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大切な場所!

運命のプレゼンテーション……

プレゼンテーションの日は、あっという間にやって来た。本日の14時、銀行でプレゼンテーションとなっている。その日の朝、伸介は謙二達と変わらぬ朝食を食べていた。

「いよいよ今日だな?」

「おう!」

「どうだ?」

「どうだも何も……何とかするしかねぇよ!」

「頑張ってね、伸介さん!」

「伸介君、何とかしてよ!」

「全力を尽くします」

「頼むぞ伸介!」

朝から伸介は気合いを入れており、謙二達は伸介を激励していた。

そこへ、篠原達が降りて来た。

「ふわぁ~……早いなみんな……」

「緊張で夜明けまで眠れなかった……」

「伸介、頼むからな!」

「伸介さん、頼みますよ!」

「伸介君、夏海を悲しませないでよ!」

「はいはい……それより、顔でも洗って朝食食べちゃえよ……みんな、酷い顔してるぞ」

この後、篠原達は顔を洗って朝食を食べた。場合によっては、この朝食がブルー·マリンでの最後の朝食になる者も居る。複雑な朝となっている。この後、伸介は改めてプレゼンテーションの資料を確認し、プレゼンテーションの成功に向けて余念がなかった。

一方の謙二だが、こちらは夏海と一緒にオーナーの募集の件を確認していた。書き込みは、かなりの数が有った。


[ブルー·マリン?……何処それ?]

[利益がそれ程望めなくないか?]

[誰が買うんだよ!]

[お金をどぶに捨てる様な物]

[居るとしたら、物好きだね!]

[お金積まれても要らねぇ!]


大体がこの様な書き込みであり、オーナー候補は望み薄の様である。

「酷いよね……」

「無理なら無視すればいいのにな!」

謙二も夏海も納得いかない表情である。しかし、今の状況ではプレゼンテーションが最善策と言うより他ならない。


みんなで昼食を取り、少しゆっくりとしてから伸介は銀行に向かった。運命のプレゼンテーションである。謙二達はブルー·マリンに残り、伸介の結果をひたすら待つ形である。

「伸介さん、大丈夫かなぁ……」

「夏海、伸介君を信じよう」

「うん……」

「大丈夫よ、ねぇ謙二君?」

「大丈夫です。信じましょう!」

「僕も信じてるよ」

「私も、伸介は頼りになる奴ですからね」

「やって貰わないと困る!」

「夏海ちゃん、きっと大丈夫!」

「うん……」

みんなで少しの間話をしたのだが、すぐに無言になってしまった。誰もが口に出さないが、それだけ不安なのである。伸介が帰って来るまでの数時間、ブルー·マリンに居る誰もが長いと感じていた。


一方の伸介、銀行に着いて奥に通された。

「どうぞこちらへ……本社の頭取も見えてます」

「ありがとうございます」

伸介は頭取の待つ部屋に案内される。部屋に入ってすぐ、伸介は頭を深々と下げた。

「本日は、私共の為にお時間を作って頂き、誠にありがとうございます」

「……頭を上げて下さい……時間が勿体無い、すぐに始めて下さい」

「はい、よろしくお願い致します」

伸介は頭を上げるとすぐに、PTで作成した資料を渡しプレゼンテーションを開始した。相手は頭取と支店長、副支店長の3人である。

「まずですね、こちらの資料の1ページ目をご覧下さい……こちらに現在の融資の状況とブルー·マリンの現状をまとめています……」

伸介は丁寧に、それでいて分かりやすくプレゼンテーションを進めた……………………


17時を少し回った頃、伸介がブルー·マリンに帰って来た。みんなが一斉に伸介を出迎えた。

「どうだった?」

「伸介さん!」

「伸介君?」

「どうなの?」

「伸介!」

「大丈夫だよな?」

「上手くいったよね?」

「……………………みんな、申し訳ない……」

伸介はその場に土下座した。

「本当に申し訳ない……俺は何の力にもなれなかった……」

この伸介の行動に一瞬、誰もが言葉を失った。

「伸介、頭を上げろよ」

「いや、俺は何も出来なかったんだ……みんなに顔向け出来ない……」

「辞めろって!……誰も、お前を責めたりしないさ……お前には感謝してるんだ……」

「謙二……」

「そうだよ伸介さん……ブルー·マリンの為にありがとう……謙二君も一生懸命にありがとうね……失くなっちゃうのは残念だけど……お爺ちゃんもブルー·マリンがみんなに愛されて、満足してると思う……」

