第十二話
飛行機の離陸時にGを浴びる時、毎回心の中で「アムロ行きまーす!」って叫んでいるのは俺だけだろうか。
周りに初老のおじさんがいないか探す。
あ、いた!眉間にしわを寄せて、口を大きく開けている。
うむ、同氏はいたのだな、と確認しつつ、また俺はそのガンダムの主人公になりきりごっこを再開する。
「あのー、なんか苦しいんですか?凄い顔ですけど」
くそっ、邪魔が入った。
あぁ、俺のガンダムが!まるでセイラさんが無茶をして乗った時のように着陸に失敗をしてしまった、無念。
「えぇ!?もっと怖い顔になってますよ!なんかあったんですか!?」
ゆさゆさと俺の肩をゆすりながら、心配そうな声でさっきから俺に話しかけてくるのは、俺の飼っているロボットだ。
全く語弊はないのだがこいつの容姿がいかんせん、人間でかつ究極の美少女であるからにして公言はできない。
が俺は内心そう思っている。
前のこいつの身体検査で本当にミノルはロボットなんだな、と実感した時の俺の心境と言ったら。
正直興ざめもいい所だ。
だがこれはこれ、それはそれとして脳ではしっかりとこいつはロボットだと思っているのだが、体の方がついていかない。
俺は押し付けてくる柔らかいスイカ達の圧力に屈し、ついに俺はパイロットを引退することに決めた。
「なんだよ、せっかく人がパイロット気分になっていた所なのに」
「あ、そうだったんですね。子供みたい。可愛いですね」
クスクスと笑いながら俺の頭をなで、また促すように手を俺の方に差し出して
「どうぞ、続きを」
なんていうものだからたまらない。
その押し付けてくる乳をみんなの前で揉みしだいたろか。
そういう欲求にかられたが、こいつはロボットの癖にしっかり羞恥心というものを持っているからしてできるはずがないのだ。
自制心、そう要するに大人というのは理性が本能を抑えるという事。
俺はそれができる。
心の中で発散するのだ。
例えば、バカ乳、無駄乳、クソ女、とかな。
ブフッ!?!?!
これは随分局所的かつ衝撃が強いG………
「漏れてるんですよ。全く、旅行する前からそういう雰囲気やめてくれますかね?」
ミノルは俺の腹から拳を抜き取り、その表面に向かってフッと息を吹いた。
俺はもう離陸しきった飛行機の窓の外を見て、空の雄大さを目にして逆にやるせなくなり
先刻につい心の中に思い浮かべたいたずらを実践してみることにした。
ジェット機なので機内は狭い。
なので俺が突然隣の彼女を揉みだしたらそれはそれは究極に目立つエロハプニングなわけで。
………えっ!?もう乱気雲の中に入ったのか!?
視界が突如ブラックアウトして俺は戸惑うも、腹の違和感を察知した辺りで大体の予想はついた。
そうして俺の初めての自腹フライトはただの気絶のうちにおわった。