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スーサイドメーカーの節度ある晩餐  作者: 木村
第三話 シュークリームとストーカー
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警告と告白は似ている


 日曜日、コンビニの前で座って、もしかしたら来るかなと思っていたら、思った通りハイライトのおじさんがやってきた。彼はまた私の隣に座る。


「ひどい顔だな、お嬢さん。殴られたのか?」

「これは事故。単なる通り魔」

「その通り魔に襲われる理由になった男がいたんじゃないか?」


 おじさんはまるで確信しているかのような口ぶりだった。彼の顔を改めて見るが、全く覚えはない。


「あなたは誰?」

「……俺もきみのことは知らないよ、お嬢さん」

「そうね……あなたは白翔くんの知り合いね」


 おじさんは私の言葉に、煙を吐いた。


「俺はもう忠告はした」

「……私は忠告されたの?」

「ああ、きみにはちゃんと告げた。ここから先を、選ぶのはきみだ」

「……そう、わかった。おじさん、……私、煙草嫌いよ」

「そうか。それはすまなかった」


 喫煙所に置いてあるベンチに座っている私が悪いのにおじさんは煙草を消して「じゃあ、元気でな」と去っていった。当然のように、去っていった。私はその背中を見送りながら、白翔くんは本当に面倒くさそうだなあ、と思う。

 けれど、もう、あと五分もしたら白翔くんがここに来る。デートの時間だからだ。


「……私はもう忠告された……」


 わかっている。

 白翔くんが『やばい』ことはもうとっくにわかっている。『出会ったその瞬間』、わかっていた。でも、大事なのは、『そこ』から先の私たちが過ごしてしまった時間だ。

 深く、息を吐く。

 目を閉じて、空を見上げる。


「……久留木さん」


 時間通りに私を迎えに来た白翔くんは黒いモッズコートに黒のミリタリーブーツだったけれど、大判のチェック柄のマフラーを巻いていた。その明るい色は白翔くんの爽やかな笑顔に似合っている。


「可愛いじゃん」


 私がそのマフラーの先を引っ張ると「こんな色は似合いますか?」と白翔くんは嬉しそうに笑った。


「うん、似合うよ」

「よかった。久留木さんにそう言ってもらえてうれしいです」

「大袈裟だよ」

「あなたに言われるとなんでも嬉しい。なんでも叶えてあげたくなる。好きだから。……久留木さん、俺と付き合ってください」


 告白の言葉として必要なことだけ。儀礼的で、さっぱりとしていて、やらしい響きは少しもなく、もう返ってくる答えが分かっている人の言い方だった。


「こんな顔面腫れてる人によくそんなこと言えるね?」

「俺のための名誉の負傷でしょ?」

「……きみって子はへこたれないな」

「痛まないので、俺は」


 彼は顔を真っ赤にして私の手を掴んだりする。そんなところだけピュアで、困る。こっちの頬も赤くなっている気がして、本当に困る。


「久留木さん」

「待ってよ、話が速すぎる……デートの後じゃない、告白って?」

「俺とは付き合えませんか? どうして無理ですか? とりあえず付き合うだけでも駄目ですか?」

「……駄目ってことはないんだけど、でも……」

「なら、今から久留木さんは俺の彼女でいいですか?」

「……きみはそれでいいの? 私の彼氏でいいの? とりあえずでも、いいの?」

「はい」


 彼は心底嬉しそうに歯を見せて笑った。だからもう、私も頷くしか道がなかった。


第四話 ちらし寿司と心中へ続く

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