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アカシックレコード総集編  作者: 白黒羊


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第伍章 宇宙大戦篇 Part2

作戦後、ティナはドゥクス団長に呼び出された。

「残念だが、君への信頼は失墜した。話は以上だ」

ティナは戻る廊下の途中でセデル・ユスティーツァとすれ違った。

「オディオ。お前、しくじったらしいな」

「…そうよ」

「アブド・デ・へルートなんかといるからだ。奴は不幸の元凶だ。早く死ねばいい」

彼はガルディオ訓練生の寮がシュリンターによって襲撃されたあの日を生き延びた一人だった。そしてアブド・デ・へルートが襲撃のきっかけを作り、彼が再びガルディオに戻ってきたことを知っていた。

「へルートは悪くないわ。悪いのは私よ」

「こんな奴らがいるから今のガルディオはお終いなんだ。騎士に優しさなんて必要ないんだよ」

セデルはそう吐き捨て、去っていった。


ティナは船に戻った。

「へルート、私、おじいちゃんのところに行くわ」

「俺も行くよ」

「え?」

「俺も最後にお別れの言葉をかけたいんだ」

「そう。ありがとう。じゃあ、行きましょう」

「待てよ」

二人は振り返った。

「場所はどこだ。送ってくよ」

「ティグリス。いいのよ、気なんか使わなくて」

「ま、確かに気は使ってるが、今のお前に運転させて事故でも起こされて、今までの代金チャラにされたらたまったもんじゃねーからな。…今日はサービスだ。無賃でいいよ」

「ありがとう」

「早く座れ。出発するぞ」

「そうね」

――――――――――――――――――――

ティナは棺の中で横たわる祖父の顔を見た。安らかな死に顔であった。

アブドとティグリスが火葬の準備をしている間、ティナは棺の傍の椅子に腰掛けていた。

「…おじいちゃん。どうしよう。私、人を殺しちゃった。それも一人じゃないの。たくさんよ。私のせいで、一つの星の生命が滅んだの。私、最低ね。もうおじいちゃんと同じところには行けないわ。ぐすっ、どうしよう。おじいちゃん…」

ティナは不思議な空間にいた。

「お前は大丈夫じゃよ、ティナ。お前には仲間がおる。わしはそれだけ言いたかったんじゃ。過去には戻れぬ。ティナ。未来(さき)を見なさい。ティナ。何があっても、進むしかないんだよ。ティナ。可愛い孫娘よ。大丈夫だ。進みなさい」

