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アカシックレコード総集編  作者: 白黒羊


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11/17

第陸章 森羅回帰篇 Part1

一冊の書物が、音を立てながら破られた。

「これでプラヴィーロレコードは塵となった」

デトルートはオブストスの遺跡から飛び去った。

――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――

王都レグーノ、王宮内。

「何、十二人が死んだ?」

「はい。会議場で死体が発見されました」

「状態は?」

「バラバラです。お見せできない程に」

「そうか…」

アレク王は腕を組んだ。

――一体誰が…?

――――――――――――――――――――

アブドは十二神将であるアロンのもとでドラゴゲネシスの力を引き出す訓練をしていた。

訓練はアロンの期待する出来ではなかった。

「これは修行なのよ。しっかりしてもらわないと」

「すいません…でも俺、分からないんです」

「何が?」

「一体何の為の修行なのかって」

「…」

「リベルタが壊滅したってことはメレッドも時期に潰れる。もうなくなっているかもしれない。そしたら俺、何と戦えばいいんですか?」

アロンは呟いた。「…あなたはそんな人ではなかった」と。そしてはっきりと言った。アブドの過去を知っていると。

「教えて下さい」

「ダメよ」

「どうして!」

「耐えられるわけないわ」

「え?」

「今日はもうお終いよ」

アロンはそのままどこかへ行ってしまった。

「聞いたわ。あなた、腑抜けになったそうじゃない」

「腑抜けって…。俺は分からなくなったんだ。なぁティナ、俺は何と戦えばいいんだ?」

ティナはアブドに近づき、胸ぐらを掴んだ。

「何ですって?あなたは何の為にまだ生きていると思っているの?」

「決まってるよ。二人への贖罪のためだ」

「そうでしょ。あなたは戦う為に生きているんじゃないの。あなたは二人の想いを受け継ぐ為に生きているの。分かった?」

「うん」

ティナはアブドを押し退けた。

「安心して。二人への贖罪が済んだと判断したら、私があなたを殺すから」

ティナは部屋を後にした。

――二人の為…か…。

――――――――――――――――――――

セデルは考えていた。

――タルタニッド…。メレッドの男は確かにそう言った。このオルディネイトも、タルタニッドによって発足された組織。そしてそのタルタニッドが死んだ。真相は闇に葬られてしまった。俺はオルディネイトの団長として、何をすべきだ?先の戦争で、王の前に立ちはだかる組織は壊滅させた。

――次は何だ?どうすれば宇宙は平和になる?

――次は…不安の種を潰しておくか。

――――――――――――――――――――

アブドは夢を見た。どこかの図書館にいた。

「…僕、やるよ」

声がした。見回すと、少年が大きな机の椅子に座っていた。

「よく言った少年」

「でも、どうするの?」

「君にはあるものを探して欲しい。モナク君」

「…!?僕の名前!」

アブドはその名に聞き覚えを感じた。

「そうさ。俺は何でも知っている。俺の言う通りにすれば、君の望みは叶う」

「うん。それで、探して欲しい物って?」

「とある書物だ」

「書物?」

「そうだ」

「それなら、ここにありそうだけど」

少年は辺りの本棚を見回す。

「いや、ここには無い。何故なら、それはこの宇宙の理を司る書、アカシックレコードだからだ」

突然、部屋が揺れた。

棚から書物が飛び出し足元に散らばった。

アブドは背後から倒れてくる棚に気づかなかった。

頭を強打し俺は倒れた。視界がぼやけ始めた。最後に、そばにあった本の表紙が目に入った。レグーノ地理大全集…?