「そうね……こんなにみんなに愛されて……ブルー·マリンもお父さんも満足だよね……」

「うん、きっとそうだよ……後は……最後までしっかりと営業しよう」

「……9月一杯で退去だそうだ……後2日……」

「それまで、しっかりと働こうぜ!……俺達の中には、ブルー·マリンはいつまでも有るからさ!」

「僕は後2日、ここに泊まる事にするよ……プロボクサーになって、デビュー前からここに合宿に来てさ……ここは、僕のプロボクサーとしての始めの一歩だったんだ……最後まで、見届けたいな」

「私も残る……ずっと別荘から見てて、ここにずっと来たかった……やっと夢が叶ったんだもん……最後まで……」

「私は……道場も有るから、すまないな伸介……」

「いえ、大丈夫です。ありがとうございました」

「俺も……悪いな黒崎……」

「何言ってんだよ、ありがとうな大斗!」

「夏海……私も帰るわね……自分の育った所の最後……見てられそうにないもの……」

「ありがとう、お母さん」

その時に、1台の車が駐車場に入って来た。運転しているのは浜名である。浜名はブルー·マリンに入って来た。

「帰る人、居るんだろ?……送って行くよ……」

「悪いわね、浜ちゃん」

「すいません、お願いします」

「ありがとうございます」

「後ろの2人も、帰る時は送るよ……謙二君に伸介君も含めて、本当にありがとう」

浜名は頭を深々と下げた。

「俺は……ブルー·マリンが大好きだった。大輔さんも大好きだったし、大輔さんの奥さんも大好きだった……そんなこの場所を、好きになってくれてありがとう……最後まで頑張ってくれて、本当にありがとう」

浜名は改めて頭を下げる。

「辞めてよ浜名さん」

「俺達は、何にも出来なかったんだから……」

「いや、そんな事はない……大輔さんも、きっと分かってるさ……さて、送りますね」

浜名は秋江·武人·大斗を送って行った。

この日、謙二と夏海はインターネットの書き込みを更新する。


10月1日10時

ブルー·マリン最後の時……

この日、この時間が最終……


更新内容はこれだけであった。


ブルー·マリン最後の日はすぐにやって来た。本日は10月1日、本日10時を持ってブルー·マリンの歴史に終止符を打つ予定である。

この日まで、大原兄弟を始め商店街の人達がブルー·マリンにやって来ていた。誰もが、このブルー·マリンとの別れを惜しんだのである。

何故、伸介のプレゼンテーションが上手くいかなかったのか、一応説明はしておく。一重にタイミングの悪さである。

丁度、この辺の開発の話が出ていた。その予定地には、ブルー·マリンも含まれていた。その上で、銀行の頭取が支店まで移動する際にブルー·マリンも含めて開発予定地を見てからプレゼンテーションに望んだ。頭取の目から見たら、伸介のプレゼンテーションよりも開発の方が利益が見えていたに違いない。しょうがない事ではある。

篠原と冬美はブルー·マリンで謙二達と朝食を食べると、東京に帰る準備をしていた。謙二達も荷物等を前の日にはまとめており、後は運び出すだけである。

9時30分、浜名が2t車でやって来た。謙二達の荷物やブルー·マリンから必要な物を運ぶ為である。とはいえ、持って行く物は大輔の遺影と大輔の大切にしていたジッポライターくらいである。後は自分達の荷物だけなので、すぐに2t車に荷物を積み終わった。

時間は9時40分を少し過ぎた頃、銀行の支店長と副支店長がやって来た。謙二と伸介は、2人を中に通した。そこに夏海と春香も同席する。篠原と冬美は玄関の方で待っている。

