企画は大変!
さてさて、どんな事を考えるのやら……
夜の見回りを謙二と伸介も一緒に回った。大原兄弟は慣れた感じで見回りをしている。
「効率いいな?」
「役立たないと」
「しかし……見回ると確かにと思うけど、なかなか気付かない所まで……」
「俺達は、逆の方をしましたから……」
「「逆の方?」」
「盗る側です……困ってたとはいえ……」
「本当に申し訳ない事をしました……」
「確かにそうだな……更に殴り掛かって来たし!」
「「わぁ、ごめんなさい!」」
「謙二、もう済んだ事だろ?……今は、頼もしい仲間さ」
「「ありがとうございます!」」
本日の見回りは早く終わった。謙二と伸介が手伝った事が大きかった。
「よし、次は会議だ!」
謙二に促され、みんなでブルー·マリンに移動した。
ブルー·マリンに行くと、そのまま中に入って居間に向かった。既に22時を回っており、誰も居ない時間の筈……なのだが、本日は夏海に冬美、春香も居た。
「春香ちゃん、お店は?」
「お休み!…謙二君と伸介君が来ないと、暇なんだよ!」
「確かに……客、少ないもんね?」
「余計なお世話!」
「まあまあまあ、とりあえず会議をしようよ」
「伸介はお堅いな……つまらない奴め!」
「何だよそれ?」
「あの~、とりあえず始めましょう……」
「夏海さんも冬美さんも、呆れた顔をしてますよ?」
友繁と友則に言われ、やっと会議が始まる事となった。
「とりあえずだな……盆踊りを盛り上げるがテーマな訳だが……何か無いか?」
「随分とざっくりだな?」
「それしかねぇだろ?」
「……確かにそうだけど……そもそも何で客が減ってんのかな?」
「つまらないからじゃないの?…高校でも、みんな言ってたよ?」
「……私は……毎年参加しなかったから……」
「つまらないと参加した事がない……夏海さん、具体的に何がつまらないんですか?」
「具体的……何だろ?」
「夏海、何にも考えてねぇんじゃねぇのか?」
「うるさいなぁ……」
「冬美さんは、何で参加しなかったんですか?」
「私は……不貞腐れてたし……改めて参加とは……」
「つまりは、参加しなくても面白くないと思われてる事が原因という事ですね!」
「友繁、なかなかいい考察だね!…それで、どうすればいいの?」
「それなんですよね……参加しなくてもいいやって思う事を変えないといけないと思うんですけど……」
「兄貴さ、つまりは気になる事をやればいいんじゃないの?」
「確かにそれは有るな!…大原兄弟、いい所に気が付いた!」
「確かにそうだが……気になる事は何だ?」
「気になる事ですか……何でしょうね……」
「私なら、絶対お笑いだな!……お笑い芸人が来ると分かったら、凄い楽しみだもん!」
「……金が必要だな……却下……次!」
「酷くない?」
「酷くない!…ほら、次!」
「謙二、強引だなぁ……俺なら……昔なら、宝探しはワクワクしたな」
「伸介さん、それは面白そうですね……そう考えると、色々な年代が楽しめる宝探しがいいですね!」
「成る程……で、例えば?」
「例えば……宝探しの地図に色々宝が書いて有るんですけど……大人が喜ぶ物や子供が喜ぶ物を用意して……」
「ハズレお宝もいいですね!…明日の焼きそばの係とか!」
「謙二さんや伸介さんが、翌日フリーになったり……」
「「素晴らしいアイデアだ!」」
「でも……それだけだと、すぐに終わっちゃうんじゃ……」
「そこでだ……宝にはナンバーをいれておいて、その発表を盆踊りに随時発表する……副賞を貰える訳だな……宝探しに参加しない方々は、地域のラジオ番組をその日限りで流して、ゲストで参加して貰おう!……色々話を膨らませて貰って、盆踊りの事も伝えて貰おう!」
