✒ 師匠は性悪だった!
水魔法使いの弟子になって、早5年──。
放火されて家を無くした水魔法使いは、渦巻く巨大な竜巻を発生させて、≪ ペトマ村 ≫を壊滅させた。
おっかない水魔法使いの弟子になった時は9歳だった。
現在の僕は苦労の絶えない14歳だ。
≪ ファルダパ大陸 ≫では14歳までは子供とされていて、15歳を迎えると《 教会 》で “ 成人の儀式 ” を受ける事が義務付けられている。
後1年も経てば、僕も成人──大人の仲間入りだ!
師匠に想いを告げて、求婚して──玉砕して、拗らせた初恋を終わらせてやるんだっ!!
そう──、僕は≪ ペトマ村 ≫へ来た師匠に一目惚れしてしまったんだ(////)
人生初めての初恋の相手が、≪ ファルダパ大陸 ≫1番の水魔法使いだった師匠なんだ(////)
僕は “ 自称 ” だと思っていたけど──、師匠は本当に≪ ファルダパ大陸 ≫第1位の水魔法使いだった。
≪ ファルダパ大陸 ≫には人間が扱える魔法として、火属性,水属性,風属性,土属性,雷属性の5属性が存在している。
≪ ファルダパ大陸 ≫には存在していても、人間に扱えない魔法として、光属性,闇属性,聖属性,魔属性,虹属性の5属性が存在している。
火属性,水属性,地属性には “ 覚醒 ” が存在して、火属性は炎属性,水属性は氷属性,土属性は地属性──ってな感じで転化する。
師匠は水魔法使いとしては第1位だけど、氷魔法使いへは “ 覚醒 ” していない。
水魔法使いである師匠が氷魔法使いに “ 覚醒 ” しないのには理由が有った。
「 師匠──、何で水を提供するのに水代を請求するんですか? 人間みたいに対価を払わなくても自由に出せるじゃないですか 」
そう──、≪ ファルダパ大陸 ≫では人間が魔法を使う為には “ 対価 ” を支払う事になっている。
魔法を管理している “ 管理人 ” でもある、精霊王に対して、対価を支払い魔法を使わせて頂いている立場だ。
火魔法を使うには火属性の精霊王へ対価を支払う。
対価となるのは “ エナ ” で──、“ 魔法を使う為に必要な力 ” ── “ 魔法力 ” と呼ばれている。
このエナ = 魔法力が有る者だけが、魔法を使う事が出来るんだ。
エナは魔法を使う為に必要な素質で、神職者,聖職者は挙って “ 祝福 ” と呼んで尊んでいる。
エナを持っていると判明した子供は、“ 祝福を受けた神童 ” として地元の《 教会 》に迎えられ、≪ 王都 ≫に在る《 神殿 》で特別な “ 洗礼 ” を受けて、聖職者として≪ 王国 ≫の庇護下で魔法学園へ入学し、魔法について学ぶ事が義務付けられているんだ。
因みに《 神殿 》に籍を入れて、奉仕する信徒を “ 神職者 ” ,《 教会 》に籍を入れて、奉仕する信徒を “ 聖職者 ” と区別されている。
《 神殿 》は≪ 王都 ≫にしかなくて、《 教会 》は≪ 都 ≫≪ 街 ≫≪ 町 ≫≪ 村 ≫に在るんだ。
沢山の《 教会 》を管理するのが《 神殿 》の役目みたい。
「 ──決まっているだろう。苦しむ人間達が更に顔を歪ませて悔しそうに苦しむ姿が面白いからさ。いやはや、見ていて飽きないね! 水を手に入れる為に歯を食い縛りながら、なけなしの水代を悔しそうに支払い、膝ま付いて懇願する憐れな姿が愉快で痛快なんだよ! 値上げした時の絶望に近い顔なんて最高のツマミさ──。無償で水を与えると人間ってのは調子付いて図々しくなるからねぇ。飴と鞭のメリハリを付けないとね 」
「 鞭が多かった気がするけど…… 」
「 ちゃんとケチらずに水を分け与えてあげていただろ。私は優しいのだよ。慈悲深い水魔法使いなんだよ。他の水魔法使いなんて、私より酷いものさ。思わず感心してしまう程にね── 」
「 そうだったんですね…… 」
嫌がる人間の顔が見たくて態々必要の無い水道代を請求するなんて、性悪なんだから──。
何でこんな性悪な女性が好きなんだろう……惚れた弱味って恐ろしいよ……。
この≪ ファルダパ大陸 ≫では、魔法は人知を超えた不思議な力で、魔法の威力を制御して安全に使う為に、決められている絶対的な条件が有るんだ。
必ず “ 呪文を正しく詠唱する ” という事。
魔法には専用の呪文が存在していて、発動させるには呪文を詠唱しなければならない。
この呪文を正しく詠唱して魔法を使わないと、対価が正確に精霊王へ支払われない事になる。
どういう仕組みなのかは分からないけど──、人間から見るとエナは確かに消費してるんだけど、精霊王へは正確な対価が支払われていないから、妖精が足りない対価分を徴収するらしいんだ。
妖精に徴収されるのは人間の寿命だ。
魔法使いは、呪文の詠唱を省略したり、短縮化したり、無詠唱で魔法をバンバン使いまくるけど──、それだけ寿命を縮めている行為を自らしている事になるらしい。
魔法使いに “ 短命 ” が多い理由が、“ 足りてない対価の代わりに寿命を徴収されている ” からという──恐い真実ぅ~~。
消費するエナは、魔法のランクに依って違うみたいで、ランクに依って呪文も違うらしい。
最初に覚えた★1の魔法をひたすら使って、熟練度を上げると新しい★2の魔法を覚える事が出来る。
新しい魔法を覚えたら、新しい呪文を覚えないといけないから、大変だと思う。
素質の無い僕には関係無いけどね!