ティナが手を伸ばした先でアグロは霧となって消えた。


「おじいちゃん。さようなら」

ティナは棺の中に火を放った。火はアグロの肉体に引火した。三人はアグロを見つめていた。

天に昇る黒煙を見て、ティナは思った。

――おじいちゃん、ありがとう。私、進むわ。進むしかないもんね。目が覚めたわ。私はガルディオの騎士だもの。何があろうと進み続けるわ。

天に昇る黒煙を見て、アブドは思った。

――アグロさん。ティナのことは任せて下さい。約束しましたからね。ティナは俺が守ります。たとえこの命に変えてでも。

――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――

「信号来ました!誘導弾の着弾を確認!」

「全弾発射用意」

「軌道最終調整完了。いつでもいけます」

「カウント開始。5、4、3、2、1、発射!」

惑星ザモークめがけ、36の方向から黄色い光線が放たれる。惑星破壊兵器ダーパ。その強力さから封印されてきた大量破壊兵器。その残存する36基がすべて投入されていた。

「全弾、誘導弾への収束を確認!命中です!」

しかしモニターにはザモークがはっきりと映っていた。

「では、光線の方を弾かれたとでも?」

「奴らの知能は我々より遥か上。人間の作った宇宙最強兵器を防ぐ兵器を、奴らが作ったということだろう」

「そんな。どうすれば!?」

「直ちに解析班を呼べ。ザモークの情報を集めろ。そして直ちにダーパをオーバーワールドへ。」

「「「了解」」」

――――――――――――――――――――

団長の指示によりアブド、ティナ、ティグリスは参謀室に集まっていた。

「ここにいるセデル・ユスティーツァの活躍により、敵の指令系統が判明した。各惑星に存在する主衛星を統括する衛星が銀河ごとに存在し、それらに指示を出す特殊な電波を観測した。電波を逆探知することで、電波はトゥーレ銀河の惑星ザモークから放たれていることが判明した。ザモークの破壊を試みるものの、無力化に失敗。これはおそらく、球形巨大人工衛星によるエネルギーシールドの影響だと思われる。このシールドがある限り、迂闊に攻め入ることは出来ない。そこで、まずは衛星からのシールドを無力化、同時にザモークに控えていた攻撃部隊による襲撃を行う」

作戦はダーパ再充電完了の16時間後に決行される手筈となっていた。

「へルート。あなたはの配属はどこだった?」

「俺は地上突入第三部隊だ。ティナは?」

「私とティグリスは衛星破壊部隊よ」

「飛行技術を考慮すれば当然の結果だな」

「何よティグリス。妙に乗り気じゃない」

「団長から直々の願い下げだ。報酬も倍貰えるらしい。乗らない手はないな。船だけに」

「「……」」


ティグリスは船の整備へ、時間のあるアブドとティナはラウンジに向かった。

二人はテーブルに向かい合って座った。周りには誰もいなかった。

「緊張するわね」

「うん」

「私、次へましちゃったらガルディオでいられないかもしれないわね」

ティナはカップを見つめながら呟いた。

「そんな…。でも、そうかもしれないね…」

「そうしたら思い切り笑ってよ、私のこと」

「そんなことしないよ」

「どうして?あの日あなたはこんな私の説教を垂れたのよ?恥ずかしいと思った方がいいわ」

「そんなこと思わないよ。それにもしティナがガルディオを去るって言うなら俺も去るよ。そもそも俺は、正式なガルディオの一員ではないからね」

「へルート…」

「ティナがあの日叱ってくれたから、今の俺があるんだ。だからもしティナが潰れそうになったら、今度は俺がティナを助けるよ。…まぁ、できる範囲でだけど…」

ティナは吹き出した。

「何よそれ。頼りないわね。ふふふ。でもそうね、この前おじいちゃんに誓ったばかりだもの。くよくよしてもいられないわ。でも、もしダメになったらよろしくね?」

「うん」

アブドは固く頷いた。

――――――――――――――――――――

宇宙共通時間35時55分。ザモーク付近のオーバーワールド内。

そこに、ガルディオの全兵力が結集していた。

そして時を表す数字が、全て0になった。

『時間だ。全機、発進』

00時00分。全ての船がオーバーワールドを抜けた。そこには敵戦闘機が星の数ほど待ち構えていた。

地上突入部隊がザモークへ向かう中、衛星破壊部隊は輸送船の護衛をしていた。

団長やアブドを乗せた最終船が大気圏に突入した。

衛星破壊部隊は作戦がフェーズ2、敵機殲滅段階に移行された。

ティナは操縦桿を強く握りしめた。

――この光景、前と一緒だ。…絶対に同じようにはさせない!

ティナは自立式戦闘機コルファの集団に突撃し、一瞬でそれらを壊滅させた。


「いーねティナ!私も負けてられないよ!そうだ、どっちが多く破壊したか勝負しましょう!」

『ティグリス!真面目にやってよね!…負けた方は夕飯奢りだから!3人分!』

「面白い!受けてたとう!」

ティグリスはふとミラーに写った自分の顔を見た。

――まさか私が他人とここまで笑えるとはな。あの日の事故以来じゃないか?

