オールスタイルダンサーコンテスト
某日、東京都で全てのダンサー達の頂点を決める全国大会、『オールスタイルダンサーコンテスト』が行われていた。
「優勝を決めたのは!!!」
「JACK!!!」
会場内は溢れんばかりの歓声、誰もが手を叩き、彼を祝福した。
俺以外は
俺は負けた。完膚なきまでに。
俺には静寂が流れた。俺には虚空が流れた。俺には何も聞こえなかった。違う。
俺は聞かなかったのだ。
『勝ちたかった』『勝ちたかった』『勝ちたかった』『勝ちたかった』『勝ちたかった』『勝ちたかった』『勝ちたかった』『勝ちたかった』『勝ちたかった』『勝ちたかった』『勝ちたかった』『勝ちたかった』『勝ちたかった』『勝ちたかった』
『勝ちたかった...ッ』
俺はダンスで負けたことはほとんどなかった。JACK以外は。
俺とJACKのダンスはブレイクダンスが基本のオールスタイル。勝てないのは、完全に実力差だった。俺はそれが認めたくなかった。違う。心の底では認めていた。けれどもプライドが邪魔だった....
気がつけば表彰式だった。俺は準優勝であいつは優勝。なんで勝てない。次こそは勝つ。そんなことを考えていたら、謎の声が聞こえた。
『あいつに勝ちたいか』
『勝ちたければ私の声に従いなさい』
そんな声だった。俺は疲れている。ついには幻聴まで聞こえてきた。ホテルに戻って寝よう。そんなことを考えていた。
ホテルに着いた。早速寝よう。
俺は深い眠りについた。
眠りにつく前に微かに声がした気がした。
気の所為だろうと思い俺は寝た。
『仕方が...な。無...いくと...か』
幻聴と同じ声がした気がしたが上手く聞き取れなかった。俺は気にせず眠りについた。外が騒がしかった気がしたけれど、気の所為だろう。
『狭間への精神転移が完了しました。』
『続いて個体情報の転移を開始します』
そんな機械のじかけの声で俺は目覚めた。
「おはようございます。」
「あなたには、この世界の黒幕を殺してもらいます。」
俺の知らない機械を使っているやつにそう言われた。金髪の長い髪、見たところ170cmはありそうな身体、そのくせ胸はその身体に見合わず小さい。そんなやつだった。
「はぁあああ!?」
「無理に決まってるでしょ!!」
「そもそも俺は!一般ダンサーだぞ!?」
「格闘技どころかダンス以外の運動は苦手だ!」
「そもそもお前は誰だ!」
そんな俺の声がどこかも分からない。現実かすら怪しい。そんな所で響いた。
「これは失礼しました。」
「私、地球とあなたが行く世界である『ウェルバス』の管理人兼女神をしている、シスト・テオーティタと言います。」
「シス、とお呼びください」
優しげな声だった。
「シスさんとやらよ、ここは何処なんだ?俺は死んだのか?それとも連れてこられたのか?」
「ここは死者と生者の中間管理を行う場所『狭間』です。あなたは死にました。」
死者に向けるような目だった。そりゃそうさ。死者なんだから。
俺は聞いた。
「俺はもう日本には戻れないのか?」
シスはこう言う。
「基本的には例外なく、死者は輪廻の輪に入り浄化され、生まれ変わります。ですが、ウェルバスの民を助けていただければ、あなたは日本に戻ることができます。」
「ウェルバスでは地球の時間は経ちません。なので、火葬されたりはしません。」
俺は二つ返事で答えた。
「俺はウェルバスへ行く。そして黒幕を殺す。それでいいんだろ。」
シスは優しげな微笑みを見せてこう答えた。
「ならば今すぐに転移させます。」
「転移が完了すれば、まず、ギルドに行き、自分に合う役職を見つけなさい。」
「仲間を見つけ、助け合い、黒幕を殺すのです!」
シスが言い終わった瞬間、目の前が真っ白になった。これが転移か。そう思った。
「幸運を祈りますよ。」
「あ、ウェルバスの事伝えるの忘れてた。」
「まあなんとかなるでしょう。」
『狭間』で1人になったシスがそう呟いた。俺には聞こえていなかった。
これから行く世界は、ゲームのような世界であり、魔法や魔術、モンスター、そんな世界。そんな世界で無双するなんて、俺はまだ知る由も無かった。
最後までご覧頂き、ありがとうございます!
素人ながら頑張って書いているのでこれからも見ていただけると幸いです。