アブドは目を瞑った。

――――――――――――――――――――

アブドはティナと共にザピーシを抜け出した。ティナはザモークでの礼として協力してくれた。

目的はアカシックレコードの捜索だった。アブドは自らの過去を知ることを望んだ。道中、アブドは声を聞いた。

『助けて』と。アブドは答えた。

「分かった。助けるよ。どうすればいい?どこに行けば良い?」

『レグーノ』

声を聞くことのできなかったティナにアブドは言った。

「ティナ。レグーノだ。レグーノに戻ろう」

突然、ティナのトランシーバーが通信を傍受し、けたたましく鳴り響いた。

『こちらオルディネイトのセデル。旧回線を用いて通信している。ガルディオの全騎士に告ぐ。王はオルディネイトにガルディオ追討の命をお下しなさった。これは宣戦布告である。我々オルディネイトは、王の名のもとにガルディオを壊滅させる』

アブドはティナを見た。これまで見たことのないほど、恐ろしい形相だった。

「ええ。戻りましょう。レグーノに」

――――――――――――――――――――

惑星レグーノ、アレク王の宮殿パシフィスの塔前広場に民衆が集結していた。

アレク王は森羅光封剣(オールハトゥーム)を空に突き上げた。

「我に刃向かう者は何人たりとも許さぬ。この場で斬り捨てる」

民衆が逃げ出す。その最中、人波に飲まれた一人の子供が転んだ。

アレク王は剣を振り上げた。

――――――――――――――――――――

アブドはパシフィスの塔上空で船から降りた。その塔は夢で見たものと同じだった。ティナはそのままガルディオ本部のエウロパに向かった。

『助けて』

アブドは再び声を聞いた。逃げ惑う市民の切れ間から、王に剣を向けられた少年を見た。

アブドは手を伸ばした。

男は少年に剣を振り下ろした。

鈍い音がして、剣先は少年の頭の直上で止まった。アブドの腕が剣先を受け止めていた。

アブドとアレク王が対峙した。

「お前は…お前は…!」

アレクはアブドを指差した。

「やはりあの時殺しておけば良かったんだ。俺が甘かった。アブド・デ・へルート!この俺アレクが、今この場でお前を斬る!」

――…ブレード。

アブドはそう念じた。すると横に広げた右手に、ブレードが握られていた。

「それなら、受けて立ちます」

アブドは言い放った。

「そ、それは…!」

アレクは自身の剣を見た。アブドの持っているそれは、森羅光封剣と瓜二つであった。

「何故それを持っている!」

「何故?俺はシェニーと戦った時もこの剣が出てきた。これは俺の剣です」

「偽物が!」

アレクがアブドに向かって走り出す。

剣先がぶつかり鋭い音を立てる。

「答えろ。何故罪も無い人々を傷つけようとする」

「罪ならある。この俺に刃向かっていることだ!」

「ガルディオの騎士達もそうだと言うのか。彼らは王の為に戦う騎士だぞ!」

「俺にはオルディネイトがいる!それだけで十分だ。俺に逆らう可能性が少しでもある者は排除する!」

力負けしたアレクが倒れる。彼は拳を地面に叩きつけた。

「お前はいつもそうだ。そうやって俺を否定するんだ!」

立ち上がり、アブドに剣先を向ける。

「王は俺だ!もうほっといてくれよ!兄上!」

アブドは目を見開いた。

「どういうことだ。俺が…兄上?」

「知らないのか?…そうか。記憶がないのか。なら好都合だ。このまま何も知らずに死んでくれ!」

アレクがアブドに接近する。

「そうはいくか!教えてもらうぞ、俺の過去を!」

「お前を殺して、ドラゴゲネシスの力は俺が引き継ぐ!」

両者の刃が擦れ、鋭い音が響く。刃が拮抗する。2人の戦いがアブドに少しづつ記憶を蘇らせていった。

長く続いた決闘の末、アレクは遂に倒れた。