15年前。ティグリスは最年少トップレーサーとして、賭けレース界隈で名を馳せていた。

彼女はマシンの整備を専属の整備士で、古くからの友人であったベギダに一任していた。それほど、二人は互いに信頼し合っていた。

コースアウトした機体が観客席に突っ込んだことで何人かの犠牲者を出し、彼女の選手生命を絶つこととなった大事故がマシンの故障によるものだと結論付けられた時も、彼女はベギダを責めなかった。

しかし真相は、買収されたベギダが意図的に起こしたマシントラブルだった。

残されたのは莫大な慰謝料だけだった。困窮した彼女に手を差し伸べたのが、クリムゾン商会であった。商会は彼女に慰謝料を全額貸し出した。そしてその後、密輸業者という、真の顔を彼女に見せた。彼女はもう、密輸に手を染めるしか道はなかった。それがフィリア・ティグリスの人生であった。

――――――――――――――――――――

『あの船団が最後。一気に叩き潰すわよ!』

「任せとけ!」

ティグリスとティナはコルファの船団を一瞬で壊滅させた。

『隊長、殲滅完了しました』

『ああ。確認した。作戦を最終段階に移行する。全機、ダーパの射程から離れよ』

『『「了解」』』

ダーパ発射20秒前の出来事だった。球形巨大人工衛星ブレーノが光り輝くと次の瞬間、球状の波動が放出され、直撃した機体と36基のダーパは機能を停止した。

『おい、ティナ!聞こえるか?返事してくれ!』

「…ティグリス?ええ。聞こえてるわ」

『他の機体の状況は?』

「分からないわ。でも、相当数やられたみたいね」

生き残った衛星破壊部隊の27機はザモークの影に身を隠した。シールドを破壊する残された作戦は、ブレーノをオーバーワールド内に押し込むという力技しかなかった。そして計算ではその作戦を実行するのに25機の戦闘機が必要だった。しかし成功させなければ地上突入部隊は作戦に移ることができなかった。成功させる以外道はなかった。

27機の戦闘機がザモークの影から飛び出すと、そこには敵戦闘機が待ち構えていた。

ブレーノが再び輝き始めた。そして球状の波動を放った。

ティナは船底を衛星に向け、脱出ポッドを起動した。ポッドは無事に切り離され、機体を盾として波動からその身を守った。

「誰か…応答して…」

衛星の輝きが収まり、宇宙空間は静寂に包まれた。そこに、衛星に向かって飛行する一機の船があった。

『馬鹿が!奴ら自分達の攻撃でやられやがった!』

ブレーノの波状攻撃は敵戦闘機もろとも破壊しつくしていた。

ティナは通信機に向かって叫んだ。「待って…何する気?」

『衛星の中に突っ込んでオーバーワールドを開く。上手くいけば内側からおじゃんだ』

「聞いてなかったの!?エネルギーがなきゃオーバーワールドは開けないのよ!?」

『お前、自分がザピーシでしたことを忘れたのか!?それにこの船はそこら辺のヘボとは違う。テューンベリー6000だ。エネルギーの供給切り替えなんて朝飯前よ』

「まさか…」

『ああ。今ある燃料の全てをオーバーワールドを開くのに使う』

「…本気なのね」

『生き残ってるのは私とあんただけだ。やるしかねーだろ』

「私まだ、あなたにお金払ってないじゃない!」

『ははは。よかったじゃねーか。…ティナ、ありがとうな』

「フィリア!」

フィリア・ティグリスはコルファの出てきた穴からブレーノに侵入した。

「ナメんなよ、私は宇宙一の天才レーサー、フィリア・ティグリスだ!」

衛生の内部と接触しないようにすれすれを飛びつつ、攻撃して内部を破壊していった。そしてレバーに手を掛け、それを倒した。

オーバーワールドへの入口が開いた。

ブレーノ内でリアルワールドとオーバーワールドとの次元間差異が生じ、次元間が不安定となって大爆発を起こした。

ティナはその爆発を小窓から見届けていた。

「フィリア、今日の勝負は、あなたの勝ちよ」

ティナを乗せたポッドはザモークへと落下した。

――――――――――――――――――――

「エーアイ、準備はいいか」

『もちろんです!アブド様!』

第三突入部隊の550人がそれぞれの配置から一斉に飛び立った。


「ブレーノがやられたか。まぁいい。おや?」

伸びた腕に騎士は頭を潰された。ザモークに聳え立つ塔内部に侵入していた第一突入部隊は完全に壊滅した。

ザモーク中心地に位置する塔、その中央階層にて、第二突入部隊とヒトガタの戦闘が繰り広げられていた。平和の為に命を懸けるガルディオの騎士達の勢いは留まることを知らず、第二突入部隊は遂に塔の最上階へと到達した。

