第八話
「これはまた、随分なお買い物だな」
俺は家に帰るなり、ミノルの見せてくる買い物覆歴を見せられ呆然と一言。
その俺の様子にミノルは
「あ、ダメでしたか?すみません」
といじらしくもめげるようなしぐさを見せるミノル。俺はそんな彼女をかばい
「いや、いいんだ。ミノルは家事とかをきちんとやってくれてるしな。十分買い物の値にゼロを重ねる資格はある」
「うぅ、すみません」
俺の言葉が嫌味かとおもったのかまたしょんぼりと肩を落とすミノル。
俺はまた励ましながらも、頭の中ではあの牛丼屋のバイトを何回行けば返済できるのだろうかと計算していた。
こんなときには親のクレカが、光るはずもなく俺はきちんとした自立した男として一緒に住む女性の分くらいカバーをできるぞと自分を鼓舞しつつ
早速リビングに入り、クッションへとダイブ。
「あ、あの、すみませんでした!この注文取消します!」
俺の様子が余程痛々しく見えたのか、ミノルはそう言ってくる。
なので俺は目元をぬぐいつつ、またクッションから起き上がり涙目の同居人へと近づき、また彼女の肩を掴み
「いや、いいんだ。おしゃれっていうのはお金がかかるものなんだ。これは、しょうがない。それに今まで全然贅沢をさせてあげれなかったからな。だから、いいんだよ」
後半はまるで自分でも聞き取れないくらいの鼻声だったが、思いは相手に伝わったらしく
お互い目を涙で濡らして抱き合う。
なんだかそれは窮地に立たされたドラマの中の夫婦のようで、あほらしくなり俺はすぐに冷めたがミノルは未だに泣き続けている。
今日の晩飯はパスタだ。
なので俺は麺をすする。
ミノルは涙をすする。
いや、決してダジャレを言っているわけではないのであって、事実を述べているだけだ。
やれやれ、手をぬぐっていてはフォークを持つにも足りないだろう。
ここで一喝。
「おい、泣くな!俺はもう許したんだから、そんな涙を流してもしょうがないだろう。もういいからパスタを食べろよ」
するとびくっとミノルは一瞬固まり、そしてみるみると顔は平常に戻り、おまけに瞬時に泣き止むというか涙が引っ込んだ。
その様子はまるでロボットのようで、あの手紙を俺は脳裏に浮かべることとなった。
あほらしい!
今度は自分自身に向かって一喝。
うん、これは俺のたまにしかしない一喝がよくミノルには効いたというだけの話だ、いやそうに違いない。
そんな俺の苦労などいざ知らず、ミノルはテレビを眺めてニコニコと麺をすすっている。
そういえば今日は俺の方を見ないな。
余程テレビが面白いのだろうか。
俺はミノルと同じ方向を向いてみると、なんとそこで放映されていたのは
ロボットとロボットを戦わせているというもので、俺は一瞬立ち眩みを起こした。
だが、まぁ偶然だろう。
俺はそう処理する。
確かにその番組は結構目新しいものであったし、技術の進歩というのも垣間見えてかなり面白かった。
だから俺の気にしすぎというわけであり、現に俺は今この瞬間までミノルを一度もロボットだと思っていないのだ。
それに彼女は風呂も入っている、
トイレもしている。
涙も流す。
ご飯を食べる。
状況証拠としては十分じゃないか。
この二十一世紀、猫型ロボットもまだ存在していないのにそんなほぼ人間のロボットなんて存在しうるはずがないのだ。
…だけど、彼女が未来から来ているとしたら?
現にこの部屋にいきなり表れて、なんだか不自然である。
押しかけ女房と言ってもこの令和の時代、ありえん。
そういえば俺は彼女の背景を全く知らないな。
特に興味もなかったし、それに自然と彼女は誰かに引き取られるものかと思っていたからだ。
そうだ、彼女に聞いてみるのが一番じゃないか。
本人の事は一番本人が知っている。
よし、聞こう。
俺はなるべく面接管区長じゃないのを意識しながらまだテレビを見ながら笑い続けているミノルに話しかけた。