「これで終いだ」

アブドは剣を振り上げた。

アレクは目を瞑った。

アブドは剣をアレクの顔の横に突き刺した。

「立てよ」

アブドはアレクに手を差し伸べた。

「本当に俺がお前の兄なら、お前を狂わせた責任の一端は俺にある。償いたい。お前は凄い奴だ。悪かった、アレク」

アブドは頭も下げた。

「そんな…そんな…遅いよ…」

アレクはアブドの手を取った。そして立ち上がった。

アブドは言った。「良い王になるんだ、アレク」

「兄さん…。はい、僕、なります」

アレクは決闘を見守っていた民衆に頭を下げた。沈黙が流れる。まだ顔は上げない。

そんな中、どこからともなく拍手が起こった。勢いは周囲に伝播し、ついには全員が手を叩いていた。

新王が認められた瞬間であった。

「僕にはもうこれは必要ありません。どうか兄上が持っていて下さい」

アレクは森羅光封剣を拾い、アブドに手渡した。

「お兄さん」

アレクに斬られかけた少年が、二人に近づいた。

「君…さっきはすまなかった」

「お兄さんが助けてくれたから、いい。お兄さん、強いんだね」

「そうだね。最高の兄上だよ」アレクはそう言った。

「ソノ力、僕ニモ欲シイナ」

少年の腹が裂け、中から黒い腕が伸びてきた。

腕はアレクの腹を貫通した。

「ガハッ」

アブドは伸びてきたもう一本の腕を森羅光封剣で防いだ。

「ハハハ、お兄さん、強いんだね」

低い声が響いた。

「この…声は…」

「そうだ。今までご苦労であった。我が友、モナクよ」

「ヘ…ヘビッ…!」

「君のおかげでプラヴィーロレコードを破壊することが出来た」

そして突然の恐怖のあまり硬直していた民衆が、慌てて逃げ出す。

「五月蝿い」

パシフィスの塔前広場に集まっていた全員が、全身から血を吹き出して死んだ。

「そ…な……に…い…に…げ……」

腹を貫通していた腕が抜け、アレクは倒れた。

「お前…何者だ!」

2本の腕が少年の体を押さえ、中から真の姿を現した。

「俺の名前はデトルート。闇の龍王、ドラゴギヴィルだ」

「ドラゴギヴィル…!」

「貴様の力も頂くぞ、ドラゴゲネシス!」

デトルートの手が伸びてきた。アブドは壁を作ってその攻撃を防いだ。が、壁は砕け、腕の勢いは止まらなかった。アブドは横に飛び、間一髪で避けた。

「ほう、力を使いこなせるか。ドラゴゲネシスよ」

『アブド…助けて…』

その時だった。突然、ティナの声が聞こえた気がした。

アブドは翼を生やした。そして足元に壁を創造し、高く上がったアブドは飛び立った。

「追え」

デトルートは呟いた。

――――――――――――――――――――

ガルディオ団長イポテスダ・ドゥクスは語った。

「彼らオルディネイトは愚かにも130億年という歴史の重みに楯突いた。何が運命だ。そんなものは跳ね除けてしまえ。我々ガルディオはこの戦いに勝利し、新たな歴史を創るのだ!」

エウロパに集結していたオルディネイトの航空部隊をガルディオは極秘に修理していた改ダーパにより壊滅させた。


オーラト海域班長、ティナ・イ・オディオ。

雲一つない青空の一点が、赤く染まりだす。

赤い光は次第に大きくなり、遂に戦闘機が姿を現した。

「攻撃開始!」

攻撃の最中、オルディネイト側からの通信を傍受した。

『こちらオルディネイト騎士長セデル・ユスティーツァ。交渉を要求する』

セデルはティナに言った。

『オディオ、元同僚として助言だ。オルディネイトに来い。お前の強さは俺が一番知っている。ガルディオは今日滅びる。お前のような逸材が消えてしまうのは、この宇宙、王にとって大きな損失となる。オディオだけではない。我々はオルディネイトとなる者を歓迎する。オディオ。共に宇宙の平和と秩序を守ろう』