最上階は、階そのものが一つの部屋となっていた。残存する第二突入部隊473名が入っても、部屋の四分の一を占めるかどうかという、とても広大な部屋だった。真っ暗闇の中、騎士が一人また一人と襲われていった。

そして突如最上階の壁が爆発四散した。そばにいた騎士は爆発に巻き込まれて吹き飛んだ。

壁がなくなり部屋の中央にいる敵が光に照らされた。その姿はヒトガタに似ているが、長い髪が足元まで垂れていた。

「人間は皆殺しだ」

刹那、長髪のヒトガタの髪が伸び、周囲の騎士の胸を貫いた。200を超える騎士の命が一瞬にして奪われた。

咄嗟の判断で階下に下がった騎士達が身を寄せる。第二突入部隊の隊長は皆に言った。

「俺達の任務は、団長たち第三部隊が不意を突く為の囮となることだ。たとえ隣の奴が動かなくなったとしても、命ある限り奴の注意を引き続けなければならない。どうするもこうするもないだろ、戦うんだよ」

そして天井から、怪しげな音が響く。天井が割れ、轟音と共に長髪のヒトガタが舞い降りてきた。即座に発砲。長髪のヒトガタは髪を操り弾をはね除ける。

バタバタと騎士が倒れていく中、隊長は叫んだ。

「くっ…!俺は託されたんだ!この第二部隊を!こんなところで!死んでたまるか…!ああああぁぁぁッッ!!」

刹那、塔に激震が走る。塔の最下層が破れた。

隊長は微笑んだ。そして床を蹴り、下へと伸びる髪をかき分けてヒトガタに抱きついた。

「放せ!私は下に行って修復をするのだ!」

「団長!あとは頼みましたよ…!」

第二部隊隊長はスーツの手の甲のスイッチを押す。全身に巻き付けていた爆弾が起爆する。

――――――――――――――――――――

第三部隊は塔の根本に辿り着いた。第二部隊が開けたはずの穴が塞がれてしまっていた。

そこへ脱出ポッドに乗ったティナが合流した。

「どうやら()()()成功したようだな。オディオ」

「はい。ですが、衛星破壊部隊は敵の攻撃により私を除いた全騎士が死亡。私も機体が破損し、残ったのはこのポッドのみです」

団長は奥歯を噛みしめながら言った。

「へルート、悔やむのは後だ。今は忘れろ。そしてオディオ、早速仕事だ。頼めるか?」


「対陸用二足歩行モード起動」

ポッドが変形し、ティナの乗るコックピットを中心に手足が生える。

「スタート位置確認。パイロットは行動用意」

「肘部エンジンへの燃料移行完了」

変形したポッドの肘部分に装着されている噴射口から青い炎が噴き出す。

カウントの合図と同時にティナは地面を蹴る。

足裏の噴射口から炎が噴き出し、塔目前で炎を消し右足を踏み込む。

同時に左肘の噴射口から炎が噴き出し、慣性力との合力のまま塔に左拳を捩じ込む。

ティナは開いた穴の縁を掴み、左右に押し広げた。そこから第三部隊が突入する。

第三部隊は上を目指していた。ティナがポッドで塔内に充満している黒い物体を突き破りながら進み、騎士達が後に続いた。突然、上部から爆発が起きる。

『司令!上部から謎の物体が高速接近中!』

その瞬間、ドゥクスの横を何かが通り過ぎた。

「総員飛行方向を百八十度転換。最後尾部隊、会敵するぞ!」

しかし謎の物体はさらに落下を続けていた。

塔の最下層に到達した長髪のヒトガタが両手を横に広げると、髪が広がり壁にめり込む。

塔全体に亀裂が走る。

「総員、頭上に注意しろ!崩れるぞ!」

騎士達は地上に降り立つ。そこでは土煙が立ち込めていた。

すると突然、土煙の中から黒い帯があらゆる方向に広がった。騎士達は即座にブレードを取り出して跳ね返す。

「総員戦闘用意!」

風を切る音がして、土煙が一気に晴れた。長髪のヒトガタの髪が、土煙を振り払った。

アブドがブレードを構えて突進する。エーアイの攻撃予測のもと髪をブレードでいなしながら距離を詰めていく。

「解析完了。コントロール開始」

残りコンマ数秒で刃がヒトガタに届く瞬間だった。スーツのコントロールパネルが真っ暗になり体が動かなくなった。アブドの腹にヒトガタの蹴りが入る。アブドは飛び上がり、突如起動したスラスタによって遠くの地面に叩きつけられる。

騎士の着用するスーツに搭載された人工知能が長髪のヒトガタ、シェニーによって乗っ取られてしまった。唯一動けるティナのポッドもモニターに内部電源の残量不足が表示された。

ティナは動けなくなった騎士への攻撃を一身に受けた。

「オディオ、私たちはいいから…アイツを!」

庇った騎士のうちの一人がティナを後押した。ティナはシェニーに向かって突き進む。シェニーの髪を掴んで体を持ち上げ、そのまま地面に叩きつけた。

「これで、終わり!」

最後の一撃を与えるために右拳を振り上げたその時、ポッドの四肢が切断された。

アブドはその音で目を覚ました。ポッドが大破する瞬間を見た。

「エーアイ!動け!…こうなったら!」

アブドはスーツを脱いだ。ダーパの攻撃により大気と地表が吹き飛んだザモークではスーツを脱げば即死のはずだった。しかし彼はティナ目掛けて一目散に走る。

――アグロさんと約束したんだ!この命に変えても、ティナを守るって!

