表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/27

最後の謎

安価、というものを説明された。

今現在の時間は、夜九時。

オル達の視線が、僕に注がれている。

ちらりと、その目を確認する。

アーサーやジェニーのように、淀んでいるようには見えない。

とても、理性的に見えた。


「謎についての答えは出たか??」


オルが聞いてきた。

彼らは、僕が第三の謎について考察厨さん達に聞いていると思っている。

実際は、違う。

僕は、これまでのことを考察厨さん達に報告し、今後についてどうするべきか相談していた。

謎については、まだ書き込んでいない。


「いいえ、返事がありません。

もしかしたら皆さん、もう寝たのかも」


こちらの基準で言えば、真っ当な一般人はそろそろ眠り始める時間だ。

オル達は、こちらと向こうの違いを知らない。

だから、こう言っても信じてもらえた。

考察厨さん達が安価を始めた。

決まるまで時間があったので、僕はオル達に聞いてみた。


「ところで、皆さんはなんで聖杯探しを始めたんですか?」


僕の質問に、オル、ウェイチ、ミカリがきょとんとする。


「やっぱり、王様になりたいからですか??」


ウェイチとミカリが、オルを見た。

オルが難しそうな顔で僕を見ている。


「なんで、聖杯探しのルールが変更されたか知ってるか?」


オルがそう口を開いた。


「アンジュに聞きました」


「なら、話が早い。

この王都だとそのルールが適用されて被害者が減ったらしいが、魔族の国だと、この千年それで血みどろの歴史が繰り返されてきた。

少しでも聖杯に近づいたと思われる者、とくに庶民は、捕まって拷問を受けた。

聖杯や謎に関する答えを吐かせる為だ。

魔族の王族も必死なんだよ。

中には、有力な情報を得た者もいたと言われている。

誰よりも早く、聖杯を手に入れて世界を支配する力を手に入れたい、と願ってるんだろうな。

そうすれば、過去の汚名が晴らせる上、勇者に対して復讐できるわけだろ」


「そういう考え方もできますね」


「その被害者の中に、俺の両親がいた。

両親も、お前と同じで勇者オタクだった。

それが災いして、ある日連れていかれた。

そして、グチャグチャの肉の塊になって帰ってきた」


僕は驚いた。

話すオルの顔が、迷子の子供が、必死に泣くのを我慢しているような表情だったからだ。


「あの日に誓ったよ、絶対聖杯を見つけて壊してやるってな。

聖杯さえなければ、父さんも母さんも死ぬことは無かったはずだから。

俺は両親を埋葬したあと、国を出た」


偶然とはいえ、聖杯を壊す話題が出るとは驚いた。

話しつつ、オルはウェイチとミカリを見た。


「この二人とは、旅の途中で知り合った」


そこから先は、ウェイチが話してくれた。


「モンスター退治のクエストの最中だったかな。

その頃は、ミカリと組んで色々仕事を受けてたんだ。

ピンチになってた所を、オルに助けられた。

俺もミカリも聖杯に興味はあったが、真剣に探そうとはしてなかった。

俺とミカリが、オルに協力してるのは、まあ、その時の恩を返すためだ。

一人より三人で挑んだ方が効率いいだろ?

だから、仮に俺とミカリのどっちかが聖杯を手に入れたら、オルの願いを叶えるつもりだ」


ミカリは軽く頷いてみせた。

納得済みのようだ。

嘘には、見えない。


「……いいんですか?

それ、僕に聞かせて」


「だってお前、聖杯がほしいってわけじゃないんだろ??」


「まぁ、そうですけど」


「それなら、聖杯壊してくれって頼みやすいかなって考えたんだ」


「そもそも壊せるんですか、聖杯って」


「伝説だと、勇者は聖杯によって万能の力を手に入れたとされている。

なら、万能の力を手に入れた後に聖杯を壊せばいいだろ」


なるほど。

そういう手もあるか。

そうこうしているうちに、安価が終わった。


安価の内容は、三個目の謎が解けるまでオル達を利用し、答えがわかった時点で、僕がここから逃げ出し聖杯を手に入れようというものだった。


そして、壊し方の発想がオルと同じで、笑いそうになってしまった。

僕は逃げ出す必要が無くなったことを書き込んだ。

その理由も忘れず書き込む。

オル達が嘘をついている可能性もある、という指摘をされた。

たしかに、そうだろう。

オル達が僕に嘘をついている可能性は否定しきれない。

けれど、二個目の鍵を手に入れる時、あの空間から弾き飛ばされる際に、オル達は僕に手を伸ばしてくれた。

必死な形相だった。

聖杯に繋がる手がかりを、失いたくなかったのもあるだろう。

でも、なんというのだろう。

アーサーやジェニー、そしてアンジュとも違った表情だった。

そう、どちらかと言えば、エマさんや館長さん、フィンさんやカーリーさんが僕に向けてくれていた表情に近かった。

だから、きっとオル達は嘘をついていないと思う。


「……わかりました。

そういう話なら、こちらとしても丁度いいです」


僕の言葉の意味を計りかねて、オル達が怪訝な顔をした。


「実は」


僕は二個目の謎の時に見たものを話した。

それを聞いて、三人は驚いた。

奇しくも、目的が同じになったのだ。


僕は最後の謎が書かれた紙に視線を落とした。


【天に近く、不死の薬を燃やした山に登れば、道が開かれる。

そして、最後の試練が君を待つだろう】


前者が謎で、後者が参加者に対するメッセージだろう。

安価が終わって、一息ついてる考察厨さん達へ、僕はこの謎を提示した。

返ってきた答えは、考察厨さん達の世界にある山の名前だった。


富士山(MT,フジ)】という名前らしい。


この名前と同じ名前の山はあるか、と聞かれたが、僕には聞き覚えが無かった。

頃合をみはからって、僕はオル達に考察厨さん達から返事があった事を伝えた。

地図を広げて確認してみたが、やはりわからなかった。

今日はもう時間も遅いということで、謎解きは明日に持ち越すことになった。

しかし、ひとつだけ懸念があったようだ。


「それはそうと、手帳が大神殿側に渡ったのはマズイよな」


ウェイチがそんな事を言ってきた。

僕が、謎解きのメモや考えをまとめる為、散文を書き散らかしていた手帳。

あの手帳を取り戻せなかったことを言っているようだった。


「あー、大丈夫ですよ」


僕の言葉に、オルが聞いてくる。


「いや、そこまで大丈夫でもないだろ。

大神殿に渡ったってことは、奴らも謎を解いて追いついてくるだろ。

たしかに、三つ目の謎に関しては何も書いちゃいないけどな」


「あ、いや、そうでなくて」


僕は、種明かしした。

ここまで来たら、この人達を信じて見ようと思ったのだ。

懐から全く同じ、でも勇者の印が入っていない手帳を取りだして見せた。


「いやぁ、盗られたのが書きミスだらけの手帳で良かったですよ」


僕のセリフに、三人は盛大に笑ったのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 富士山の別名って40くらいあるそうですね 竹取り山とか
[一言] /^o^\フッジッサーン フッジッサーン \\(^o^) タカイゾ (^o^)// タカイゾ /^o^\フッジッサーン
[気になる点] またかぐや姫ネタか 富士山となると木花咲耶姫ネタがでてくるかな? [一言] 聖杯の力がものすごく胡散臭い
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