ティナはセデルを拒絶した。セデルは答えた。

『…。仲間にならないのなら、敵と見なすしかない』

雲を掻き分け、巨大な戦艦が姿を現した。

戦艦から放たれた赤色のレーザービームによって、オーラト海沿岸の迎撃部隊は壊滅した。

そのまま戦艦はガルディオ本部へと進行した。


「来たか、グンナー、キアラ、ガラリア」

団長のもとにマークシオ班が集結した。彼は言った。

「敵の最大勢力はあの戦艦だ。あれを落とせれば、希望が見えてくる」

「簡単に言うが、どうする、団長?」

「船に乗り込み、舵を奪って墜落させる」

マークシオ班の戦闘機四機は敵機が戦艦から発射される隙をついて戦艦に侵入した。

道中、グンナーは盾となりオルディネイトの行手を阻んだ。グンナーは機関銃を乱射する。

やがて敵の銃弾がグンナーにも命中した。頬を掠め、肩にめり込み、太腿に貫通した。

「へへ。まだまだ狙いが甘いぜ小僧ども。俺を殺さないと死んじまうぞ!」

諜報部の活躍により艦内での敵の分断に成功する。目的の操縦室の手前、その殿をガラリアが務めた。

「僕はガラリア・サヴェール。ガルディオの騎士の名にかけて、お前達を殺す」

団長ドゥクスとキアラは操縦室に辿り着いた。

妨害を突破したオルディネイトの騎士により銃弾で貫かれたドゥクスだったが、団長としての最後の使命を全うした。


「見ろ!船が!」

ドゥクスの指示のもと荒野の地下基地へと逃れたガルディオの騎士達は、そこでオルディネイトの戦艦が墜落するのを目にした。爆音と共に土煙が高々と上がった。

――――――――――――――――――――

戦艦の墜落を見届けたセデルは叫んだ。

「生き残っている全騎士に通達。これより地上作戦を実行する。ガルディオの騎士を一人残らず抹殺せよ」


オルディネイトの戦艦はガルディオ本部施設付近に墜落した。そこから数キロメートル離れたノンラドン荒野にて、ガルディオの残党は再集結していた。団長の最後の命令、オルディネイトへの奇襲を実行する為に。

ノンラドン荒野をオルディネイトの戦車大隊が侵攻した。

ガルディオの騎士達は地中に掘った溝から戦車大隊を攻撃した。


「粉塵を確認。やってくれたようです、エンテラル班長」

双眼望遠鏡を覗いた騎士が報告した。

「総員、パワードスーツと触角爆槍の用意はいいか」

このエンテラル班長こそがシオンの兄であった。

「ここにいる我々32人が最後のガルディオの騎士だ。私は一度挫折し、騎士になる夢を諦めた。しかし私は今ここにいる。あの時の私に足りなかったのは覚悟だ。君達に覚悟があるか!」