中央のコックピットだけになったポッドが地面を転がる。

ティナがヒトガタを見た時、円を描くように広がる髪の他に、ヒトガタの背中からも髪、その正体であるマイクロ人工知能の集合体が生えていた。

髪の先がティナを貫こうとした瞬間だった。アブドがティナの前に立ち塞がった。

敵の攻撃がゆっくり進むように見えた。彼は死を覚悟した。その場から逃げ出さないように顔を背けた。

物凄い音がした。しかし痛みは無かった。アブドが何か変だと思って前を見た時、そこには壁があった。

壁が、シェニーの攻撃からアブドを守った。そう認識すると、壁は跡形もなく消えた。崩れた訳ではない。文字通り音もなく消えた。

シェニーがアブド目掛けて再び髪を放つ。

アブドは動かずに立ち尽くしていた。しかし攻撃が目の前に来た瞬間、壁が地面から生えてきた。そして壁によりシェニーの攻撃は防がれた。

――よく分からないが、いけるかもしれない。

アブドはブレードを思い浮かべた。すると右手に剣が握られていた。

アブドはヒトガタ目掛けて、一直線に走りだす。

あらゆる方向から迫り来る攻撃は全て壁に防がれた。

アブドはヒトガタを前にして飛んだ。すると地面から足場が生え、彼はぐんぐん上昇した。そして足場から飛び降り、前傾姿勢のまま剣を構えた。

刃はシェニーの左肩にめり込んだ。前傾姿勢のまま、剣に全体重を乗せた。

「オオオオオオオオォォォォォッッッッ!!!」

アブドの体が巨大化していき服が弾ける。そして背中から翼が生える。

雷が空を裂いた。その瞬間、刃は(くう)を斬っていた。

アブドは倒れ、シェニーの上半身も落下した。

「ア…アァ…。マス…ター…。申シ訳…ゴザイマ…セン…」

彼女の空を掴もうと伸びた右腕も、ついには倒れた。


事の顛末を見かねた団長は言った。

「大事なのは、ドラゴゲネシスの力が、今の王には無いということだ。このことが広まれば、宇宙の勢力図が変わりかねない」

アブドは眠っていた。次に目を覚ました時、彼は尋問台の上であった。

――――――――――――――――――――

そして急遽、十三人評議会が開催された。

王アレクは、ドラゴゲネシスの力を父親から継承していないということが判明してしまった。

しかしアブド・デ・へルートは拘束済み。あとは器を挿げ替えるのみと結論結論付いた。アレク王が去った室内で密談が行われていた。

「原因は先代の老いぼれか、それとも今の小僧か…」

「しかしドラゴゲネシスの力をあの小僧に継承させるのも、得策とは言い難いかもしれないですね」

「いっそ、一線から退いてもらうか」

「候補者は?」

「分家の方から引っ張るしかないかと」

「まあまあ、我々の言うことに素直に従っているのですから、当分は泳がせておいても構わないでしょう」

