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主人公は助けを求める 2

「おい、一体何があった?」


 マリエルの乗った馬車を追いかけていたミアは、魔物討伐から戻ってきた炎を司るフロード騎士団長ナタンと出会う。


「ナタン! お願い、マリエルを助けて!!」


 ナタンは泣きながら必死に助けを乞う初対面のミアに驚くも、彼のアースグレーの瞳にすっと火が灯った。


「馬車馬の色はわかるか?」


「黒……だと」


「街中か? それとも外か?」


「外に向かって……」


「わかった。 フォルテ、黒馬の馬車を探して足止めしてくれ」


 ナタンが呼んだのは彼の使い魔の名。

 発火音と共に頭上に現れた青白い炎は、獅子へと姿を変えるとナタンの指差す方向へ凄まじい速さで向かっていった。

 炎とは思えない程に滑らかに空へ溶け込む姿がとても美しく、その光景にミアは思わず息を呑んだ。

 そして兵士から馬の手綱を預かったナタンは、泣いていたミアを抱き上げるとそのまま鞍に乗せ、自身も跨り馬を走らせた。


「しっかり掴まってろ」


「はっ、はいぃ!」


 まさか自分まで現場に向かうとは思っておらず、乗馬経験の無いミアは走馬の躍動と風を切る感覚に慄きながら、振り落とされないよう必死にナタンの体にしがみついた。

 そうして森に向かい暫く走ると、前方でナタンの使い魔に道を阻まれ停車している馬車が見えた。

 その荷台の中にはしゃくり上げて泣いているマリエルの姿もある。


「マリエル!!」


 ミアの声に気づいたマリエルは両手を伸ばしてミアの胸に飛び込んだ。


「ミア!! 怖かったよぉ!!」


 腕の中で泣きじゃくるマリエルをぎゅっと抱きしめると、ミアも涙を滲ませた。


「ナタン、助けてくれて本当にありがとう」


「いやいや無事で何よりだ。 で、あんたの名前ミアって言うのか?」


「え?」


「レオから聞いたんだが、まさかあんたがあの時のウ……」


「シーー!! それ以上は喋っちゃダメ!」


 ミアはその続きを遮るように、慌ててナタンの口を手で抑え自分の口元にも人差し指を当てる。

 涙で赤く潤んだ瞳で見上げてくるミアを見たナタンは、思わず顔を火照らせ息を飲み込んだ。


「わ、悪い……。 でも、本当なのか?」


 手を降ろすと眉を下げてミアは小さく頷く。

 するとナタンは視線を横へ逸らしゴホンと咳払いをすると、そのまま無言で二人を馬に乗せて街へと向かうのだった。

 街の入り口にはナタンと同じ色の装いの男性が三人を出迎えた。


「団長、ご無事でしたか」


「あぁ、このとおりだ」


「それは良かったです。 でも、ご令嬢まで連れて行くのは如何かと」 


 どうやらその者は副団長らしく、ミア達を馬から降ろすナタンに辛辣な言葉を投げかける。

 彼の一言ではっと我に返ったナタンも、手で顔を覆うとミアに頭を下げた。


「……すまない。 妹君もあんたの顔を見れば安心かと思って」


「いえ、お陰ですぐにマリエルと会えたんで気にしないで下さい」


「まさか団長の彼女さんですか?」


 二人の雰囲気とやり取りに何かを感じたのか、側で見ていた副団長は無表情のままストレートに訊く。


「全然違います! 以前少しお世話になった事があっただけです!」


「……それは失礼しました。 何せうちの団長は戦と製造のセンスは抜群なのですが、その他になるとポンコツなのでその際はどうぞ……」


「用も済んだしさっさと帰るぞ!」


 この場から早く離れようと副団長の襟をぐいと掴み、そのまま引き摺るように歩いていく。

 するとミアの隣でマリエルが声をかけた。

 

「ナタン様! 今度うちにご飯食べに来てね!」


 その声にちらりと振り向いたナタンは、小さく手を上げ返事を返す。

 その後ろ姿を見つめるマリエルの目にはキラキラと星が輝き、徐々に頬も赤く染めていく。


「ナタン様……カッコいいねぇ」


「うん? そうだね」


 マリエルの反応が気になり話を聞くと、どうやら迎えにきた姿が王子様に見えたらしく、マリエルはナタンに恋心を抱いたようなのだ。


(確かにあの乗馬姿は惚れてしまうかも……)


 マリエルがいじらしくて堪らなくなり、ミアはギュッと抱き締めこの小さな恋の行方を応援しようと誓った。


(私もジルに会いたいな……)


 マリエルの恋心にあてられて、ミアも自身の想い人に想いを馳せる。

 けれど相手は騎士団長。

 しかも片思いの身。

 いつ会えるのかも解らない。

 

(そうだ! それなら……)


 何かを思いついたミアは早速リディ達に相談しようとマリエルを連れて帰路を急いた。






 

 


 


 

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