「さて、さっさとやりますか?」

「嫌な事は、すぐにやりましょう!」

「待って下さい……もう少し時間は有ります……」

「もう少し、待ってみましょう……我々は、大輔さんと話すのが好きでした……この場所も、我々は大好きでした……」

「もう少しだけ……ここに居たいんです……」

「分かります……いい所ですよね……」

「何で分かんねぇんだろうな~……」

「謙二……」

「本当に……」

「我々もそう思います……」

静かな時間が流れた。

「すいませ~ん……ここの方?」

「僕達は違うけど……」

「ご用ですか?」

「そうなんだけど……」

奥から春香がやって来た。

「はい、どうしました?」

「あれ?……ここって、男の人が経営してるんだよね?」

「そうですけど……」

春香が対応していると、謙二と伸介と夏海も来た。

「どういったご用件で?」

「あ?…社長の知り合いですか?……残念ながら、大輔社長は……」

「大輔社長?……俺は、黒崎謙二と大槻伸介という人に用事が有るんだけど?」

「は?…俺達に?」

「誰ですか?」

「伸介君、記憶にないの?」

「謙二君は?」

「「全く……誰ですか?」」

「あっはっはっは、俺も初めましてだよ……聞いてた通りの人達だね!」

「あの~……」

「それで誰なんですか?」

「悪い悪い……俺は高松(たかまつ)修司(しゅうじ)……高松康介の兄と言った方が分かり易いかな?」

「高松の兄貴?」

「……似てる!…確かに似てる!」

「そう?…似てるかな~?……それより、康介から伝言と預かり物だ」

「高松からの伝言?」

「後、預かり物?」

「まずは伝言……[この馬鹿!何度も書き込んでるのに返事しろ!…俺だって暇じゃねぇんだ、リーグ戦も途中だし!…責任持って確認くらいしやがれ!この馬鹿共!]だそうだ……後……これ5000万円な」

修司はバッグを謙二に差し出した。

「5000万円て……」

「どういう事ですか?」

「康介がな……[俺の親友達が困ってんだ、金で解決出来んなら出すだけさ。悪いが俺は行ってる暇は無い!…頼まれてくれ。間に合わなかったら、兄弟の縁切ってぶっ飛ばすからな!……それと、あの馬鹿2人にも……困ってんなら相談しろ!友達甲斐の無い阿呆が!って伝えてくれ]ってな事でな、俺も出張だったんだが……康介の頼みだしぶっ飛ばされたくないし……急いで昨日、通帳から降ろしたんだ。康介はしっかりと振り込んでたみたいだけどな」

差し出したバッグから1000万円の束を3つ取り出した修司、それを差し出しながら、

「これで大丈夫だろ、後ろのお2人さん……間に合ったよな?」

「9時58分、確かに間に合いました!」

「我々は、これで問題有りません!」

支店長と副支店長は3000万円を受け取ると、みんなに頭を下げて銀行に戻って行った。

「残りは、謙二君と伸介君への融資だそうだ……[死んでも返すなんて言わないでいい。後でしっかりと、お・も・て・な・しをよろしくな!…石谷と亮ともてなされに行くからな!……忘れるなよ、オーナーは俺だ!]だってさ……まぁ、しっかり頑張ってくれ……康介も期待してるみたいだしな」

「待って下さいお兄さん……俺達を信用するんですか?」

「俺達……お兄さんを知りませんよ?」

「康介が信用してんだ、大丈夫だろ?……それに、悪い奴はここで呼び止めねぇよ……じゃあな、頑張れよ!」

修司は右手を軽く上げて、ブルー·マリンから出て行った。

「夏海ちゃん、これで大丈夫なんじゃないの?」

「謙二さんに伸介さん、やりましたね!」

「……やったよな?」

「そうみたいだ……」

「やったね、伸介君……」

「謙二君、やったね!」

『うわぁ~~~~~~~~~~!』

謙二達は大いに喜んだ。社会人になって、1番喜んだ日になった。この事は浜名がすぐに商店街に広め、この日の夜はブルー·マリンで宴会となった。勿論、篠原と冬美もこちらに参加である。