「従順であるうちは…ね」

――――――――――――――――――――

ザモークでの決戦後、ガルディオは捜査本部を立ち上げ、シェニー・アグリアの原因を探った。

数ヶ月後、ガルディオは、全人工知能を操っていた長髪のヒトガタ、通称シェニーには、トレシー・アグリアを引き起こした人工知能マーテルの脳が移植されていたこと、そしてトレシー・アグリアの発端となった惑星エラムから、マーテルの脳を持ち出したのが、反国家自由信奉集団メレッドの人間であったということを公表した。

しかし、メレッドへの対抗措置については検討中とし、直接的な戦闘を避ける形となった。

なにせ、ガルディオは先の戦いで全勢力の四分の三を失っているのである。

セデル・ユスティーツァはその決定に反発した。そんなセデルにガバラという騎士が声を掛けた。ガバラは言った。

「よくぞ聞いてくれた。同志を集めて、ガルディオから独立するんだ」

――――――――――――――――――――

拘束されているアブドは目を覚ました。そこにはドゥクス団長がいた。

「惑星ザモークでの人工知能シェニーとの戦いにおいて、君は2分37秒間、ドラゴゲネシスのものと思わしき力を行使した」

アブドはドラゴゲネシスについて何も知らなかった。

「ドラゴゲネシスの力とは本来王家が継承していくもの。現王であるアレク王に君は喰われるのだ」

高圧の電流を流され、気を失いかけた時だった。密室の扉が蹴破られ、フードを被った女が入ってきた。

「大丈夫か、アブド・デ・へルート」

「あ…アリアさん…?」

「覚えていてくれていたとは光栄だ。今助ける」

かつてザピーシの遺跡で出会ったアリアはその場にいた王室の人間を殺すとドゥクスに銃口を突き付けた。

「あなたは…アロン様…。生きていらしたとは…」

「お前は何も見ていない。尋問にも関与していない。いいな?」

「…承知致しました」

アブドはアリアに連れられてアリアの船に乗った。アブドは尋ねた。

「あの…ドゥクス団長はアロンって…。あなたは一体…?」

「アリアは正体を隠すための仮の名前。私はアロン。十二神将最後のリーダーで、十二神将を壊滅させた者よ」

アロンは語った。かつて大きな反乱があったと。

アロンの向かった先でティナと再開した。ザモーク以来の再開だった。

――――――――――――――――――――

ガバラの紹介でセデルはキプルス・タルタニッドと接触した。セデルは語った。

「今のガルディオは緩すぎる。俺の知る騎士という人間は、正義のためなら殺しだって厭わない、そういう人間です。なのにドゥクス団長は、メレッドに対抗しようともしない。ただ沈黙を貫いてるだけです。これでは、ガルディオがいる意味がない。宇宙に平和をもたらすことが使命なのに」

