12/27 異世界?受験があるので無理です。
おい、up主、地の文がクソすぎんだよ。
受験生の皆さん。こんなのを見ないで勉強してください。
受験生ではない皆さん。ブラウザバックしてください。
12/27
「あなたは神々によって選ばれました‼︎
あなたは異世界に転移してください‼︎」
おい、受験勉強でわからないところを調べてたらおかしな広告が出てきたんだが。
たしかにベッドをグルグル転がるだけの広告や、女がいきなりスマホを持って叫ぶ広告など個性的な広告はたくさんある。
しかし、このような黒の地に白の文字というドッキリやACでしか使われないような方法で、剣と魔法のファンタジー世界に誘うという空前絶後の広告は見た事がない。
「ちょっとあなた!私の話聞いてないでしょ!」
こんなにもうるさい広告だとクレームを入れられるかもな、と思いながらもこの広告に興味が湧いたので、もう少し注視しようとしたらそれはもっと激しい主張をしてくる。
「だーかーら、あなたは異世界に転移するって言ってんのよ、朝湯 流村!」
「何でスマホが俺の名前を喋るんだよ⁉︎」
驚きのあまりスマホに向かって叫んでしまったが、無理もないだろう。
スマホが自分の名前を語り出すなど芸能人でもない限りあるはずのない事であるのだから。
「もお、しょうがないわねぇ、私のことを見たほうが早いかしら。」
パチンッ
そう誰かが指パッチンをしたような音が聞こえた。
そうしたら勉強机の上にギリシャの女神っぽい人が出てきた。
「あなたねぇ、私がわざわざ異世界に誘ってやってんのにあなたは喜びの一言もないわけ?」
「い…いや、こんな訳分からない状況下でまともな反応を期待するのはハードル高すぎないか?」
「つべこべ言わずにさっさと異世界にいきなさい!
ノルマが増えて大変なんだから。」
「ノルマって何のノルマだよ?」
「人を異世界に送るノルマよ。地球人類がここ数十年で何倍も人口増やしちゃったせいで私たちのノルマも何倍にもなっててんてこまいなのよ。だからバンバン異世界に送っていかないと追いつかないのよ。」
「神隠しをバンバンやっていくってヤバイ神だな、お前。」
「そういうのはどうでもいいから、さっさと行きますって言って転移しなさい。」
ヤバイ、コイツは完全に人の話を聞かずに自分のことばかり話す俺が嫌いなタイプの奴だ。
「嫌だよ。何で今のままの平穏な毎日に満足してるのに変わんなきゃいけないんだよ。
俺は試験に受かるために10000時間勉強しなきゃいけないんだ。それに今は12月終わりかけてんだぞ?やんなきゃヤベェじゃねえか。
ていうか他を当たればいいじゃないか。」
「はぁ?異世界に行かない、なんていうふざけた選択肢を許しちゃったら行かない人がいっぱい出ちゃうじゃない。もうちょっと考えてから言葉を発しなさい。」
「おいおい、そんなめんどくさいことしてるからノルマが達成できないんじゃないか?あとお前神だからってそんな上から目線で言うな。」
「まず、神と人間だと神の方がずっと上で、私は女神です。
だからあなたより私の方が上なの、わかる?
