ミッション!②
「開いてるぞー」
どうせ、ルナかと思って応えると、キィーという音とともにサンディーが部屋に入ってきた。風呂上がりらしく髪はしっとりと濡れていた。
「……っ!えっと……どうしたんだ?」
「遅くに失礼するわ。実は…シルフィー様のことで話があるのよ」
サンディーは少し間をおいてから話し始めた。
「私は小さい頃からシルフィー様の遊び相手や身の回りの世話をする女官だったの」
「あぁ、まぁ、そんな感じするよな」
「ありがとう」
にっこりとサンディーは笑った。が、すぐに真剣な顔に戻って話を続けだした。
「シルフィー様には、3つ年下の弟君様がおられたわ。ふわふわした金髪を持っていらして、美しいエメラルドグリーンの目をしていらしたわ」
うっとりとした目で遠くを見つめながらサンディーは言った。まるでそこにその弟君がいるように。
「で、その弟は?」
「王宮が攻められた時、王の命令で、一人の兵士と一緒にシルフィー様と弟君様を連れて逃げ出したんだけど、途中で敵兵に見つかりそうになったて……その時、弟君様は行方不明になられたの」
少し俺を睨んでから君様を強めてサンディーは続けた。
「そうか・・・それで弟“君様”のお名前は?」
わざとらしく君様を強めて俺は聞いた。
「………知らないの」
「知らないだって?王宮に勤めてたんだろ?」
「シルフィー様のお国では、生まれてから六ヶ月経ってから王様がお名前の発表をされるのよ。敵に攻め込まれたその日が、お名前の発表の日だったのよ!」
そう叫んでサンディーは泣きだした。
「ということは、弟君様のお名前を知ってたのは王様だけ、ってことか?」
「正確に言うと王妃様、とね」
「でもなんで俺に話すんだ?」
「本当はルナでも良かったのだけど、あれじゃあ役に立たないし。あなただったら信じられると思ったからよ。この旅の本当の目的は、その弟君様を探し出すこと。それもみんな、もちろんあなたの仲間やシルフィー様には秘密でよ」
「なんで秘密にするんだ?みんなで探した方が早いじゃないか。それに、シルフィー様だって喜ぶんじゃあないのか?」
「実はシルフィー様は弟君様のことを知らない、ううん、覚えていらっしゃらないのよ。城が攻められる少し前から記憶が……」
「なるほど……わかった。協力する」
「本当?ありがとう!」
サンディーは俺の手をとりぶんぶん振って嬉しそうに言った。
「あなたみたいに長剣を使える女の子がいるなんて夢にも思わなかったわ」
女の子?誰が?
「えっと……女の子、って?」
俺が目を丸くして聞くと、
「そんなの決まっているじゃない」
と言って俺を指した。
俺の動きが止まり、サンディーの顔色が変わった。
「まっ、まさか……」
俺は震えながら叫んだ。
「俺は、お・と・こ、だーーー!」
静かな夜の村に俺の叫びが木霊した。
その夜、俺は自棄酒を飲んで気分が悪いまま寝てしまった。
* * *
「おはよう!カイル!昨日の叫びは何だったのかなー?」
朝起きると、俺の目の前にファーとリーが立っていた。こういう事になると素早いのはこの二人、いや、ファーだ。リーはいつも巻き添えを食わされるのだ。
「……なんでもねぇー……」
慣れない酒を飲んだせいで ―酒は飲むが、俺はあまり好きではない― ガンガンしている頭に手を置き力のない声で俺は答えた。そんな俺の周りをフワフワ飛びながらファーは続ける。
「どうせ、また女と間違えられたのでしょう?」
「……うるせぇー……」
「いつもの事なんだからいい加減、自棄酒をするのやめたらー?」
「……だまれ……」
「カイルー。女に間違えられる度にお酒飲んでたらいつか、アル中になっちゃうよー」
「……………」
けらけら楽しそうに笑うファーの声。
プチ。
俺の中で何かが切れた。
「うるせぇーって言ってんだろ!」
俺は今出せる最大の声で怒鳴った。
が、そこには俺が怒鳴りたかった相手はいなく、リーしかいなかった。
ファーは危険を察知したらしく、リーを残し何処かへ行ってしまったようだ。
「カイルが…ヒック…おこ…っ…ヒック…た…」
結局、俺はリーの泣き声で頭痛が更に酷くなったしまった。
ありがとうございます。




