第一話
コーヒーにミルクを入れる。
そして飲み干す。
「おはようございます!旦那様!」
ううむ、まだ目が覚めないのか、俺の意識は。
目の前にいるこのピンクのつやのある髪に、目はくっきりとしていて目の色はまたもやピンク、まつ毛は意外にも黒色だったがぱっちりとして整っているこの美少女ともいえるフィギュアみたいなこいつは
まだこんな俺の事を「旦那」などといって毎朝けしかけてくるのか。
服はパーカーで胸元がはっきりみえるくらいに乱れながらきていて、乳首の跡がくっきり見えることからおそらく一枚しか羽織っていない。
下はスカートをはいていてなんとも妙な組み合わせだ。
だがそれでも着る人がいいのかちゃんと着こなしていて似合っていた。
俺がついつい胸元に目線をよこしても嫌気の色は見せずニコリとほほ笑み
「あらあら、旦那様。朝からお盛んですこと」
とからかうようにいうので俺は憤慨して
「ふん、うるさいぞ、穀つぶしめ、なれなれしいぞ!いっとくが俺はまだいきなり部屋に現れたお前のことを認めてないからな!引き取ってくれる女友達を探したら今すぐそこにぶち込んでやる!」
こう宣言するようにいってやる。朝から少し言い過ぎたか、と思って上目遣いでチラリと向こうの様子を見やると
「ウフフ、そうもいいながらもうここに住んで十日にもなるのに匿って、あ、いやそうじゃなくって、住まわせてくれる旦那様、好き」
なんて飄々というものだから俺はもう何も言えなかった。
見知らぬ女性を居候させるほど、俺は裕福ではない。親からは仕送りもしてもらえず日々バイトに明け暮れる大学生なのだ。
あのフィギュアみたいな体の女をここ最近ではお決まりのように留守番させ、俺は家を出た。
その後、朝のシフトがあるサイゼリヤへとおもむき、また今それが終わったところでスマホをいじりながらまかないを食べている。
「こら!ツッキー、行儀が悪いぞ!」
と言いながら小突いてきて俺の対面の席に座るこの人はこの月曜の朝のシフトが一緒の同じバイトの頼れる女性の先輩、山本天利。通称天さん。
「天さーん、俺も大変なのわかってくださいよー。あの例の居候のやつの件で今友達に問い合わせてるんすよ。大目に見てくださいよ」
「あぁ、例の子の話か。いいじゃん、一緒に住んじゃえば。そういないよ、男女のシェアハウスなんて。あとその天さんって呼びないい加減やめな」
「えー、見ず知らずの女なんて嫌ですよ。それに確かにそいつは可愛いですけども開き直ってるのが気に食わないんですよ。なんか自分が可愛いと自覚しているというか。
ところで天さんって呼び名、強そうでいいじゃないですか。」
「強そうだから嫌なんだよ、バカタレ!ツッキー、私は確かにZ世代だけど戦士になった覚えはないんだ」
「天さーん、なんならあなたが引き入れてくれませんか?食費も俺賄えないし、正直きついんすよ」
「話を無視するな!まぁ、だけどその件については考えてあげるよ。でもねー私、彼氏と一緒に住んでるからやっぱり無理かもしれないわ。あ、時間だ。じゃね!また大学で!」
「あ、はい。さよなら」
天さんは器用に俺と喋りながらもしっかり食事もしていたようで、急いでキッチンに運ぶドリアの皿は空だった。
そういえば、俺もそろそろ大学の行く時間だな。
俺は悉く見知らぬ美少女を引き入れてくれない女友達のlineの返信欄を見やり、またスマホの時間を見るともう十時だった。
やばい、遅刻だ!
俺は急いで残りのドリアンをかきこみ、また俺が独自に開発していつも飲んでいるメロンソーダとコーラを混ぜ合わせた「メーラ」を飲み干して
俺はキッチンで洗い物をしてくれている店長に挨拶をしていき
「気を付けていくんだよー!」
という店長の掛け声を背に俺は店を飛び出た。