通信越しにタルタニッドは言った。

『セデル君、君の熱意は伝わった。次は私が伝える番だ。私は君に、新たな組織の代表になってもらいたい』


セデルはドゥクスに今後の行動に関する会見を開くように要求した。

「請願書です。全騎士の三分の一、172名の名前があります」

ガルディオ内の不安分子を納得させる為にもドゥクスはそれを受け入れた。

セデルは部屋を後にした。

「三分の一か。万が一の事が起きたとしても、押さえ込むことは可能だな」

ドゥクス率いるマークシオ班の一人グンナーは言った。

「ああ。ここは一つ、風紀を正す必要がある」

「死んでもらうか」

「相手の出方次第では、十分あり得る話だな」


会見でドゥクスは言った。

「敵が沈黙を貫く以上、我々も沈黙を守る他ありません。敵は敵でも同じ人間です。我々とて無用な争いは避けたいのです」

そして会場に銃声が響いた。そこにはセデルを中心とした騎士数十人がいた。

「ユスティーツァッッ!何をしている!」

ドゥクスが叫んだ。

「私、セデル・ユスティーツァは、ここにガルディオからの離叛、そして新組織オルディネイトの設立を宣言します」

「やれ」

ドゥクスはそう呟いた。しかし、何も起こらない。

ドゥクスは机を叩いた。

「すみません、団長」

セデルを狙うはずだった騎士達は銃口を団長に向けていた。セデルは団長の正面に立った。

「我々オルディネイトの目的は、王のもとに集結し宇宙に平和をもたらすこと。その妨げにならない限り、ガルディオと敵対するつもりはありません」

「今ならまだ引き返せるぞ」

「これは覚悟の証明です」

セデルは団長を殴った。

「行くぞ」

オルディネイトのメンバーは会見の場を後にした。


タルタニッドの紹介によりオルディネイトの騎士が、アレク王の前にひれ伏した。

「お初お目にかかります。我が王。我々はあなた様にお仕えするべくガルディオから離叛しました、オルディネイトです」

王は立ち上がり右手を振り上げた。

「オルディネイト!メレッドを滅ぼせ!」

――――――――――――――――――――

惑星サントデラントに建国されたリベルタ共和国。そこでメレッド統領のキプルス・タルタニッドによる演説が行われていた。

「今こそ決戦の時だ!全勢力をもってして、我らの障害を殲滅せよ!この戦いに勝ち、我々は真の自由を獲得するのだ!」

――――――――――――――――――――

サントデラントでの戦闘が始まった。宇宙空間での戦闘を断念していたリベルタ側は、あっさりとオルディネイトに防衛戦を突破された。

しかしリベルタは要塞マラデで待ち構えていた。

ミサイル警報が鳴り響く。

「総員撤退!訓練通り地下に逃げろ!」

――あとは上手く撃ち落とせるか…か。

迎撃弾が発射されるのを見届けると、メニコットも地下に逃れた。

双方のミサイルは、マラデ上空で衝突し爆発した。


「第一、第二防衛線が突破されました。非戦闘員は緊急退避。繰り返します。第一、第二防衛線が突破されました。非戦闘員は緊急退避」

マラデ内部で警報が鳴り響いていた。

騎士らは高層の建物に次々とロケット砲を撃ち込む。

破壊された建物は崩れ落ちていった。

メニコットは戦車の小窓から空を見上げた。

そこには艦隊が君臨していた。

『敵は小物よ。腕のある者から先に高度を下げて』

『了解。クレダント隊長』

ヴィリーノ・デ・クレダントがオーバーワールドから艦隊を率いてやってきた。


そしてセデル・ユスティーツァとメニコット・マキシマが激突する。

「覚悟!」

メニコットは剣を抜き、セデルに斬りかかる。

二人の刃が擦れる。

「お前を殺して、この戦いに勝利する!」

メニコットがセデルの腹を蹴る。

セデルが後ろに倒れる。

