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名のない物語  作者: K
21/24

ルナ⑤

 トントントン。


「はぁーい!」


 ジーニアの家の扉を叩くと、中から女の子の声がし、ボブは驚いた。なぜならジーニアは一人暮しのはずだったからだ。


 キィー。


 扉が開くと金髪の女の子が立っていた。


「どなたですか?」


 赤褐色の大きな目を輝かせて女の子が聞いた。


「あっ、ああ。ジーニアばあさんはいるかのう。」


 女の子の目がいきなり涙でいっぱいになった。


「ん?どうしたのじゃ?」

「…おばあちゃん、今、病気なの。」

「あのジーニアばあさんが病気じゃと?」

「うん。朝から部屋にこもりっきりでなにか叫んでいるんだもん。」

「はっ、はっ、はっ………」


 いきなり笑い出したボブを見て女の子は大きくて丸い目を更に丸くした。


「いやー、すまん、すまん。それはきっと薬草を作っておるのじゃよ、お嬢ちゃん。わしもはじめて薬草作りを見たとき驚いたものじゃ。なに、もうじき出てくるじゃろう。ところでお嬢ちゃんの名前は?」

「ルナよ。」

「じゃあ、すまんが中でジーニアばあさんを待たして貰っていいかのう?この子も一緒にじゃ」


 背中に負ぶわれているカイルへと視線を向けた後、


「うん!いいよ!」


 にっこり笑ってルナは答えた。

 カイルを椅子へと座らせると、ルナと一緒にお茶を飲みながらボブはジーニアを待った。

 30分ぐらい経ってから現れたジーニアは、11年前に会った時と同じ黒いローブに三角帽をかぶっていた。


「おーおー、ボブじゃあないか。久しぶりじゃのう。元気にしとったか?わしはもちろん元気じゃぞ。ん?なんじゃ?ボブよ、前に会った時より老けたんじゃあないのか?まー、あれから11年経ったからのう。そう言えば、あの時に連れてきた…えっと……カ…カエルじゃあなくて…おーっ、そうじゃ、カイル…と言ったかのう。あの子は元気か?」

「実は、今日はそのカイルの事で来たのじゃ。」


 と隣でじっと机を眺めてまるで人形のように座っているカイルへと視線を向けた。


 ボブは3日前の事と、カイルが心を閉ざしている事を話した。

 話し終えるとジーニアはカイルへと近づき何かぶつぶつと言いながら、頭を触ったりして診察をした。それが終えると、少し考え込み、ため息をついた。


「…うーん……困ったのう。」

「と言うと?」

「カイルが心を閉ざし続けているのはいきなりの出来事もあるが、何より、自分がボブの本当の孫じゃあないと言う事がかなりショックだったようじゃのう。今日の出来事と共に、封印を使えば元に戻るとは思うのだが…実はわしゃもう年をとりすぎてのう。あの封印はもう出来ないのじゃよ。」

「なんと…」


 自分の髪と目の色を見たときのカイルの顔がボブは忘れることが出来なかった。


「ねぇ、カイルってこの子のこと?」


 暗い雰囲気を吹き飛ばしたのはルナの一言だった。


「そうじゃ!ルナがいるではないか!」

「?」


 いきなり大声をあげたジーニアをボブは驚いた顔で見た。

 ルナもまた同じような顔をしてジーニアを見た。


「おー、そうじゃった。ボブは初めてルナに会うのじゃったな。この子はのう……」


 ジーニアの話によるとルナは6年前、壊れた馬車のそばで泣いていたのをジーニアが見つけたらしい。近寄ってみると両親らしき人が息絶えていた。そのままほっておく事も出来ないので家に連れて帰り育てる事にした、ということだった。


「この子には魔法も教え込んでおる。少しそそっかしいが例の魔法もつかえるぞ。ルナ、ボブとカイルを助けてやってくれないか?」

「わかったわ、ジーニアおばあちゃん。でも私はどうをすればいいのかしら?」

「目と髪の色、そして事件の記憶を消して封印をするのじゃ。くれぐれも失敗をするんじゃあないよ。」

「はーい。」


 そう元気よく返事をしたルナはカイルの後ろへと立つとその頭に手を置き呪文を唱え、再び封印をした。

 そのまま眠ってしまった、カイルをまた背負うと、ルナとジーニアに礼を述べ帰宅した。

 そのまま朝まで寝ていたカイルは翌朝、目を覚まし、そして、ボブを見てこう言った。


「ここどこ?おじいさん誰?…ってか…俺は誰?」


 ルナは、事件の事だけでなくすべての記憶を消すと言う大きな失敗をしていたのだ。

 しかし、一週間後には前のような暮らしに戻っていた。どうやらカイルは記憶などどうでも良かったらしい。



 そして、あんなに元気だったジーニアが永遠の眠りに就き、ルナがボブの家に来たのはそれから2ヶ月ほど経った秋の日だった。


まさかこのサブタイトルの話がここまで続くことになるとは…(汗)

ありがとうございます。

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