最南端へ
今回も召喚まで10日間あったため、ボブは中学校へ通いながらジャンク屋シモン店長のバイト手伝いをしていた。今日は冷蔵庫の回収と修理をしている。
シモン店長が修理を続けながら、ボブに声をかけた。
「おい。そろそろ中学校へ行く時間だぞ。残りの作業はわしがやっておくから、さっさと手を洗って行ってこい」
ボブが店内の壁掛け時計を見上げた。午後5時だ。
「ああ、そうですね。それじゃあ、今日はこれでバイト仕事を終えます」
ボブが通う中学校では地元教会と市の事業との共同で、貧困層向けの無料食事を定期的に校庭で提供している。ただ、パプアニューギニアは熱帯雨林気候なのでそれほど深刻ではないが。そのため、どちらかといえば衣料品と医薬品を目当てにして来る人たちが多いようだ。
ボブが中学校の校庭へ到着すると、すでに提供が始まっていた。参加している中学生は50人ほどで、提供を受けている人たちは20人くらいであった。チャックとブレンダがボブを見かけて手を振っている。
「おーい、ボブ。遅いぞ。さっさと手伝え」
ボブが短髪パーマをかいて手を振り返す。
「すまん、すまん。ちょっと手が汚れているから、衣料品の提供係を手伝うよ」
召喚の日になった。準備を整えたボブがポルクに告げる。今回はオーストラリア大陸とタスマニア島との間にあるワラガル村なので、日差しは強くない。そのため、迷彩柄のヘルメットは腰ポーチに入れている。さらに厚手の長袖シャツを1枚突っ込んだ。
「お待たせ、ポルク。召喚に応じてくれ」
「了解だ」
しかし召喚された先は別の村だった。出迎えたフタンが説明する。彼女も法衣の上に厚手のマントを着けている。白を基調としているせいか、かなり格好いい。足元は作業靴だが。
「おはよう、ボブさん、ポルクさん。ここは先日のワラガル村から南へ200キロメートルほど内陸にあるモイナ村だ。麻ミュレに乗ると5時間以上かかってしまうのでな」
ボブが挨拶を返して、村内を見回した。ここも開拓村のようで、農家数は十数軒ほどしかない。石造りなのだが人手が足りなかったのだろうか、石積みが堅牢ではない。石と石の隙間を塞ぐために土が詰められている。
屋根は無く、土を混ぜたコンクリートを若干の傾斜をつけて屋上にしている。雨量が少ないので、このような簡易なコンクリートでも実用に耐えるのだろう。屋上には水タンクがあり、洗濯物が干されていた。地上近くでは砂塵を被ってしまうためだろう。
村は粗末な石垣と空堀とで囲まれていて、その外には一面の小麦と大麦の大草原が地平線まで広がっていた。やはり農作業は土製ゴーレムに任せているようだ。
「農地は立派ですが、村は資材不足の様子ですね。テレポート魔術ゲート路線が早く開通すると良いのですが」
フタンが近くの空き地に設けているテレポート魔術陣を指さした。
「麻ミュレと麻人形に命じて、この10日間にワラガル村からここモイナ村までテレポート魔術陣を通しておいた。半年ほどは魔力が続くだろう」
ボブが感心する。
「さすがフタンさんだ」
得意顔になったフタンが、村長の家を指さした。
「それでは村長に会っておこう」
モイナ村の村長がボブとフタンを歓迎してくれた。ここでもワインかウィスキーを勧められたが断るフタンである。少し残念がった村長がブドウジュースを代わりに提供して、笑顔を浮かべた。
「こんな寒村まで、はるばるようこそ。ワラガル村との行き来ができるようになりましたので、大助かりです。村民を代表して感謝申し上げます」
この開拓村では小麦と大麦の栽培を中心にしつつ、ブドウなどの温帯果樹も栽培しているそうだ。他には羊を放牧していて羊毛の生産も目指していると言う。
