20/47
母さんモーニング
「朝だよ、舞ちゃん」
優しく揺さぶり起こされて、目を開く。眠りのない体は疲労していたが、この穏やかな声に起こされては起きないわけにはいかない。
『母』はとても優しく微笑んでいる。
「朝ごはん作ったから食べよう、舞ちゃん」
「うん」
「疲れているの?」
「……少しね」
私は目を覚まし、彼女の微笑みに微笑みを返す。
「朝ごはん、なに?」
「ごはんと味噌汁よ。じゃがいもの味噌汁」
「……そっか」
「嫌だった?」
「ううん、……大好き」
パンケーキを食べたいと少し思い、でもそんなものを朝からねだれるほど子どもではなかった。だから母と、母が作ってくれた朝食を食べる。それはそれなりに美味しいものだった。
「冷蔵庫にシュークリームがあるから食べてね」
「ありがとう、舞ちゃん。出かけるの?」
「うん、……帰りは待たなくていいよ」
「はあい、またね、舞ちゃん」
「……うん、またね、母さん」
家を出ると、強い風が全身を包む。
春が近づいてきているのが分かる、気味の悪い、生ぬるい風だった。