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名のない物語  作者: K
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旅人①


 カラン。

 心地良い鐘の音とは裏腹に、中の人達はいかつい奴等ばかりで辛気臭い酒場だった。カウンターに行くまでに何人かつっかかっつてきたが、リーが木の精霊・ドリヤード達に頼んで眠らせてくれた。こうして俺はめんどくさい作業をせずにすんだ。


「マスター。人を探しているんだが詳しい奴はいないか?」

「ああ、それなら隅っこの方で飲んでいる奴に酒をおごることだな。」


 見ると一人の親父が顔を真っ赤にして酒を飲んでいた。


「ありがとう。」


 そう言ってから、俺は真っ赤な顔の親父に近づいて行った。


「ねぇ、カイル。本当にあのおじさん、大丈夫なの?もしかすると本当はただの酔っ払い、ってことはないわよね?」

「さあな。どうだかわからないが、ここに居るってことはただ者ではな

いだろうな。」


 小声でファーと話しながら親父の前の椅子に座った。


「何がいい?」

「おっ、兄ちゃんおごってくれるのかー?んー、それならラム酒…でももらおうかー。」

「わかった。マスター、ラム酒を一本!」


 と、周りがざわつきだした。

 慌てて逃げ出す奴もいる。


「えっ?一体何が起こったの?」

「おい!リー!シルフで風の壁を作ってくれ!何かが起こるのはこれからさ。」

「うん!」


 うなづくとリーは目を閉じ、精霊達を呼びはじめた。


「やさしき風の精霊シルフよ。我に力を貸せ。我が身を守る盾となれ。」


 俺達の周りに風の結界が出来た。

 と、同時に周りから弓矢の雨が降ってきた。いつの間にか、黒い服の男達が周りに居た。


「判断力はあるが行動力はないのか?それとも二人を庇っているのか?まあいい。もういいぞ。」


 弓矢の雨が止んだ。


「俺達を試したってことか。出てこい、ファー、リー。」


 ファーとリーは驚いた感じでポケットから出てきた。

 それもそのはず。ファーとリーは俺のポケットの中で完全に気配を消していた。ばれる理由がない。しかし、この親父は気付いていたんだ。


「ほぉー。こんなに可愛らしい妖精とは思わなかったのー。だが兄ちゃんも、なかなかの手だれのようじゃのー。あの攻撃をあんなにあっさりとかわすのだからのー。」

「じゃあ、テストには合格したようだな。俺の問いには答えてくれるんだろう?」

「あー、いいとも。このラム酒を飲みながらな。誰かと一緒にこいつを飲むのは、何ヶ月ぶりかのー。」


 俺は弟君様の特徴を話した。

 親父はその間ずっと目を閉じて聞いていた。

 俺の話が終わるとしばらくそのまま目を閉じていた。

 目を開け親父は答えた。


「すまんが、そんな奴は知らんな。役に立たなくて悪かったな。」

「そうか。」


 まー、そうなるとは思っていたが…情報が少なすぎるんだ。


「ありがとよ。」


 ラム酒代を置き俺達は酒場を去った。

ありがとうございます。

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