「サフール王国はほぼ全土が熱帯気候ですから、ここのような寒冷な場所は珍しいんですよ。小惑星落下で寒冷化が進むという話ですが、その時はその時考えます」
ボブが自身の世界での気候を参考にしながら提案した。
「冬季に凍土状態とならなければ大丈夫だと思います。ですが、ブドウは白ワイン用で寒さに強い品種にした方が安全でしょうね」
実際は、短期間の凍土状態であれば小麦と大麦の栽培が可能だ。
フタンが本題に移った。
「それで、この近郊には魔獣か盗賊団が潜んでいるか? 100人までの盗賊であれば討伐できるぞ」
村長が大真面目な表情になって、戸棚から少し古びた地図を取り出した。それを作業机の上に広げ、南の山間地を指さす。
「実は……村から20キロメートルほど南にある、この山間地に盗賊団が巣食いました。1ヶ月くらい前からですね。突然現れて困っています。こんな寒村を襲っても儲からないと思うのですが」
ボブが軽く腕組みをした。
「普通はそうですね。奪った食糧を売りさばく手段が無い。ですが、盗賊団の中には王国を建てると息巻く連中も居ます。ここの盗賊団も同類なのかも」
フタンも同じように腕組みをしていたが、ボブの意見に同意した。
「そう考えるのが妥当だな。ここの広大な食糧を支配できれば、小さな国くらいであれば運営が可能だろう。盗賊団の段階で潰しておくのが最善だな」
村長が目を輝かせた。
「討伐してもらえると、安心できます。村民の誘拐は起きていませんが、今後は分かりません」
ボブが一応聞いてみた。
「村長さん。魔獣は居ないのですか? 山間地を見ると、かなり広大ですよ」
村長が軽く肩をすくめた。
「盗賊団に比べると大した被害は出ていません。山間地のどこに巣があるのかも、よく分かっていませんし」
ここで村長が何か思い出したようだ。地図の一角を指さした。
「ああ、そういえば。山間地が海と接するこの辺りに、風変りなアンデッドが隠棲しているという噂がありますね。特に悪さをするでもないので、放置しているんですが。気が向いたら討伐してください」
思い当たるボブである。
(あー……夢魔アーサリさんが言っていたアンデッドかな? 無害なんだ)
しかし、隣のフタンが殺意をにじみ出しているので、口には出さなかった。
村長から1日分の食糧と水を提供してもらい、早速麻ミュレに乗って盗賊団が潜むという山間地へ向かったボブとフタンであった。今は2人ともに迷彩柄のヘルメットを被っている。
このモイナ村は山間地から流れる川を生活用水に使用しているため、10キロメートルも走ると山の中へ入った。ポルクがすぐに警告を発する。
「盗賊団のアジトらしき建物を10キロメートル先に発見した。新築だな。金持ちのようだ。物理障壁と迷彩を施すぞ」
山の中に入った途端に気温がぐっと下がり、風が冷たく感じる。それに耐えながらボブとフタンが5キロまで接近し、その後は麻ミュレから降りて徒歩で進んだ。今回はフタンの指示で麻ミュレをそれぞれの腰ポーチに収納している。
「山間地では道に迷いやすい。麻ミュレを持ち運んだ方が良いだろう」
「了解です。フタンさん」
無事に残り15メートルまで接近すると、盗賊団のアジトが落葉樹林の中から見えてきた。ボブが小首をかしげる。
「新築したばかりですね。鉄筋コンクリート造りだ。お金持ちなら、盗賊団なんかしないで商売でもすれば良いのに」
ポルクが告げた。
「準備完了だ」
フタンからの指示を受けたボブがポルクに命じる。
「よし。それじゃあ、派手に壊してくれ、ポルクよ」
盗賊団のアジトが「ふわり」と地上10メートルまで浮き上がり、そして自由落下した。「ドカン!」と轟音が山中に鳴り響き、地響きでボブたちの足元が揺れる。
