しに行き、その場で報告も受けた。


 ザッと目を通してから、既にげっそりと疲れながら、初授業を受けるために教室へと入る。


「ニコラ様、昨日は申し訳ありませんでした」


 すぐに、昨日の生徒たちがぞろぞろと謝りに来た。


 高校とは違ってここでは講義のたびに教室を移動する。選択授業もあるけれど、今は一年生の必須授業前。ここにいるに違いないと、わざわざ俺を探しに来たんだろう。


「気にしなくていいよ。俺も参加したかったくらいだ」

「えっ」

「楽しそうだよなー、闇鍋ならぬ闇水! 俺だって羽目を外したい」

「あ、はは」

「でも、あれはよくなかったな。複数の効果がある液体を前例も調べずに混ぜるのは危険だ。どんな副作用があるか分からないし、やめたほうがいい」

「はい、気をつけます」

「次の授業がもうすぐ始まる。もう行きなよ」

「はい、その前に一つお耳に入れたいことが――」

「え」

「少し教室の外へ来てもらえたら」


 そいつらは俺に面倒なことを持ち込んで、立ち去っていった。


「なんて言われたの?」


 同じ授業を受けるルリアンと一緒にラビッツも来て、俺の右隣に並んで座った。自由席だからな。


「……謝られただけだよ。あとは新たな面倒事だな」

「面倒事?」

「俺たちが今年の学園警備隊――パトロール隊だと認知されたな」


 知っているなら自分たちで何とかしてほしいものの……内容はといえば、実は俺もゲームで知っている。つまり、導きのペンデュラムで知ることを単に人づてで聞いただけだ。危ないことをしそうな人たちがいますよ、と。


「放課後に皆集まったら話す。また、近いうちにパトロール隊出動だ」

「うわぁ、わくわくしますね! あとでお話を聞かせてください」

「ああ」


 わくわくか……。そうだよな、パトロール隊の仕事だもんな。面倒事という表現はよくなかったかもしれない。朝から疲れすぎていたな。気をつけよう。


 気遣わしげなラビッツの視線に少しドキドキしながら、授業を受けた。


 ◆


 放課後に旧校舎の隊員室に入ると、机の上の真新しいファイルが目に入った。


「あれ。初めて見るな」

「はい、ベル子ちゃんが綺麗にまとめくれました」


 ……呼び方がちゃん付けになったな。


 ファイルの背表紙には「学園パトロール隊記録」と書いてあり、中には茶トラ猫のトラについての内容が綴じられている。突然現れて仲間になった、という程度で他の人に知られるとまずいことは書いていなさそうだ。


「綺麗な字だね」

「勉強したから。誤字もないと……思う」


 ファイルの存在はゲームでは出てこない。この世界の住人になっているんだなと、あらためて思う。


「それから、昨年までのは棚に入っていますが、生徒名が黒塗りされているのもあります。聞きたければ先生に確認する必要があるそうです」

「……なるほど」


 学生時代の黒歴史をこれから先のパトロール隊に知られるわけだしな。この学園には貴族や富裕層ばかり。時期を見て先生判断で黒塗りされるわけだ。卒業した生徒から塗られているのかもしれない。


 さて。正直、こんな丁寧な記録のあとに俺のを差し込みたくない。


「昨日のも入れとくか、ラビッツ」

「そうね。そっちは私が書くわよ」


 やったぜ。


「ありがとな。職員に渡した報告書の下書きを持っている。下書きだからかなり雑だけど、参考にしてくれ。スタッフから借りた昨日の記録もある。そっちは昼にオリヴィア嬢に貸したから、戻ってきたら一度見せるよ。また職員に返さないといけないんだ」

「あ……分かったわ」

「そういえば、朝に生徒さんが謝っていましたね。昨日のことは少しラビさんから聞きました。また次のお仕事もあるんですよね」

「あ、ああ。伝えるのはここに全員集まってからのがいいかなと思ってさ。一応もう一度、昨日のことから話すよ」


 リュークはまだ来ていない。オリヴィアは来ない可能性もあるかなと思ってアレを貸したんだよな。


 ――ギギィ。


「失礼するわ」

「お、皆集まってるな」


 リュークとオリヴィアだ。彼女の腕の中にはトラもいる。メンバーは全員集合したな。よかったよかった。


「オリヴィア嬢、昨日はありがとな」

「いいえ。これ、読んだから返すわ」


 昼休憩中にオリヴィアに渡した、スタッフから借りた事の顛末書だ。俺が書いた報告書と内容も大差ない。誰がなんの効果をつけたかまで書いてあるので、他の生徒の目に触れないように「極秘事項だ」と言って渡したから、そそくさと鞄にしまっていた。


 一応、生徒名も全員知っていたほうがいい。このパトロール隊自体を逆恨みする可能性もあるからな……。


「昨日は俺、大活躍だったんだよ。みんなも見なよ。俺様の勇姿をとくと味わうといいさ」


 発見者として名前が書いてあるだけだけどな。


「相変わらず偉そうにゃんね」

「偉いんだよ!」


 このメンバーならもう緊張はしない。遠慮なく調子にのれるってものだ。


 それにしても、トラは完全にオリヴィアに懐いてるな。波長でも合うのか?


「じゃ、私はもう行くわ」

「あー、待ってくれ。昨日の生徒が言ってたんだ。近々面白い企みがあるってさ」

「企み?」

「他愛もない遊びだ。その日になればペンデュラムも振れると思うけど、一応伝えておく。見回りに行くことになるはずだ」

「分かったわ。内容は」


 こうして、その日はラビッツがせっせとパトロール隊記録を書くのを見ながら過ごした。せっかくだからこれまでの皆の感想も別のノートに書きましょうという流れになって、なぜか誰もが好き放題書けるパトロール隊員日記まで作られた。その年の会長――おそらく卒業するまでルリアンの所有物、ということに決まり、卒業までここに置かれることになった。


 ゲームではそんな些細な細かいやり取りなんて書かれない。仲間と一緒に笑って過ごして、楽しい日々が続いていく。


 ――こんな毎日を、過ごしてみたかったんだよな、俺は。


 始まったばかりなのに、これからの楽しい生活の予感に胸が躍る。


 この世界は泣きゲーが舞台だ。

 それぞれのベストエンドは夏で終わる。そのあとに後日談が少しだけ描かれる。そして、ゲームでは全員を攻略するとアナザーストーリーが解放される。


 ここはゲームではない。

 全員を攻略なんてできない。


 どんな未来が待ち受けるのかは――まだ、分からない。


 学園生活は、始まったばかりなんだ。



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