透明蝶
ひらひら…
目の前から何かが通りすぎた
けど、そこには何もない
何も、いない
けど、眼を凝らしてみると
何かがひらひら
透明なうすっぺらい何かが、ふわふわ
それは、透明蝶
全身が透明で、目を凝らさないと見えない
それくらい、澄んだ透明で
その透明蝶が、イロトリドリの花畑で
ひらひらふわふわ
すると、透明蝶が赤いチューリップの蜜を吸うと
だんだん、透明蝶が赤く染まっていく
他の透明蝶たちも、花の蜜を吸うと
その花の色に染まっていく
それはまるで、蝶の形をしたガラス細工に
絵の具を溶かした水を注いだような感じとでもいうか
ひらひら…
透明だった透明蝶たちは
イロトリドリの色に体を染め
イロトリドリの花畑を舞う
何とも幻想的で不思議な光景だ…