「「「オオオオオオッッッ!」」」

「作戦開始!」

騎士達が飛び上がった。そして上空から触角爆槍を戦車目掛けて投げつける。

――――――――――――――――――――

ティナは目を覚ました。

――ここは…ああ、敵の攻撃で。

ティナは体を起こし、辺りを見回した。

地面が抉られ、巨大なクレーターが形成されていた。海からは段々と塩水が流れ込んできていた。

――私だけ…五体満足…。

「誰か!誰か他に生存者は!?」

ティナは叫んだ。

「誰か…誰か…」

ティナは地面に拳を打ちつけた。拳に雫が一つ落ちた。

ティナは土を掴んだ。そして立ち上がった。

――日が少し動いたか。急がないと。

――――――――――――――――――――

オルディネイトの騎士達が勝鬨を上げている時だった。突然手榴弾が投げ込まれ、爆発した。

荒野の中、パワードスーツを着た一人の少女が陽を背にして立っていた。

「ガルディオ第38619期生、ティナ・イ・オディオ。これより敵を殲滅する」


「これは…一体…?」

セデルが戻った時には、荒野には肉塊が散乱していた。

「待っていたわ、セデル・ユスティーツァ」

目の先に、一人の少女が立ち尽くしていた。

「ティナ・イ・オディオ!」

セデルは剣を抜いた。

「お前を殺す!仲間の無念を晴らす!」

「裏切り者は、オルディネイトは排除する」

お互いの刃がぶつかり合う。力は共に拮抗していた。

セデルは剣を振り下ろした。ティナは顔の前で受け止めた。

「ガァアアァァッッ!」

セデルは剣先に体重を乗せた。

「クッ…!」

ティナはしゃがんだ。剣先はセデルの腹を裂いた。

突然抜けた力によって、セデルの剣は振り下ろされた。剣先はティナの肩を裂いた。

二人は互いに反対方向を向きながら前のめりに倒れた。

そこに激しい衝撃音が響き、土煙が巻き上がる。

「アブドを追ってに先回りして来たが、血肉のいい匂いだ」

男は深く息を吸い込んだ。

ティナが目を開いた。男の姿が目に入った。

「おや?まだ生きているのか。君、アブド・デ・へルートを見なかったか?」

そこにはデトルートがいた。

「ギャァ!」

地面から四匹の龍が現れ、ティナの四肢を咥え込んだ。

再び衝撃音が響き、土煙が巻き上がった。

「ティナを放せ。この化け物」

「おやおや、思っていたよりも早く会えたね。アブド…いや、ドラゴゲネシス」

アブドは森羅光封剣を構えた。地面を蹴り、ティナを押さえる龍に斬りかかる。

その途端、アブドの両脚も別の龍に咥え込まれて引っ張られ、倒れたアブドは地面を引きずられた。

ティナとの距離が離れていく。

「ドラゴゲネシス。そこで真の絶望を味わえ。そして俺のもとへ来い」

ティナを押さえていた龍達が、互いに反対方向に動き出す。

「い…いやぁぁ…」

ティナが両側へ引っ張られる。ティナの体の中心に力が掛かる。

「アブド…助けて…」

ティナの顔が苦痛に歪む。

「ティナ…!ティナ…!」

「あ…あぁぁ…」

ティナは左右に二つに裂けてしまった。

「ティナ!ティナ!ティナァァァァァァッッッ!!アアアァァァァッッッ!!!」

「ハハハハハ、いい顔だぞ、アブド!」

龍が動き、アブドはデトルートの前で固定される。

アブドは項垂れたまま、何もできなかった。

「ティナ…ティナ…」

「いただきます」

デトルートが口を開いた瞬間、アブドの手に握られていた森羅光封剣が光輝いた。

そしてアブドと共に、光の速さで飛び去っていった。

「そんな…もう少しだったのに…。何故だ!」

デトルートの怒りによって生み出された龍達は、ティナの肉体を食い荒らした。残ったのは、原型も留めない見るも無惨な肉と骨の塊だった。

「まぁいい。次の手を考えよう」

「はい。ドミナード様。…おや?」

デトルートはセデルを発見した。

「君は、セデル・ユスティーツァか。タルタニッドから聞いていたよ。オルディネイトの騎士長」

「お前は…ダレだ…。ガハッ、ヘイワを…乱す者か…?」

セデルは白い血を吐いた。

「いいことを思いついた。よし、お前にしよう」

一匹の龍が地中からセデルの腹を貫いた。セデルはそのままデトルートの頭上で静止した。

「お前に俺の力を分けてやる。耐えられるかはお前次第だがな」

龍の口がセデルの口に触れる。

龍が抜け、セデルの体が落下する。そして痙攣を始めた。

「あ…あァアあッ…グァァアアアアッッッ!!」

セデルは爆発した。セデルの肉体は漆黒に染まっていた。

「おめでとう、セデル。いや、君は今日からクビラだ」

「は。デトルート様」

「…何を見ている?見せ物ではないのだぞ?」

岩陰から、一人の女性が姿を現した。そしてその場に平伏した。

「ようやく…ようやくお目にかかることができましたわ。ドラゴギヴィル様!私めはヴィリーノ・デ・クレダントでございます。あなた様にお会いすることだけが生きる目的でございました」

「ほう」

龍がヴィリーノをデトルートの前に引き寄せた。

「言え。お前の望みを」

「あなた様は全てを破壊するのでしょう?この退屈な宇宙の全てを。面白いではありませんか。そして新たな世界を作り直して、私は神になりたいのです。それがアカシックレコードを求めた本当の理由」