ポルクがすぐに被害状況を調べて報告した。
「うむ。大破だな。もう居住には適さぬだろう」
崩壊していく盗賊団アジトから警報音が鳴り響いた。同時にボブとフタンの迷彩処理が強制解除された。お互いの姿が見えて、驚くボブとフタン。ポルクがさらに警告した。
「物理障壁も強制解除された。敵に魔術師が居るぞ。しかも、共通魔術よりも高度な魔術を行使している」
フタンが混乱気味になっている。
「は? こんな辺境の盗賊団に魔術師だと?」
ボブが麻ミュレを腰ポーチから取り出して、フタンに叫んだ。
「とにかく、今は逃げましょう!」
しかし、次の瞬間。崩壊した盗賊団アジトの中から電撃が放たれた。フタンが「ぐうっ」と呻いて昏倒する。ボブがすぐさまフタンを担いで麻ミュレに乗り、全速力で離脱した。ポルクに聞く。
「どこへ逃げた方が良いんだ? ポルク」
ポルクが即答した。
「敵魔術師は電撃を使う。ゆえに山奥へ向かうのが適切だろう。雨雲に覆われている谷間へ行け」
「分かった!」
この辺りには落葉樹林の森が茂っていたため、視界が制限されていたのも幸運だったといえるだろう。しかし、体温を追跡して襲い掛かる銃弾は、木々の間をすり抜けて飛んできた。ポルクによる力場術で銃弾の軌道を強制的に曲げて、ボブとフタンへの直撃だけは避けているのだが……麻ミュレにその分だけ命中しているようだ。
ボブの両脚にも数発の銃弾が命中し、激痛と出血に耐える。銃弾はすぐにポルクが力場術を使って脚から取り出し、傷も法術の共通魔術を使って応急手当をしている。
気絶したままのフタンは、ボブが後ろから片手で抱きしめて落とさないようにしている。予想以上に体重が軽いので内心で驚いているボブだったりする。
(でもまあ身長と体格を考えると、こんなものか。呼吸と脈は安定してるし、多分大丈夫だな。しかし、両脚の銃創がめっちゃ痛いんですけど!)
谷間に突入すると、周囲が霧に包まれて雨が降ってきた。これで電撃魔術を食らう心配は薄れたが、相変わらず銃弾が麻ミュレに命中していく。ボブがまた脚に銃創をつくり、悲鳴を上げながらポルクに聞いた。
「うぎゃっ。くっそ痛えええっ。ポルク、盗賊団から逃れる策ってあるか? このままじゃ、痛みで俺も気絶する」
ポルクが数秒間ほど調べてから答えた。
「右の谷間へ進め。最近、崖崩れが起きている谷だ。転がっている大岩を重力操作魔術で動かしてみよう」
「巻き添えは勘弁してくれよ。それじゃあ右へ行く!」
その谷は泥だらけだった。多少、麻ミュレの逃げ足が遅くなるが元々麻製で軽いため、大した減速にならずに済んでいる。一方の盗賊団は金属製の乗り物に乗っているようだった。飛行ができない仕様なので、泥に足を取られて急速に速度が落ちていく。
その事をポルクから聞いたボブがジト目になっている。
「盗賊団の方が高価な装備って事かよ。なんだそりゃ」
ポルクが淡々と告げた。
「大岩が転がっている区画に到着した。始めるぞ、ボブ」
「おう! 派手にやってくれ」
麻ミュレが通過していくたびに、周囲に転がっている大岩が浮かび上がっていく。それらが崖に衝突して砕けていった。轟音が鳴り響き、土砂崩れの後でまだ地盤が緩んだままの谷が崩壊していく。
後方の盗賊団が悲鳴と怒号を上げて大混乱に陥っていく中、後ろを振り返らずに真っすぐ走り駆けていくボブである。
すぐにポルクが報告した。
「成功だな。盗賊団は引き返していった。迂回して、モイナ村へ戻るかね?」
ボブが少し考えてから提案した。
「多分、待ち伏せされるだろうな。土地勘は盗賊団の方が詳しい。このまま進んで、風変りなアンデッドに会いに行こう。話が通じれば、かくまってくれるかも知れない」
ポルクが同意した。
