3
短め
「魔力は成長と共に増加する傾向がある。勿論そこには個人差があって種族差も存在する。」
ミリーが難しげな顔で私を見てくる。
「前例がないから確かな事は言えないし、幸せな貴方達夫婦には水を差すようで申し訳ないけど」
いつの間にか炎龍の鱗亭に尋ねてきた冒険者達は静まり返っていて
「はっきり言ってこの子。アリスは異常よ」
静寂が支配する宿。私も思わずミリーの説明に唖然としていた。
私は俺の時
「魔法が使いたい」と神に言った
魔法に必要なのは魔力だとは思っていた。
神と人の物差しは違う
「魔法を幾ら使っても問題無い魔力」
は魔法を使いたいという願いとセットなのかもしれない。多くを語らず必要な事のみのやり取りをした結果の弊害か
「い、1ヵ月何も無かったんだろ?だったら」
1人の冒険者がミリーに尋ねる
「そう、問題はそこなの」
ミリーは私に近づいてきて頭を撫でつつ母クレアに質問する
「1ヵ月。何も無かったのよね?」
「え、えぇ。健康そのもので食欲だってあるし、少し赤ちゃんにしては静かな子だけど」
「…魔力が多いと、何が問題になるんだ?」
フィルも会話に加わり神妙な表情でクレアの肩を抱く
「問題…ないんでしょうね。こうして見ている限り、魔力が多いこと以外可愛い赤ちゃんだし」
ミリーは少し肩の力を抜きながら
「まぁ、考えようだわ。生後1ヵ月にして将来有望な魔術師、女神様に愛された赤ちゃん、御先祖様の生まれ変わり。色々よ」
「じゃ、じゃあ」
「おめでとう、貴方達の赤ちゃんは大きな祝福を得るでしょう」
歓声が上がった。水を打ったような静けさから一変、両親も喜んでいた。
私には訳が分からなかった。
え?問題ないの?あの神何してるか分かんないよ!?もっと、ちゃんと調べてぇ!
「ンギャーッ!!」
「あらあら、ごめんね?ビックリしたね〜」
母があやしてくれるが、それどころじゃない。生後1ヵ月で体に爆弾をつけられている気分だった。
神にいじられて女にまでされたんだ、他に何処がいじられているか気が気じゃないし、体が赤ちゃんだからだらろうか。泣き止まないし、精神も吊られて不安定になってきた。
「クレア。部屋、空いてるわよね?」
「え?う、うん。2階の角部屋なら空いてるわ」
「大丈夫だと言っても、心配だし。私も今日からここに住むわ。つきっきりとはいかないけど、何か有れば直ぐに対処するし」
ミ、ミリーさん!!その言葉に感動して更に泣いてしまう。
今日の炎龍の鱗亭では野郎共は笑い酒を飲み交わし、女性達は愚図る私を囲むのだった。