「強欲な女だ。気に入った。最後はお前だ」

デトルートの唇がヴィリーノの唇に触れた。ヴィリーノの体がみるみる黒く染まっていった。

デトルートが唇を離した。

「お前の名前はアンディラだ」

「ありがたき…幸せにございます」

デトルートはアンディラを投げ捨てた。

「集結せよ」

デトルートがそう言うと、彼を囲うように十二人の大将が片膝をついて集まった。

「君達は今から、裏十二神将だ」

「「「は」」」

「最初の命令だ。ドラゴゲネシスを捕まえろ」


「ティナ…ティナ…」

アブドは目を覚ました。

『顔ヲ上ゲロ、小僧』

そこはただ草が風に揺れ、森羅光封剣が突き刺さっているだけだった。

アブドは森羅光封剣を見た。

『ドウヤラ気ヅイタ様ダナ』

剣はアブドに反発した。

『オ前ハ名ヲ明カスニ値シナイ。小僧デ十分ダ』

「舐めんじゃねーぞ!俺はドラゴゲネシスだ。見てろ!」

アブドは手を突き出す。しかし何も起こらなかった。

「どうしちまったんだ…!」

『震エテイルデハナイカ、小僧』

「うるさい!…ああそうだよ。怖いよ。ティナのあんな最後見せられて、俺はあの時何も出来なくて、今じゃこうして自分の力さえロクに使えなくて、俺はどうすればいいんだよ…」

『ソウイウ時ニ頼レト言ワレテイタジャナイカ』

「誰に…」

アブドの脳裏にある老人の顔が浮かんだ。

『まぁ、何か困ったことがあればまた来ておくれよ』

そしてアブドのいるその場所こそがレグーノであった。

そこに何者かが飛来した。

「アブド・デ・へルート、発見」

「その顔は…」

「久しぶりね、アブド」

「ヴィリーノ・デ・クレダント!なんなんだその姿は」

「私はドラゴギヴィル…主様に力を与えてもらったの。今の私はアンディラよ。そして私こそが、裏十二神将の一人」

アブドは森羅光封剣を引き抜いた。

「裏十二神将、ドラゴギヴィル。ティナの仇だ。お前らを皆殺しにする」

刃はアンディラに通らなかった。アブドは跳ね飛ばされた。そしてその先にいたのは異形の姿をしたセデルだった。

「お前は!セデル・ユスティーツァ!お前も裏十二神将か!」

「ああそうだ。ようやく手に入れたんだ。宇宙を平和にする力を!アブド・デ・へルート!宇宙の平和を乱す者は排除する!」

セデルは続けた。

「アブド・デ・へルート。お前さえ、お前さえいなければ!シュリンターなんていう組織が台頭してくることもなかった!メレッドも!そうなれば宇宙大戦も起こらなかった。オルディネイトも…。ガルディオが二つに割れる必要なんてなかったかもしれない。俺は出まかせの挑発をしているんじゃない。宇宙の平和が乱れたのも、ティナ・イ・オディオが死んだのも、お前のせいだ、アブド・デ・へルート」

その言葉にアブドは怯んでしまった。

「…でも、セデルは正しい。平和を乱したのは俺だ…。ティナを殺したのも。いやティナだけじゃない。シオンも、リデルも…。俺は親友を全員殺してしまったんだ…!」

森羅光封剣は言った。

『オ前ガドラゴギヴィルニ喰ワレレバ、ソレコソ今ノ宇宙ハ崩壊スル』

「知らないよ。喰われた後なんだろ?俺は死んでるんだ。死んだ後のことなんかどうでもいいよ」

『本気デ言ッテイルノカ!…オ前ニハ失望シタ』

森羅光封剣はそう言うと、アブドの手から離れ、勢いよくアブドの腹に突き刺さった。

クビラがアブドの体から剣を引き抜こうとした瞬間、森羅光封剣が上下に動き、アブドは二つに裂けた。

それと同時に地面が割れ、暗闇の中にアブドの肉体と森羅光封剣とが落ちていった。

アブドと剣が見えなくなると、地面の亀裂は閉じた。

――――――――――――――――――――

アブドの肉体が潰されかけた瞬間、アブドの周りの土が消滅し、空洞ができた。やがてアブドの半身同士がゆっくりと結合し、そこからさらに時間を掛け、ようやくアブドは目を覚ました。