宴会が終わり、ブルー·マリンでみんな酔い潰れていた。篠原はボクサーの為に酒は飲まなかったが、みんなに絡まれて疲れて眠ってしまっていた。

時間は3時を少し過ぎた頃、謙二は浜辺に出た。すぐ後から伸介もやって来た。

「何とかなったな、謙二?」

「ああ……高松には、頭が上がらねぇな?」

「本当に……」

「俺さ……夏の青い空と海がさ、合わさる様な地平線を見詰めるのが好きなんだ……そんな夏を経験したかった……」

「今なら分かるな~……それが、俺にも大切だったんだ……」

「いつか、俺も自分を見詰め直して……もう1度ここへ戻って来る……いいか?」

「いいも何も……俺は信じて待ってるだけだ……高松からの融資、少しくらい持って行けよ」

「悪いな……」

「本当に戻って来る?」

「「おう?」」

謙二と伸介はびっくりして振り返った。そこには夏海が立っていた。

「謙二君、本当に戻って来るの?」

「戻って来るさ……ここは、俺の新たな出発の場所だし……甘えん坊の夏海が居るしな?」

「甘えん坊じゃないよ!」

「はいはい、そうしときますよ」

「良かったね、夏海ちゃん」

「……うん……」

この日、色々な意味でスタートとなった様である。


翌日、朝食を食べると謙二は荷物をまとめて自分の車に積んだ。

「謙二君、寂しくなるね」

「そう?…俺、いい男だもんね!……でもさ、伸介が寂しがるから思っても口に出しちゃダメだよ?」

「あんたは~……」

「はいはい、そういう事にしておきます」

「謙二君、必ず帰って来てね!」

「しょうかねぇな~……夏海、ちんちくりんをしっかり改善しとけよ?」

「この馬鹿!…べ~だ!」

「謙二、色々楽しかったよ……ありがとな」

「こちらこそ……伸介、お前に出会えて良かったよ」

「俺もだ」

謙二と伸介は固い握手をした。謙二は自分の車に乗る。

「さて、それじゃあな……戻るまで、頼むぞ!」

「おう!」

「またね!」

「約束、帰って来てね!」

「おう!」

謙二は左手を窓から出し、大きく上げながら車を走らせた。伸介達3人は、それを見えなくなるまで見送った。


5年後……………………

伸介がブルー·マリンから出て来る。その後を春香が付いて来る。春香のお腹が大きい。

「今年は帰って来るかな~?」

「どうだか……しかし、来てくれるといいな~……春香のお腹の子供の名前、謙二に付けて欲しいしな~……」

「あれ?…伸介さんと春香さん……どうしたの?」

「気持ちのいい朝だからね……6月半ば……そろそろ夏だね?」

「春香さんのお腹も、もうそろそろだね?」

「そうね~……何となく、今年はいい事が有りそうじゃない?」

「どうだか……あの馬鹿は、連絡もしないしさ……」

「そんな事言って、ここから通える短大選んだくせに……就職だって、ここから少しの所でしょ?」

「だってそれは……でも、謙二君が大馬鹿なのは確かな事です!」

「おうおうおう、(あんま)り変わんねぇちんちくりんが、よくもまぁ俺の悪口を……」

「謙二!」

「謙二君!」

「はい、ただいま……どうした、夏海?」

「……今まで何やってたんだ、この馬鹿~!」

夏海は謙二を叩き出した。

「何だよ、辞めろって!……夏海は本当に痛いんだよ、もう……色々有ってだな、俺はそこの新しい会社の支社長になったんだ……イベント会社に就職して、これからはここを盛り上げて行く事にする……協力よろしくな!」

「しょうがねぇな~……よろしくされてやるよ」

「私もして上げる」

「しょうがない、私も」

「夏海はだな……少し違ってだな……」

「何?」

「俺と一緒に働かないか?……出来たらその……私生活でも一緒に……」

「え?……それって……」

「お取り込み中に悪いんだが、お客なんだが?」

「ああ、いらっしゃ……高松?」

「あれ?……どうして?」

「俺はオーナーだぞ?…約束通り、もてなされに来ただけだ」

「ああ、高松オーナー……初めまして!」

「あの時はありがとございます。私は川本夏海と申します」

「お2人共……手遅れですな、この2人の馬鹿が感染してます……」

「「何だと、この野郎……」」

「久しぶりに会ってそれか?」

「お前の方が馬鹿だ、高松!」

「俺はオーナーだぞ?」

「「関係ねぇ!」」

「あ~あ…始まったね?」

「本当に……これからも大変だね」

謙二と伸介は一頻(ひとしき)り高松に絡み、ブルー·マリンに入って行った。

「さて……これを2人に渡して下さい……勿論、俺が帰ってからね」

「これ……土地の権利書……」

「どうして?」

「2人のこれからに……かな……馬鹿だけど、間違ってない確かな男達さ……これからも、ずっとお願いしますね」

「「はい!」」

「あいつ等が居る……理由はそれだけで充分さ……」

「お~い、高松!早くしろ!」

「遅ぇんだよ!」

「だ~か~ら~、俺はオーナーなんだぞっての!」

「「関係ねぇよ!」」

ブルー·マリンに謙二も戻って来た。きっとこれからも、楽しい毎日が待っているのだろう。

これから先、ブルー·マリンに関係した人々に幸せが有ります様に………………

一旦、これにてこの物語の本編は終了となります。

後少しだけ、特別話といいますかその後の1コマといいますか、話を掲載致します。

もう少しだけお付き合いをお願い致します。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 救世主は高松さん! やはり偉大な男ですね。。 でも海の家が救われてよかったです!
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