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デビルズゲート  作者: Rozeo
第1章 ソルジャー期
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プロローグ

俺の名前は魔悪(まあく)

人型悪魔の二十七歳。

背は百八十センチで細身だ。

髪は長めで、内側が黒外側が赤でツンツンしている。


出身は悪魔大王と同じ魔界の「スフィア」。

大王とは血の繋がる従兄弟にあたるのだが、仲はすこぶる悪い。

というより憎しみ合っている。


物心ついた頃から俺を「大王の座」に付くかもしれないと邪魔者扱いしていたアイツは、俺を洗脳しようと企んだ。

あたかも俺が下級悪魔であると。

嘘を信じ込んでいた俺は皆から雑な扱いを受けたにも関わらず、洗脳が解ける三年前までそれが当然だと思い込んでいた。

そして俺は虐めや迫害といった苦難を乗り越え、逃げる様に「デビルズゲート」を潜った。


「貴様この娘がどうなってもいいのか?」

身体中包帯でグルグル巻きの悪魔は太刀先を青髪の少女に向けた。


真っ暗闇な世界。

そこで俺は剣を携え、敵と対峙している。


「助けて、魔悪!」

少女の悲痛な叫び共に戦闘は開始した。

蛇の様な舌をじゅるりと回し、男は太刀先を少女から俺へと切り替える。


「小癪な」

俺は自身の大剣を縦に振り下ろし、鍔迫り合いを展開した。

ギシギシと軋む音を立てそうな勢いで、剣と太刀は交差している。


その時だった。

男の口から紫色のガス。

俺は間一髪飛び上がってかわし、それが毒霧である事を認識した。

毒にかかれば力関係は逆転する。

あのまま押し切れるはずだった俺は小さく舌打ちした。


「さて、魂を吸い取るぞ」

と男が少女に手を伸ばす。


「野郎ォ!」

俺が剣を投げつけようとした次の瞬間だった。


カンカンカン!


この音は。


もう一度、カンカンカン!


朝からうっさいなもう。

朝が苦手な俺はいつも通りのフライパンを叩く音で目を覚ます。

包帯男との戦闘は夢だったのだ。


此処は魔界「リディア」。

デビルズゲートを潜った人間達で溢れるこの町で、去年家を上の者から貰った俺たちは同居している。

「上の者」というのは無論人間で、リディアを管理している者に他ならない。


それはそうと……、お前はいつまで音を鳴らしてんだ夏南(かなん)


「早く起きなよ!今日は兵藤さんの所に行く日でしょ?」


兵藤はさっき言ってた「上の者」の一人だ。


夏南は俺の布団のシーツをめくった。

クリクリッとした瞼がぼやけた視界に映り込んでくる。

口紅もさしていて、美人ちゃー美人なんだが……。


俺は上半身を起こし大きく伸びをした。

「もうちょっとマシな起こし方ないの?」

と欠伸をする。


「ありません!」と夏南。

ツインテールで青髪な彼女は、三年前からの付き合いだ。

服は白のカーディガンに黒のミニスカートで、先月二十一歳の誕生日を迎えたばかりである。


「はい、朝ご飯!」

と目の前には美味そうな半熟の目玉焼きがパンの上に乗っていた。

夏南は俺の食の好みを知り尽くしている。


「ああ、兵藤。確かそうだったな」

用があったのを思い出し黒の「パワードスーツ」に着替える俺。

パワードスーツは研究者兵藤が開発した鎧で、近未来的な素材で出来てあるが、外観は中世の騎士の鎧そのものである。


部屋の中は四畳半ほどで、木造二階建て。

二人で住むには十分な広さだが家事は任せきりなので、俺が兵藤のとこに出向き「任務」を受け取るのは至極当然と言える。


俺は目玉焼きの乗ったトーストにかぶりつき、外に目をやった。

今日もいい天気だ。

「魔界とは思えないな……」


「何呑気な事言ってんの遅刻するよ?」

と俺の大剣「デモンズソード」を手渡す夏南。


「そうだな、行ってくる」

俺は長さ二メートルの大剣を背負い、家を出た。


今朝の夢は嫌な内容だったなー。

まだ魔界に日が差してない頃の丘が舞台だっけ。

そう、三年前までここ魔界は真っ暗闇だった。

そしてあの敵はかつて倒した大蛇坊。

中々の強さだったが、また夢に出てくるとは。

傍にいた少女は夏南で間違いない。


ったく今日の任務サボりてーんだけど。

俺は夏南から貰った真珠のネックレスに手をやった。


歩道には警備隊が銃を持ってウロウロしている。

元々レッサーデーモンという獣型悪魔の住処だったこの地は今でこそ彼らが現れないとは言え、つい二年前までは無法地帯だったはずだ。

その名残か警備隊も身体中すっぽり武装しており、銃も最新鋭のものを装備していた。

「魔悪のダンナ、これから任務かい?」

警備隊の一人が言った。


任務とは俺たち「兵士(ソルジャー)」に施される仕事の事で、内容は人の護衛から獣の討伐まで様々だ。


「多分な……嫁のキッスがあればもっと早く起きれたのに」

俺は冗談混じりの言葉を口にした。

夏南とは勿論籍を入れてない。


「ハハハ……違いねえ」

警備隊と別れ、俺は兵藤の住む三階建ての家の前に到着した。

兵藤は老人で「リディア」の一切を取り締まっている。

それなりの野望もあるだろう。

(やれやれ……)

俺は心の中でため息をつき、木製のドアを開けた。

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