「ふむ、なるほどな。アンデッドらしき強大な魔力はすでに察知している。案内しよう」
その場所は20キロメートルほど麻ミュレで駆けた海岸沿いの洞窟だった。ボブがフタンを背負って洞窟内へ入っていく。海からの寒風が厳しいのか、持ってきていた厚手のシャツを着ていてもガタガタ震えているようだが。両脚も傷だらけだが、これは根性で痛みをこらえている様子だ。出血は応急措置が効いたのか止まっている。
「あのー、ここにアンデッドは居ますか? 盗賊団に追われて困っています。どうか助けてください」
しかし返事は無かった。
ボブがフタンを洞窟内にそっと横たえて、迷彩柄のヘルメット越しに頭をかいた。
「あらら。ここには居ないのか?」
ポルクが素っ気なく答えた。
「居る。単に、会いたくないだけだろう。それよりもだな……」
洞窟の入り口を囲むように数十人の盗賊が現れた。首領がニヤニヤしながらボブに告げる。杖を持っていて、それをボブに向けた。
「手こずらせやがって、このガキどもが。知っている情報を全て読み取らせてもらうぞ。その後は、そこの海へポイ捨てだな、ははは」
ボブが左人差し指を首領に向けた。距離は15メートル以内だ。
「ポルク」
しかし、ポルクが残念なお知らせをした。
「重力操作魔術を含む全ての攻撃魔術が封じられている。打つ手なしだ」
「マジか」
次の瞬間、ボブの全身を激しい衝撃が駆け抜け、意識を失った。
「ん……」
ボブの意識が戻った。洞窟の中だが寒さを感じない。起き上がると両脚の傷もズボンごと治っていた。フタンの安堵した顔が見える。彼女もケガが治っている。
「良かった……まだ、どこか痛い場所はあるか? ボブ」
ボブがその場でジャンプしてから笑顔で答えた。
「完全回復してます。治してくださって、ありがとうございました。フタンさんも大丈夫ですか?」
フタンが笑顔で答える。
「ああ、私も回復を果たしている」
ボブが「あ」と思い出した。
「そうだ。盗賊団はどうなりましたか? 洞窟の外で囲まれたんですよ。フタンさんがやっつけたんですか?」
フタンが視線を逸らした。
「だと良かったのだがな……ここのアンデッドに助けてもらった。紹介しよう。上位アンデッドのアイトンさんだ」
フタンが手を差し伸べた洞窟の奥で、暗闇に溶け込んでいた陰が実体化した。
「別に紹介などしなくても構わぬのだがな……ここで隠棲しているアイトンだ。我の棲家で大騒動を起こしていたので、鎮めただけだ」
ボブがアイトンに命を助けてくれた礼を述べてから、小首をかしげた。
「上位のアンデッドってリッチやバンパイアなどが思い浮かぶんですが、そのどれとも姿が異なるんですね。俺が触れると危険ですか?」
アイトンが口調を和らげた。
「我は骨や肉体といった物質に頼っておらぬ。幽霊のようなものだな。君たちは我に触れる事はできぬので、気にする事はない」
実際にボブがアイトンに手を伸ばしてみたが、何の手応えも感じなかった。
さて、気になる盗賊団のその後だが、アイトンが一撃で魅了して無力化したそうだ。その後、気絶から回復したフタンが真白剣で矯正して自白させ、監禁用の収納ポーチに入れている。ただ、この洞窟から最寄りのモイナ村まではテレポート魔術陣が通っていないため、アイトンによる転送魔術で首都の真教団まで送り届けている。
フタンが深刻な表情でボブに話した。
「盗賊団はニライ王国から支援を受けていた。首領はニライ王国軍の所属だ。隠密裏にこの小麦と大麦栽培地の支配を画策していたようだな。少々、大事になるかも知れない。また10日間後の召喚になると考えておいてくれ」
ボブが了解した。
「領土侵犯ですもんね。当然の対応だと思います」
