新生ブルー·マリン、最初の客!
伸介も来た!
……馬鹿ばっかりなのかな……
伸介が戻って来たその日、謙二と伸介は春香の所で遅くまで飲み明かした。どうやら、謙二は伸介が帰って来た事が嬉しいらしい。伸介も謙二と働ける事が嬉しい様だが、2人共に素直に感情を出す事が出来ない。不器用な2人である。
翌日、謙二は朝早くから朝食の準備をしていた。
「早いな、謙二」
「……明日はお前が当番だからな!」
「そうなのか?……とりあえずは頑張るよ……」
「しかしさぁ……大丈夫なのか、伸介?」
「何が?」
「ここは給料も安いし……社長は人使いが荒いぞ?…鬼か悪魔だな!」
「何だって?…聞こえてるんだけどな?」
「社長、おはようございます!…社長は優しいって話してたんすよ!」
「相変わらず調子がいいな……伸介、眠れたか?」
「はい、ありがとうございます。今日から、改めてお願いします」
「おう……それより、夏海はまだ寝てんのか?」
「期末試験が有るらしく、遅くまで勉強してたみたいですよ?」
「しょうがねぇな……どっちか起こして来い」
「伸介、俺は手が離せねぇから頼むな!」
「はいはい、行きますよ」
伸介は夏海の部屋をノックし、中に入って行った。
「夏海ちゃん、朝だよ」
「う~ん、後5時間……」
「昼を過ぎちゃうよ……しょうがないな~……」
伸介は胸を張り、大きく息を吸い込んだ。
「川本夏海さん、おはようございます!…本日も気持ちのいい朝となっております!」
「うるさ~い!…起きるよ、分かったよ!」
伸介は剣道をやっていた為、声はかなり大きく出る。夏海も寝ている訳にはいかなかったらしい。
夏海が降りて来る。伸介は後ろから付いて来た。
「夏海~、伸介にびっくりさせられたみたいだな?」
「びっくりなんてもんじゃないよ~!……心臓止まるかと思った……」
「起きない夏海ちゃんが悪いんだよ」
「とりあえずだ、揃ったから飯にするぞ!」
みんなで朝食を取る。
「所でさぁ……伸介、そんなに俺に影響されたのか?」
「そんな筈ねぇだろ!」
「そう恥ずかしがるなよ~」
「あのな……デリカシーのないあんたなんかに影響される訳ねぇだろ!」
「……出した奴よりはデリカシー有るけどね~!」
「そういう所がデリカシーゼロなんだよ!」
「そういう事言うんだ~……春香ちゃんに、伸介が変態だって言ってやろう」
「おい、そういう所がダメなんだよ!」
「出してない俺は、別にダメじゃないよ~だ!」
「あのさぁ……レディの前で辞めてくれる?」
「レディ?……伸介、何処に居ると思う?」
「多分……これから来るんじゃないのか?」
「2人共!…目の前に立派なレディが居るでしょう!」
「立派なレディ?……ちんちくりんじゃん」
「ちんちくりんて何よ!」
「だって……なぁ伸介、胸の辺りがなぁ」
「この野郎……人が1番気にしてる事を……お爺ちゃん、この2人はクビ!」
「「おいおい……」」
「そう怒るな夏海……こんな2人だからこそ、ここで働こうって気になったんだから……それにな、夏海はこれからだろ?…ちんちくりんな胸がボーンとなるかもしれないだろ?」
「お爺ちゃんの馬鹿!……もう知らない、学校行って来る!」
夏海は怒って出て行ってしまった。
「……何で怒ってるんだ?」
「社長、謙二と変わらないですよ」
「いや、俺より悪いですよ!」
「そうなのか?……難しいな……」
「「1番デリカシーがないのは社長だな」」
朝から賑やかである。
昼を少し過ぎた頃、予定していた客がやって来た。
「すいませ~ん、お願いします!」
「ああ、待ってたよ……今年もそんな時期だね?」
「はい、今年もお願いします……そちらの2人は?」
「この夏の従業員だ」
「黒崎謙二です!…俺に任せれば、何も問題有りませんよ!」
「何を言ってんだか……大槻伸介です」
「楽しそうな2人ですね……私は伊藤といいます。ボクシングのトレーナーです。こっちは……」
「斎藤和美、フェザー級の6回戦です!」
「橋本尚、ウェルター級の6回戦です!」
「篠原泰助です」
「篠原さん、ちゃんと自己紹介して下さいよ!」
「僕はこれで充分だよ……」
「澤崎ジムで初の日本ランカーじゃないですか!」
「日本ライト級4位、17戦13勝3敗1分、念願の日本タイトルが決まった28歳独身でしょ!」
「独身は余計だよ」
「28歳……石谷より1歳上だな?」
「石谷か……懐かしい名前だな?」
「ちょっと、石谷って石谷彰かい?」
「「そうです」」
「石谷を知ってるのかぁ……何だか嬉しいなぁ」
「篠原!…そんな気持ちだから、なかなか日本タイトルが出来ないんだぞ!」
「しかし……石谷は単純に凄いですよ?」
「篠原さん、石谷を知ってるんですか?」
「一方的にだけどね!」
「……流石石谷だな……謙二、俺達の知り合いは凄いみたいだな?」
「本当に……ここでその名前を聞くとはな……」
「話は終わりだ!……荷物を置いて練習するぞ!」
「「「はい!」」」
「ほら、お前達は荷物運びだ」
「は~い」
「では、案内します」
謙二と伸介は、ボクサー達の荷物を部屋に運んで行った。
ボクサー達は、着替えてすぐに浜辺に向かった。浜辺を伊藤トレーナーの監視の元、徹底的に走らされている。どうやら、このボクサー達はここで基礎トレーニングを行う為に泊まるらしい。
新生ブルー·マリンの最初の客は、何とボクサー達の合宿であった。どんな合宿になっていくのやら。
最初の客はボクサー達……
結構むさ苦しいかも……