2話
今回こそ異世界に行きます(たぶん)
帰宅して夕飯を食べてぐったりしていると、大樹から電話がかかってきた。
「なんの用だ、つまらん用なら切るぞ」
冷たい感じがするが夕飯後のぐったりタイムを邪魔したこいつが悪い。
「桜、お前は大丈夫なのか?」
「うん?」
大樹の変な対応にとっさに現状を理解してしまう。
「まさかお前、あれからまた狙われてるんじゃないだろうな」
「ああ、さっきから1時間ごとだったのがどんどん早くなってきている」
「今家にいるのか」
「いや、神社にいる。桜、俺はどうしたらいい」
とっさに答えを返せなかった。事態はかなり悪い。俺の勘はあの黒い穴に命の危機を伝えなかったが、このままいけば大樹はあれに飲み込まれるだろう。では俺はどうする?一緒にいても意味がない、ただ巻き込まれるだけだ。それに勘が神社に行けば厄介なことになることを告げている。見捨てればいい、いや、どうしようもないんだ。あいつもそれをわかっているだろう。俺はそう考えていたはずだ。しかし
「今からそこに行くから待ってろ」
「いいのか、お前がきてもどうにもならないだろう」
「わかっている、わかっているんだよ。お前はささっと、家族にでも連絡しとけ、何がおきるかわからない。なら、家族には言いたいことをいっておけ」
「わかった」
あいつからの電話が切れ、大きく舌打ちとため息をついてから、家を出ようとした。しかし、その途中で母さんに顔を両手でつかまれた。かなり強く、いてえ。
「母さん、今急いでるんだ、離して」
「咲、桜咲、私の愛しい息子。お前はわかっているの、これが最後かもしれない」
その言葉に胸がドキっとした。母さんは俺とは比べ物にならないくらい勘が鋭い。俺の勘は自分の命で精一杯だが、母さんは違う。自分はおろか他人の命、物なども勘で予測することができるらしい。
「ここが、境界線。この先は私では守れない。咲、これは、あなたの資質を100%発揮しても死ぬ可能性がある物語。そして私はこの物語をなんとかするつもりはーーーーない」
母さんの言葉は事実なのだろう。俺が読み取れる危機は、一時的なもの。つまり大樹につきあえば本当に死ぬ可能性もでてくるということだ。どんなに注意深くしていても。俺は一息、深呼吸をしてから答えた。ああ、わかっている。
「それでも行かなくちゃいけない。だってあいつは俺の友達で、なによりーーー意地だ」
そう、死ぬのは怖い、怖くて怖くて怖くてしかたがない。生きれるなら家族だろうが友達だって売ったっていい。でも意地だけはーーー自分が決めたことだけは裏切れない。だってそれ以外は、自分のものではないから。
「そう」
母さんはそういうと俺を一度抱きしめた
「元気に強く、そして、なにがなんでも生きて」
それだけを残して母さんは去っていった。帰ってきても幸せになっても言わなかった。母さんは俺とは比べ物にならないくらいの意地っ張りだ。だからだろう、これ以上とめなかったのは、俺の負担にならないだろう言葉を言わなかったのは。俺はいってきますというと家を出た
10分ほどで神社に着いた。
「大樹!大樹、どこにいる!」
大声を出すと、すぐに大樹が出てきた。
「桜、ここだ。本当に来てくれたんだな」
さすがの大樹も心細かったのか声がうわずっていた。
「ああ。しかし、ひどいな、これは」
周りは、黒い穴?が食いまくったのか、狛犬も社もひどいありさまだった。
「桜、それでどうするんだ」
命の危機はない・・・と思う。少なくともあの黒い穴?は、ならば。
「つっこむ。これ以上避けても、いつかは捕まるし周りがやばい」
「そうだな」
大樹も覚悟を決めたらしい。
勘に反応あり、来る―ーーーーーっておい!!大樹の頭上に直径100Mはありそうな黒い穴が出現。でかっ、ちょうでか。大樹は今回はでかいなとかつぶやいてるが、俺はというといまさらになって恐怖に体が震えていた。ああ、こんなことなら、最初にこの黒いのがでたとき、この馬鹿をたすけるんじゃなかった。
そして俺たちは飲み込まれ、異世界へと召還される
黒い穴の中は無重力状態のようだ。ぷかぷかと浮かんでいると光が見えた。その光は大樹によくあるテンプレートのようなーーー魔王が復活だの、勇者として召還しただのと言っている。しかし、俺のことは目に映ってないようだ、まあいいけどね、どうせ俺はおまけだし、下手に目をつけられると面倒そうだ。
そして俺たちは光に包まれる。
目を開けるとそこは森だった。あれっ、あいつはどうしたんだ?っていうか声が出ない。なぜか体が妙にだるい。手足が動かず、紐で雁字搦めにされたようになっている。
なんとか、蓑虫のような動きで近くにあった川に行って自分の姿を見るとそこには
無色透明なスライムがいた
ようやく異世界長かった
結構ごちゃごちゃしててすいません