『聞クガイイ、ドラゴゲネシス。私ハ光ノ龍王、ドラゴフォースダ』

「待てよ、お前、名前を…」

『アア。私ハトウニ自分ニ失望シテイル』

「それになんだよ、ドラゴ…フォース?」

『ソウダ。遥カ昔ニコノ剣ヘ封印サレテ以来、ソノママダガナ』

「どうしてそんなことを俺に?」

『オ前ノ憎ム闇ノ龍王ドラゴギヴィルハ、ドラゴフォースカラ生マレタンダ』

「ドラゴギヴィルがドラゴフォースから?一体どうして?」

『アル時、宇宙ニ一筋ノ光ガ差シ込ンダ。ソノ光ノ元デドラゴフォースハ誕生シタ。小僧、覚エテオクガイイ。光アル処ニ必ズ闇ハ存在スル。光ニヨッテ照ラサレナカッタ場所デ、ドラゴギヴィルガ誕生シタ。ツマリ光、ドラゴフォースガ誕生シナケレバ、ドラゴギヴィルモ誕生シテイナカッタ。何一ツ存在スルコトハナカッタノダ。ドラゴギヴィルトイウ怪物ヲ生ミ出シタノハ私ナンダ。私ガ悪イ』

「そんなの結果論じゃないか。俺は悪いんだ。俺がシュリンターなんかに入ったから!俺が自由なんか望んだから!宇宙はもう、お終いだ…」

『オ前ガイナケレバ、ティナモシオンモ入団試験デ死ンデイタカモシレナイ』

アブドは目を見開いた。

『オ前ガイナクテモ、シェニー・アグリアハ起キテイタカモシレナイ。ソウナレバザモークデガルディオハ壊滅シテイタカモシレナイ。アレク王ハ反逆者ヲ根絶ヤシニシテ恐怖デ人々ヲ支配シテイタカモシレナイ』

「そんな…そんな…そんなこと、わからないじゃないかよ…!」

『ソウダ。未来ハ誰ニモ分カラナイ。私ハドラゴギヴィルヲ生ミ出シタ。ソノ罪ハ消エルコトハナイ。シカシドラゴギヴィルヲカツテ封印シタノモ私ダ。私ハ自分ノ罪ヲ全テ償ッタトモ、償イキレルトモ思ワナイ。私ハ自分ニ失望シテイル。ダガ己ノ非ニヨッテ押シツブサレモシナイ』

「俺が…俺が全てを…でも…俺は…俺は…ッ!」

『アンタがやるべきなのは正義でも悪でもない、償い』

『あなたは二人の想いを受け継ぐ為に生きているの』

アブドの脳内にティナの言葉が響いた。

――ティナ…。そうだ。俺は二人の、そして、ティナの想いを。

アブドは立ち上がった。その右手には、森羅光封剣が握られていた。

アブドは目の前に向かって一度剣を振った。

土が消え去り横穴ができた。アブドは先へと歩き出した。

そしてカルス石を採掘する坑道へと出た。

アブドは見張りの二人の男と共にエレベーターに乗り込んだ。エレベーターはゆっくりと上昇していった。

「おい奴さん、上で総督がお待ちだ。事情は彼に洗いざらい話すことだな」

「わかりました。親切にどうも」

男二人は目を合わした。互いに困惑の眼差しを送った。

エレベーターが止まり、扉が開いた。賑わう声と共に光が差し込んだ。そして扉の前に仁王立ちする大男の姿が目に入った。

「この方がバーバル街総督、ウィル・ベソットだ」

「あんたは…!」

「名前を聞いてまさかとは思ったが、久しぶりだな。ガルディオのヒヨコ」


【次回予告】

〈第陸章 森羅回帰篇 Part2〉

少女は振り返る。

「…ティナ・イ・オディオ。あなたは?」

霧が晴れ、赤髪の少女が現れた。

「私?私はビオロ」

宇宙空間の中で、ドラゴゲネシスとドラゴギヴィルが向かい合った。

「お前を殺して、この宇宙を支配する」

「お前を殺して、この宇宙を救い出す」

最終決戦が今、始まる。

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