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麗紗ちゃんは最狂メンヘラ  作者: 吉野かぼす
第四章 プレゼントですよ先輩!
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帰還

「国民のみなさぁ~ん! こーんーにーちーはぁー!」


 国民から受信料をふんだくっている国営テレビ局のニュース番組に、麗紗がガチ恋距離で映っている。


 麗紗はにっこりと人懐っこい笑みで、お茶の間に挨拶を送る。

 もちろん街頭インタビューでも何でもない。


 麗紗が、このニュース番組を占拠したのだ。


「今日から、いえ、今からこの国は私、桜月麗紗のものになりまーす! 以後、お見知りおきを!」


 そして、しっかりとカメラに張り付いてそう高らかに宣言した。

 止めるスタッフは居なかった。


 皆、恐ろしさのあまり動けないのだ。


「なんでこんな事を……お嬢様は一体何を考えて……」

「琥珀ちゃん、何か言った?」


「いやいや何も言ってないよ!」

「本当かぁ~お前?」


「ホントだってば!」


 千歳と耕一郎が、疑いの目で私を見てくる。

 でも本当に心当たりがなかった。


 何でいきなり日本征服なんか始めたんだよ……。


「うふふっ、皆さんのびっくりしている顔が目に浮かびますっ! でも安心して下さい! 私が皆さんを導いてみせます! バラ色の人生にっ!」


「安心できるかボケ! こちとら不安しかねえよ!」

「確かに……」


 即座に渾身のツッコミを入れる耕一郎。

 メンヘラが日本征服とか破滅の未来しか見えない。


 私達どうなっちゃうんだろ……。

 そんな国民の不安というか恐怖に気付かない麗紗はどんどん独裁者の道を突き進んでいく。


「それではまず、私がこの国を治めようと思った理由をお話しようと思いま~す。それは――」

「ねー琥珀みてみてこのペンギン! かわいいでしょ?」

「わあかわいいっ……! ううっ……」


「え!? なんで泣くの琥珀!? そんなにこの子かわいかった!?」


 休み時間の教室で、優紀のかわいいペンギンのストラップを見せられた私は、また日常に戻れた事に感動し涙を流した。


 昨日熊の死体(あんなもの)を見てしまったせいだ、絶対。

 学校は退屈だけど、今はそれがすごく安心する。


 最近ちょっと花のJKの私が体験するには凄まじすぎる出来事が多い気がする。

 あんな惨たらしい物多分警察でも見ないよ! 


 今の私は麗紗に監禁された後みたいにとても心が摩耗していた。

 だからちょっと精神が不安定だった。


「ごめん優紀……ちょっとつらい事があって……でももう大丈夫だから安心し――」

「弥栄あんた大丈夫!? またアイツに何かされたの!?」


「うわっ黒萌さん!? どうしたの急に……」


 涙をハンカチで拭いながらそう言う私に、黒萌がすごい勢いで心配してきた。

 たぶん麗紗絡みだと思ったんだろう。


 だいぶあの件で責任感じてるっぽいからなあこの子……。

 まあ今こうなってるの割と全部麗紗に関わったせいなんだけどね。


 でもそれで黒萌を責める気は無い。

 全部麗紗がメンヘラなのが悪いんだ。


「黒萌、麗紗のせいじゃないから安心して」

「ああよかったぁ~。アイツの所為かと思ってめちゃくちゃ責任感じたわよ~」


「あなた達何があったの? すごく気になるんだけど」 

 

 胸を撫で下ろす黒萌を見て、優紀が不思議そうに首をかしげる。

 後輩が化物みたいに強いせいでとんでもない事になってるだなんて言えるわけがない。


 なんて言い訳しようか迷っていると、優紀はため息をついて言った。


「はあ……いいな~特色者は楽しそうで。私達からすると羨ま――」

「いや全然ちっともそんな事無いよ!?」


「え……あ……なんかごめん……」

「……」


 食い気味に言う私に、優紀はたじろいで目を泳がせた。

 黒萌は複雑そうな顔をして私を見る。


 なんで能力なんか持ってしまったんだろう……。

 私の推しへの愛が強すぎた所為なのかな……。


 狂人しか、持たない力。

 だとすると黒萌も何か狂気を……あまり考えないでおこう。


 そんな黒萌が、しみじみとこう語る。


「でも能力使いたいって気持ちは分からないでもないわ。私ちっちゃい頃は自分がどんな能力持ってるか知らなかったし」


「今もちっちゃ……」

「黒歴史晒すわよ?」


「ごめんもう言わない」


 余計な言葉を口に出そうとした私に黒萌が恐ろしい脅しを掛けてくる。

 情報屋が言うとその台詞超怖いんだよ……。


 うかつに人をからかうもんじゃないな。

 ロクな事にならない。


「もし私が特色者だったらどんな能力になってたんだろ~。ちょっと厨二臭い妄想だけど」

「うーん、なんか能力無効化とか時間停止とかめっちゃ強い能力使ってきそう」


「相葉ってなんか強者感出てるわよね。美人だし」

「ええ~? そんな事無いよぉ~。私はか弱い女の子だよ~」


 優紀が手をひらひらとさせながらそう言う。

 ……自分の事弱いって言う奴ほど強い気がする。


 現に優紀は、カニ娘のガチャを凄い当ててたり男子からの告白を何回も断ったりしている。


 特色者じゃないのに色々と強いんだよな、優紀。


「どうせ持つならかわいい能力がいいな~。ハムスター具現化させるみたいな」

「いやそれペットショップで買ってくればいいじゃん……って先生来たよ」


「うおやばっ。戻ろ」


 そうして話しているうちにすぐに休み時間が終りかけていた。

 席が離れている黒萌が慌てて自分の席に戻る。


 特色者になる、か。

 あの銃を使えば誰でもなれるんだよな。


 狂人になるけど。








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