「 師匠は何で、人間の振りをしてるんですか? 」
「 うん? 人間はからかい甲斐が有って面白いからさ 」
「 からかう為に人間の振りをしてるんですか? 精霊王って師匠みたいなのばっかりなの? 」
「 普通の精霊王は人間に興味無いさ。私は変わり者なのさ──。私が未だ妖精だった頃、神聖力を集める手伝いをしてもらってね──。あの頃が1番楽しかったんだ。私の姿はね、その子の姿を再現しているのさ。名前は──舘嵜春加と言ってね、お世話になったものだよ 」
「 神聖力って? 精霊王って妖精だったの?? 」
「 100年毎に1度だが、精霊王にも人間の様に生理現象が有るんだ。大量に妖精を生み出すのさ。生まれた妖精は神聖力を集め、ランクアップを繰り返し、クラスチェンジを繰り返し、精霊王を目指す。9割は途中で挫折し精霊王を断念してしまう。精霊王となれるのは1割にも満たないのさ。その中から選ばれた10体の精霊王が、1つの星の管理を任されるんだ 」
「 精霊王になるって凄い事なんですね。師匠には妖精だった頃の記憶が有るんだ…… 」
「 私は変わり者だからな。普通の精霊王なら忘れてしまっているよ 」
師匠が妖精だった時、一緒に過ごした人間の姿──。
僕は遥か昔の人間の女の子の姿に一目惚れしたって事なの!?
一寸……ショックかも知れない……。
「 神聖力ってのは、人間の心臓を喰べると得られる力だ。妖精は神聖力を得る為に人間狩りを行っていたんだ 」
「 人間狩り…… 」
「 妖精の姿は人間に見えないからな。大体が事故死か病死として片付けられていたんだ。晴れて精霊王になれた私は、選別された9体の精霊王と共に1つの星の管理を任された。この星には≪ 大陸 ≫が10存在する。精霊王は≪ 大陸 ≫を1つ担当する事が決められていてな、私が担当しているのが≪ ファルダパ大陸 ≫だ 」
「 そう…なんですか? 師匠が≪ ファルダパ大陸 ≫を支配しているんですか? 」
「 支配はしていない。“ 担当している ” と言っても別にする事はないからな。人間の数が増え過ぎれば “ 大陸の意思 ” が勝手に人間を減らす為に動くし、神聖力を得る為に妖精も人間狩りをするからな。する事が無くて暇を持て余しているから、人間の姿に変えて放浪旅を楽しんでいるのさ。水属性の精霊王が担当しているから≪ ファルダパ大陸 ≫に水魔法使いが少ないし、水魔法使いが氷魔法使いへ転化する者も少ないんだ 」
「 水魔法使いが少なくて稀少なのは水属性の精霊王が原因なんですか? 」
「 そうさ。そういう決まりなんだ。〈 大陸の法則 〉は教えただろ 」
「 ……確かに教えてもらいましたけど── 」
「 そろそろ出掛ける時間だ。アルト、準備を── 」
「 もう済んでます 」
「 流石は私の弟子だね。では出掛けようか 」
「 師匠も荷物を持ってくださいよ 」
「 荷物持ちは弟子の役目だ。キビキビ運べ 」
全くぅ~~~~弟子使いが荒い師匠なんだから!