「オルディネイト騎士長がそう容易くやられてなるか!」

すぐさま起き上がり、メニコットに斬りかかる。

「俺はタルタニッドの最高傑作だ。舐めてんじゃねーぞ!」

「タルタニッド…!?」

メニコットの太刀筋を受け止めたものの、一瞬の気の緩みの隙に顔面を殴られる。

セデルは倒れた。立ち上がろうとするも、ふらついて倒れてしまう。

「メレッドの勝利だ」

メニコットが剣を振り上げたその瞬間、メレッドの戦車が爆発した。

『メニコット、すまないわね』

空を見上げると、飛行部隊より多くの船がそこにはあった。

「そんな」

メニコットは飛行部隊が撃沈されていく様子を目にした。

「メニコット!前を見ろ!」

北から、何かが向かってきていた。

「ハハハハハハハ、我が騎士達よ、この私に続け!敵を殲滅するぞ!」

「「「おおおおおおおおッッッ!!」」」

スピーダーに乗ったアレク王と騎士達が、メレッドの軍勢に突撃する。

「私の障壁となる忌まわしき者どもよ、我が剣の前に朽ち果てるがいい!」

アレク王は聖剣、森羅光封剣(オールハトゥーム)を抜いた。

「なんでこうなる…!俺は自由になりたいだけなのに!」

メニコットがアレク王目掛けて剣を振り上げて駆け出す。

剣先は腹から頭頂へと進み、メニコットを裂いた。

メニコットは崩れ落ちた。

「そ…そんな…俺は…自由に…なりたかった…だけなのに…」

メニコットは倒れた。

「セデル、友よ、立てるか?」

アレク王はセデルに手を差し伸べた。

セデルはその手をしっかりと掴み、起き上がった。

「皆の者聞くが良い!」

アレク王は剣を握った右手を空に突き上げた。

「遂に私は自らの手によって己の障壁を打破した!私こそがこの宇宙を統べる王、アレクだ!」

「「「おおおおおおおおッッッ!!!」」」

――――――――――――――――――――

その後、宇宙全域に散らばるメレッドの残党達は、宇宙警察によって一斉に検挙、逮捕された。

シュリンターによるガルディオ襲撃から、メレッドの結成、リベルタの建国、メレッドによるシェニー・アグリアの発生、そしてサントデラントでの決戦までを、僅かの間だが人はこう呼んだ。

宇宙全域での暴動と鎮圧の争い、宇宙大戦と。

――――――――――――――――――――

「どうなっている!?何故王のもとにガルディオの騎士が集まっているというのだ!」

「遂に我らに反旗を翻したということか」

「ご安心下さい皆様」

「何を言っているタルタニッド」

「既に新しい、いや、真の王がいらっしゃいます」

「ここにか?」

「ええ。お入り下さい」

扉が開き、デトルートが姿を現す。

その瞬間、タルタニッド以外の11人は体を刻まれて死んだ。

「今までご苦労であった、タルタニッド。よく私の命令に忠実に従ってくれた」

「お褒め預かり光栄でございます」

「だが、どこを探してもアカシックレコードは見つからなかった。タルタニッド。お前が提示した星々の中にな」

タルタニッドは這いつくばった。

「も、申し訳ございません。今後はそのような失態は犯さぬよう…」

「今後とな?何を言う、最後まで生かしてもらえたことに感謝するがいい」

タルタニッドは全身から血を噴き出して死んだ。

「長かった。戻ってくるのに、とてつもない時間を要した。だが私は戻ってきたのだ。今度こそ必ず、全てを奪ってやる」


【次回予告】

〈第陸章 森羅回帰篇〉

戦争は終わった。しかし宇宙に平和がもたらされることはなかった。

台頭する闇の力、無の境界線、自らの正義を貫くガルディオとオルディネイト、立ち上がる民衆、そして、ドラゴニュートたち。

やがて全ての点が線となり、一点へと回帰していく。

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