「謙二さん、それいいですね!……ラジオ番組はどうしますか?」
「俺達は、知り合いは居ませんよ?」
「多分だが、伸介が役に立ちそうなんだが?」
「良く分かってるな……前の仕事で、知り合いは居るからな……よし、明日連絡してみるか」
「大原兄弟は、お宝を何処に隠すか考えてくれ!……少ないとすぐ終わるから、それなりに配置頼むぞ!」
「「了解!」」
「夏海と冬美ちゃんは、ポスター考えて!…出来たら政さんの所に行って、たくさん作って貰って!」
「はい!」
「任せて、謙二君!」
「よし、俺は明日……政さんとうちの頑固親父に、賞品や色々と直談判だ!」
「そこは頼むぞ……つまらなくなるからな!」
「おう、任せておけ!」
「謙二さん、お願いします」
「楽しい物にしましょう!」
「お爺ちゃんがうるさかったら、私がやっつけるから!」
「頼もしいな、夏海!」
「私も、出来る限り協力します!」
「よろしく!……よし、絶対に成功させるぞ!」
『オ~!』
盆踊りの日、何をするかが決まった様である。
翌日、謙二達はすぐに行動に移した。
伸介は、前の仕事で知り合ったラジオ局に連絡を入れた。
「すいません、私、大槻伸介と申しまして……溝口ディレクターはいらっしゃいますでしょうか?…………ああ、溝口さん、お久しぶりです……実はですね、今度街起こしを兼ねて……はい、はい…………宝探しを考えてるんですけど、そこで公開ラジオ番組を…………え?…はいはい……確かにそうですね……成る程、そうですか…………やっぱりいいですね…はい、はい……では、よろしくお願い致します!」
電話を切った伸介、近くに居る謙二に向けて親指を立てた。
「やった、よくやった!」
「まぁ、順当だな」
「格好付けんな、この野郎!」
こちらは上手くいった様である。
夏海は尚子と洋平を呼び、冬美と一緒にポスターを作っていた。
「ほらほら、2人共ちゃんとやって!」
「しかしさぁ……俺は苦手なんだよ……」
「……難しいよね……冬美さん、上手い!」
「そう?…まぁ、一応は大学の部活入部のポスターを作ってたからね!」
「冬美さん、これいいよ!……今日はもう少し頑張って、明日は魚政さんの所に行こう!」
「そうだね!」
「「明日も有るの?」」
こちらも大変である。
謙二は伸介と魚政に行っていた。
「政さん、決まりましたよ!」
「本当に?」
「はい…な、伸介!」
「まぁね……それで、予算を貰おうと……」
「どのくらい?」
「なるべく多く!……宝探しをやるから、その宝代と副賞の代金!……嫌とは言わせないからな!…ラジオの公開放送も約束したし、後には引けない!」
「謙二さん、伸介さん……宝の隠し場所が決まりました!」
「30個くらい必要です!」
「よくやった!…さぁ、政さん!」
「……伸介君、どのくらいなんだい?」
「そうだなぁ……軽く100万円くらいかなぁ……」
「100万円?」
「それくらい出して下さいよ、政さん!」
「謙二君、簡単にいうけど……」
「100万円かぁ……なかなかな金額だなぁ……」
「でも、確かに掛かりそうだね……」
「……そこなんだけど、ラジオ番組もいくらか出すってさ……自分達も景品とかで参加したいんだとか……50万円くらいは出して貰えるみたいだね」
「助かるなぁ……まさか、これで地元が出さないとか?」
「謙二さん、それはないでしょう」
「友則の言う通り!…政さんは、そんなに小さい人じゃない!」
「だそうですよ、政さん?」
「……よし、分かった!…なんとか出すよ!……後はお願いね!」
『はい!』
盛り上がって来た様だ。当日の朝には、放送が流れて朝一で参加の呼び込みもする。楽しくなりそうである。
動き出した計画、楽しみだ!