次にアイトンに状況を説明するフタンである。アイトンが驚きつつも理解した。
「ほう……小惑星落下かね。寒冷化の恐れがあるので、急激に農地開拓を始めていたのか。なるほどな」
アイトンもニライ王国出身だそうだ。
「北部の氷床地域で暮らしていたのだが、バンパイアどもが徒党を組んで暴れ始めてな。うるさくなったので、ここへ来たのだよ」
フタンがアイトンに聞いた。
「私たちの命を救ってくれた礼をしたい。何か仕事をしよう。命じてくれ」
アイトンが少し思案してから答えた。
「そうだな……では、海岸の窪みにあるペンギン型の魔獣がその骨を山積みしている場所がある。連中の墓場だな。そこの骨を数トンほど、この洞窟内に運び入れてくれ」
骨には死霊術の魔力が込められているため、洞窟内の居心地が良くなるらしい。
フタンが冷や汗をかいているが、両目を閉じて了解した。
「仕方ないな。分かった」
ボブがフタンに心配そうな表情を向ける。
「都合が悪ければ、俺がやりますよ」
フタンが固い笑みを浮かべた。
「いや、大丈夫だ。アンデッド相手でも義理は通さないといけないからな」
かくして、骨運び作業が始まったのであった。ポルクがボブとフタンに物理障壁をかけているため、死臭は付いてないのが幸いだろう。
ペンギン型の魔獣群から墓泥棒とみなされて攻撃を受けたのであったが、ポルクによる重力操作魔術で群れごと海上へ飛ばしている。
しばらくして作業が終わり、無事に数トンの骨を洞窟内に安置した。汗を拭いているボブとフタンに、アントンが気楽な口調で声を掛けた。
「おう。ご苦労。これだけあれば充分だ」
ボブがアントンに話す。
「ペンギンはここよりも南極大陸の方が多いと思います。あの大陸は氷で覆われていますので、生き物が少ないんですよ。アンデッドのアントンさんには居心地が良い場所かも」
アントンが興味津々の口調になった。表情が見えないので推測するしかないが。
「ほう。そんな大陸がこの南にあるのかね。良い情報だな。機会があれば一度訪問してみよう」
次にポルクがアイトンに質問した。
「我は元魔術師のポルクだ。我の故郷は地下600キロメートルにあるのだが、現状では戻り方が分からぬ。何か良い知恵はあるかね? 一般的は土精霊の力を借りるべきなのだが、下手すると精霊化して土になってしまう恐れがあるのだ」
アイトンが少し思案して答える。
「ふむ……精霊化すると元には戻れぬな。意識を生霊化すればどうかね? 死霊術なので法術師にはキツイだろうがな」
フタンが悩んでから真っすぐな視線をアントンに向けた。
「小惑星落下を阻止する方法が見つかるかも知れない。耐えてみせよう」
ボブも申し出た。
「俺もやりますよ。地下旅行なんで滅多にできませんし」
アントンがうなずいた。
「そうか。では、少し待て。術式を組んでみよう」
と言ったが、ものの1分間ほどで魔術が完成した。小さな水晶玉をボブに渡す。空中浮遊を使った受け渡しだ。
「まあ、こんなものだろう。起動方法はポルク氏に伝えてある。君たちの身体から精神が抜けだして、疑似的な生霊となる死霊術だ。活動限界は24時間以内にしておいた。それを過ぎると強制的に体へ意識が戻る」
ポルクが礼を述べた。かなり嬉しそうだ。
「感謝する、アントンさん」
アントンが少し口調を和らげた。
「その水晶玉には記録とわしへの送信機能が付属している。困った事が起きたら、わしに相談するが良かろう。君たちの今後の活躍を期待しているぞ」
こうして今回の召喚が終わり、ボブが自身の世界へ戻ったのであった。部屋の中で迷彩柄のヘルメットを外し、銃痕をいくつか発見する。
「おお……ヘルメットを被っていて正解だったな。さて、また10日間の間が空くのか。勉強頑張るかな」