まぁいいわ、あなたにはいずれ絶対に異世界に転移しますって言わせてやるわ。」
そう捨て台詞を吐いた後あの高圧的な女神は消えていった。
「はぁ、これは何だったんだろう」
俺がため息と一緒にこのような事を言うのも無理のない事だろう。
12/28
「さっさと起きて、私が朝の大切な10分を使って作った朝ごはんをしっかり食べて学校に行きなさーい!」
あの後、さすがにスマホを見たり勉強をする気にもなれず、ベッドの中で色々考えていた。
あの女神を名乗る女は何なのか、絶対に転移させると言った彼女の意味とは何なのか、どうやったら自分が異世界にいかなくて済むか。
そのような考えてもさほど利益もない事を取り止めもなく考えていて良い睡眠ができるはずもなかった。
親に怒鳴られながら起きるという大変不愉快な思いをしながらベッドを出て、勢いよくパンの香ばしい香りのする部屋に入り、朝食を水と共に流し込んだ。
制服とマフラーを身につけ、ヘルメットをつけながら自転車に飛び乗りペダルを学校に向けてこぎだした。
慌てて走っているといきなり視界を全て覆うほどの灰色の金属の塊が出てきた。
トラックが自分に突っ込んできたのであった。
「ぐわぁぁぁぁ!!」
人間の弱々しく貧弱な体が大型車の圧力に耐えられるはずもなく、俺の意識は遥か彼方に飛んでいってしまった。
気がつくといきなりまっさらな空間に昨夜のあの女神がいた。
「もしかしてお前が俺のことをトラックで轢くようにしやがったのか⁉︎」
「ええ、そうよ。
それとあなたが、前回言っていた何でどんどん他の人達を異世界に誘わないかっていう質問の答え、いましてあげるわ。
私が選ばれた人は絶対に異世界に行くからよ。
あなたもトラックに轢かれて死んだのだから異世界に転生しなさい。」
そんないい加減な理由で殺されてたまるか‼︎
という理由でキレるのもアリではあるんだが、仮に異世界に行くときにとてつもない力をくれるとしよう。
自分の欲望を思いのままにできるほどの力をあいつがくれるとしたら、なかなか良い事なのではないか?
「じゃあよぉ、俺に何かチート能力をくれよ。
自分を遮るもの全てを薙ぎ払う事ができるほどの力をな。」
「は?
あんたにはそんな力に対応できる器はないでしょうよ。
豚は逆立ちが出来ず、あなたがアメリカ大統領にならないように、あなたに最強クラスの力なんかあげられるわけないでしょ。」
「なっ…」
突然自分の器を強い口調で貶されたら、誰でもその圧力には屈するだろう。
しかし、少しでもいい条件を手に入れるために俺がここで引いてはいけない。
「なら俺の器にでも合うような能力をくれよ。
弱くてもいいからさ。」
「これなんかどうかしら、時間泥棒っていう奴なんだけど。」
「それはどんな能力なんだ?」
「他人が自分のために使った時間をそれによって得られた効能を犠牲にして自分のものにできたり、他の人に渡したりできるってこと。
まぁ、例をだすわ。
あなた、今朝母親が10分で作った朝ごはんを食べたわね。
それで、今時間泥棒を使うと朝ごはんを食べてないことになり、その分お腹が減り、1日の時間が10分伸びるってわけ。」
「じゃあもし、自分が他人から攻撃を受けたときに時間泥棒を使うとその受けた傷の分がチャラになるのか?」
「あなたに向かって傷つける意思があるとかの、あなたに敵意がある行動に対しては使えないわ。
まぁ、そんな強い能力だったらあなたが使えるはずがないんだけど。」
「それでもいいからその能力をくれよ。」
「はぁ、わかったわ。
はい、あなたに時間泥棒の力を上げたわ。
使う時は『俺は○○に対して時間泥棒を使う』、と言いなさい。
あなたを説得するのにすっごく疲れたから、さっさと異世界に行っちゃいなさい。」
「嫌だよ。誰が異世界に行くなんて言ったんだよ。
体をたくさん動かさなきゃならない剣と魔法のファンタジーみたいなのに比べたらペンと受験の現実世界の方がエアコンと車の分マシだな。」
「はぁ?
完全に異世界にいくっていう話の流れだったじゃない。というか、まずあなたはトラックにはねられたのよ。」
「そんなの俺が死んでる証拠にはなってねえだろ。
この2人の中の誰が俺が死んだのをみてるってんだ。
だから俺はもう現実で起きるぜ!」
自分が生きている、と言う強い自覚を持つことで目を覚ますんだ!!
俺は生きている、俺は生きている、俺は生きている!!
この作品に出てくる10000時間ってちゃんと根拠があるんですよ!!《10000時間理論で検索!》