伸介の人柄!
遂に決勝戦!
成年の部の決勝が始まる。武人が赤、伸介が白である。2人はお互いに礼をし、中央付近まで移動する。蹲踞の姿勢を取り、2人が立ち上がる。
「始め!」
審判が声を掛ける。
「うりゃ~!」
「そりゃ~!」
2人の気合いが入った声が響く。武人は中段から上段に構えを変えようとした。
「いやぁ~!」
その瞬間、伸介は素早い動作で打って出た。小手から面、更に引いて銅から前に出て面と息をも着かせぬ連続攻撃を仕掛ける。
対する武人だが、こちらは流石である。この目にも止まらぬ伸介の連続攻撃を武人はしっかりと防いでいた。伸介の攻撃は決まらない。
一旦2人の距離が開いた。
「そりゃ~!」
「うりゃ~!」
またも2人の気合いの籠った声が響く。武人がまたも上段に構え様とする。
「いやぁ~!」
またも伸介は、一気に飛び込んで行く。先程の攻撃よりも速い連続攻撃を伸介は繰り出して行く。しかも、その攻撃は先程よりも続いていく。一瞬の隙を付き、武人は伸介との間合いを潰して身体をぶつけた。鍔迫り合いとなり、2人はすぐに後ろに飛んだ。
「せりゃ-!」
武人の先程よりも気合いの入った、誰もが一歩引く様な声が響いた。
「いやぁ-!」
返す様に、伸介の声も響く。武人はゆっくりと上段に構える。今度は伸介は、それを待つかの様に動かずに見ている。
上段は火の位と言われる。それだけ、上段に構える者の気持ちの強さが必要になる。武人の全身から、真っ赤な炎が見える様である。
一方の伸介だが、こちらは面の向こうに冷静な眼光が光る。青白い炎が見える様である。この2人の炎が、剣先を通してぶつかっている様である。
「うりゃ-!」
「とりゃ-!」
2人の気合いがぶつかり合い、会場の誰もが言葉を失っている。
「いやぁ-!」
武人から動く。物凄い面が伸介を襲うが、伸介はこれをかわし反撃をする。
「そりゃ-!」
この攻撃を武人は前に出ながら返して行く。お互いの剣は、もう少しで決まりそうではあるが、それでも決まり切らない。田舎の道場で開かれた小さな大会だが、全日本でも見られない様な物凄い試合になっている。
「とりゃ-!」
「そりゃ-!」
2人が一気に飛び込み、お互いに面を放つ。見事に決まったのだが、これは相討ちとなり鍔迫り合いから引き際にお互いが小手を放つ。これも見事に相討ちとなる。
「それまで!」
審判から声が掛かる。2人は開始位置に戻り、お互いに剣を合わせてから蹲踞の姿勢を取り剣を腰に戻す。
「これより、2分間の延長とする」
2人は改めて剣を出し立ち上がる。
「始め!」
武人は上段に構える。伸介は中段に構える。
「うりゃ-!」
「そりゃ-!」
2人の気合いは、一向に萎える気配はない。
「どりゃ-!」
「いやぁ-!」
2人の激しく速い打ち込みが始まり、息をも着かせぬ展開を繰り広げる。2人のレベルの高さが分かる試合である。
延長戦も1分30秒が過ぎた頃、2人は1回大きく深呼吸をする。次の瞬間、
「そりゃ-!」
「いやぁ-!」
2人は同時に飛び込んだ。同時に放った小手は相討ちとなり、次に2人はそのまま面を放つ。
伸介の面は、両手で竹刀を持っての面打ちである。対する武人は、右手のみの片手面打ちである。片手で面を放った武人、その勢いを利用して伸介の面をかわしていた。一方の伸介だが、こちらは見事に武人の面を喰らっていた。
審判と副審2人の3人の赤旗が上がる。
「赤、面有り1本、勝負有り!」
勝敗は決した。伸介は見事な戦いを見せたが、武人の牙城は崩せなかった。2人は静かに試合後の形式を済ませる。
防具を外した武人が伸介の元に行く。
「流石だな……お前は強い……」
「……負けたのは俺ですよ?」
「お前が離れてた分だけ、俺に分が有ったんだ」
「……そういう事にしておきます」
このタイミングで、謙二達がやって来た。
「結局負けかよ~?」
「悪い……武人さんは強かったよ……」
「伸介さん、凄く格好良かったです!」
「うん、いつもと違ってね!」
「……いつもはどう見えてたのさ?」
「謙二君の使いっぱ!」
「納得!」
「おい!」
「伸介……お前はそんな感じだ……」
「あんたは~…すぐ調子乗るんだから~……」
「伸介、相変わらず楽しい仲間だな?」
「……否定はしません……疲れるけど……」
「疲れるのはお前だ!…格好付けんな!」
「本当にあんたは~……」
試合が終わってすぐだというのに、騒がしい人達である。
「ふぉっふぉっふぉっ、2人共、強くなったの」
「「海道先生!」」
「私の選んだ道……間違いはなかった様だ」
「いやいや、私はまだまだ未熟です……伸介には敵いません」
「何を言ってるんですか?…俺が負けたんですよ?」
「いや……お前の剣は、もう1度お前とやりたいと思わせる剣だ……海道先生の剣だよ……」
「何を言って……」
「ふぉっふぉっふぉっ、武人、お前の剣ももう1度やりたいと思わせる剣の様だぞ?……伸介の顔に書いて有るわい」
「!?」
「そうですよ……俺は、藤堂武人と戦いたくて剣道を続けていたんです……俺はいつでも、藤堂武人と戦いたいと思ってますよ!…戦う前も後もね!」
「伸介……よし、来年もやるか?」
「はい、お願いします!」
「ふぉっふぉっふぉっ、もう少し、長生きしないといけないの?」
「「当然でしょ!」」
この後の表彰式だが、伸介と武人の笑顔が輝いていた。
全てが終わり、武人はブルー·マリンからこのまま帰る事にした。
タクシーが駐車場に入って来る。謙二と伸介は、武人の荷物をタクシーに運ぶ。大輔と夏海、春香に冬美も見送りに来ていた。
「来年も、お待ちしています……来年は、私も見学します」
「また、来年ですね?」
「夏海ちゃん大輔さん……来年もお願いします」
「また、お店で楽しくやりましょう!」
「はい、楽しみにしています」
「私も、次回はお店に参加します」
「冬美さん、待ってますからね」
「藤堂さん、来年は伸介がリベンジしますからね!」
「おいおい……」
「はっはっは、承知した!…伸介、来年もやろうな!」
「来年と言わず、この先もずっとやりますよ!…俺が、胸張って[藤堂武人に勝った!]って言えるまでね!」
「だったら……一生無理だな!」
「言いましたね~!」
伸介と武人は握手をした。そのまま武人はタクシーに乗って去って行った。
「伸介、気持ちのいい男だったな?」
「俺の先輩ですからね!」
「伸介さん、来年こそリベンジだよ?」
「私も来年は、応援するからね!」
「頑張れ、伸介君!」
「ああ、来年こそはだな!」
「……時に伸介……」
「何だ?」
「今まで、俺はお前のカバーで大変だったんだ……1週間、飯の用意はよろしくな!」
「は?…何言ってんの?」
「聞いたまんまだよ!」
「全くあんたは~……」
「いや、謙二の言う通りだ!」
「伸介さん、よろしくね!」
「私は、それには関係ないですからね!」
「伸介君、ご苦労様!」
「という訳で……はい、決定~!」
「どういう事だよ~!」
綺麗に終わると思ったのだが、結局は貧乏クジを引かされる伸介であった。
気持ちの良い男でした!




