レースも終盤!
トライアスロン、最後のランへ……
ランに入ったトライアスロン、レースも終盤である。
21人の先頭集団だが、以外に早くバラけ出す。ランの1周目、走り出してほんの数kmという所で実業団の選手が何人か脱落していく。ランの得意ではない選手は、競り合う事でペースが上がったランに着いて行くのは厳しかった様である。
このまま膠着が続くかと思ったが、1周目が終わる前に謙二と大斗が下がって行った。経験者とはいえ、40代の2人にはかなり厳しい展開ではあった。とはいえ、大健闘と言えるだろう。
先頭集団は10人となり、1周目を終えた。この集団、誰もが精神的にも厳しい事になっていた。実業団の選手は、そのプライドに掛けてライバル達や殆ど初心者に近いボクサー達には負けられない状況である。周りを見ながら、レースをどう進めるかを考えながら走っている。
一方のボクサー達だが、甲斐は元々のプレッシャーに加え、オーバーペース気味に先頭集団に追い付いた事でスタミナのロスが出ていた。きついランとなっている。喜多と手塚も同じであり、後方から追い上げた事から甲斐よりもスタミナのロスは大きい。この辺、意地だけで補っている様である。佐伯は確かに3人よりは余力が有る。なかなかの走りもしており、結果に期待も持てる。しかしである。実業団相手という事もあり、必要以上に力が入っている。ボクサー達も厳しいレースとなっている。
ここで1人、全く力みのない選手が居た。徳井である。元々徳井は、楽しみたいだけで参加しており、出来るだけ上の順位を目指してはいるが、優勝は全く考えていない。険しい表情の先頭集団の中、徳井だけ和らいだ表情をしていた。この徳井の表情こそ、実業団選手は最も警戒していた。
他の選手だが、誰もが頑張っていた。
謙二と大斗は確かに先頭集団から離されたが、それでも必死に走っており、先頭集団から落ちて来た選手を少しずつ抜いていた。まさに中年の星である。
篠原と石谷だが、こちらはマイペースである。目標は完走であり、自分達の目標達成に着実に歩を進めていた。こちらはこちらで、なかなか頑張っている。
問題なのは伸介と武人である。伸介はペースも考えず、ママチャリを激走させた。そのツケが回って来ており、ランの足取りが重い。その伸介に付き合った武人も足取りは重いのだが、それでも伸介よりはダメージがなく、着実に走っている。このまま伸介から離れて行きそうなのだが、伸介が重い足取りながら武人に着いて行く。伸介にもプライドが有る様だ。
先頭集団が2周目に入ってから5分程で篠原と石谷が、その1分後には伸介と武人が2周目に入って行った。本当に良く頑張っている。
トライアスロンは遂に、ラン最後の1周となった。
その頃のラジオだが、こちらは盛り上がりが凄い事になっていた。
「いや~、岡崎さんは凄いよね!……その若さで社長だし、仕事も上手くやってるし……この番組のスポンサーになってよ!」
「スポンサー、いいね!必要なら言ってよ!……月1回くらいはゲストとして呼んでさ!」
「あら?…岡崎さんがゲストなら、私も参加しちゃおうかしら?」
「私モ参加シタイ」
「ちょっと待ってよ!……何々、ファックス?メールも?…………岡崎さんのゲストは有り!…ていうか、MCで!……美里さん、鬼ちゃんの変わりにエリーさんとMCお願い!岡崎さんは、たまにゲスト!……お前等、僕が今まで頑張って来たの!」
「今まで頑張って来たなら、そろそろお疲れ様じゃないの?…丁度良かったじゃない!」
「ナイスタイミング!」
「岡崎さん、この2人……」
「ちょっとおかしいよ?」
「そうですよね?」
「俺がスポンサーなのに、何で美里さん達ばっかり注目されるの?当然俺に注目でしょ?」
「岡崎さん、そうじゃなくて……」
「岡崎さん、私とエリーの方が華が有るのよ!」
「岡崎サンハ、ムサイ」
「何処でそんな言葉覚えた?」
「勝手に話進めないで……え?…メッセージ?……週交代でMCやれば!丁度4人だし!…って……だから、僕の番組なんだって!」
「暴君じゃないのか?」
「スタッフさんも大変ね」
「我ガ儘ハ良クナイ」
「ちょっとスタッフ……誰も僕の味方じゃないの?……またメッセージ?何々……鬼ちゃんお疲れ様!長い間ご苦労様!……おい、辞めないって言ってんだろ!」
「鬼ちゃん、今が引き際だよ!」
「タイミングは大切よ!」
「後ハ任セロ!」
「揉めてるな~、生放送でダメじゃないか!」
「ちょっと、勝手に入って来ないでよ!」
「何言ってんのさ、特別ゲストとして出てやろうってのに」
「西田さん、大丈夫ですか?」
「本当に、馬鹿って言葉が良く似合うわ!」
「褒めないでよ、照れるじゃないか!」
「褒メテナイ……拳人ガ大変……」
「西田会長は、出演予定はないんですよ!」
「予定は未定、大丈夫大丈夫!」
「大丈夫しゃないですよ!……え?…またメッセージ?……西田会長、あなたはろくな事を言わないからダメ…西田拳闘会一同……ジムのみんなにダメ出しされてますよ?」
「嬉しさの裏返しさ!」
「それはない!……池本さんに殴られますよ」
「それいいわね、池本君にお仕置き頼もうかしらね!」
「賛成!馬鹿会長ヲ指導シテ貰オウ」
「西田会長、人気無いっすね~!」
「大きなお世話だ!」
「はいはい、西田さん退場~!」
「スタッフさん、お願いね!」
「オツカレサマ」
「ちょっと、それはないよ~!」
スタッフに連れられ、西田はラジオ番組から退出させられた。しかし、皮肉にもこの西田の登場が更にラジオ番組を盛り上げる結果となった。まだまだ盛り上がりそうである。
西田会長、色々とやってくれています……