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麗紗ちゃんは最狂メンヘラ  作者: 吉野かぼす
第三章 ちゃんと私を見て下さいよ先輩!
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乱入者-1

 時は少し遡る。

 千歳と耕一郎は、潮風の中で特色者達と激戦を繰り広げていた。


「壊レろ! “サムソンハンド”ッ!」

「なるほど……右腕にだけ一点集中で身体強化が入る能力ね……レベル6ってとこかしら」


 右近の一撃を片手で受け止めながら、彼の体の使い方から千歳はそう分析する。

 そして受け止めた拳に力を込める。


「顔だけ見れば結構イケメンよあなた。でも私乱暴なのはイヤ♪」

「ギャアアアアアアアッ!!! コイツ……強ィ……」


 千歳の圧倒的な握力から右近は拳を振り払って辛うじて逃れる事に成功する。


 しかし右近は痛みに耐えきれず右手を抑えて地面に蹲った。

 それを見たつみれは額に青筋を何個も浮かべて叫んだ。


「何私の右近を誘惑してんのよ! このクソビッチ!」

「今何て言った?」


「あああああああああ!!! あづっ! 何よこれ……っ!」


 鬼の形相でハリセンを振り下ろそうとするつみれに、千歳は銃でハート型の炎を乱射する。

 無慈悲な炎がつみれを包み込み苛んだ。


 怯むつみれに、千歳は銃口を向けながら笑顔で問う。


「ねえ……今何て言ったの~?」

「はっ! 聞こえなかったの~? 何回でも言ってやるわよ! このクソビッチが!」


「そう。ありがとう。死ね!」

「殺れるもんならやってみなさいよぉ! 右近!」


「もう痛くナいぜ! アヒャハハハハ!!!」

「黙ってなさい」


「グフッ!?」


 千歳は飛び掛かろうとする右近の鳩尾に正拳を叩き込む。

 吐き気のような重い感覚を味わい右近は体を曲げて息を詰まらせた。


 だがその隙に体に纏わりつく炎を消し切ったつみれが千歳にハリセンを振り下ろす。


「隙だらけよ!」

「痛っ……!」


 千歳の頭に衝撃が走り、体勢がぐらつく。

 つみれはそこを皮切りに次々と千歳にハリセンの連撃を入れていく。


「死ね死ね死ね死ね今すぐ死ねっ!」


「うっ……! 琥珀ちゃんの言っていた通りね……ハリセンでホーミングの衝撃波を飛ばす能力……! レベル7ってとこかしら……琥珀ちゃんが苦戦する訳だわ……」


 千歳は衝撃に耐えながら敵の能力の厄介さを再認識する。

 負けじと炎を放つもののハリセンによって防がれてしまう。


「あ~苦戦してんなアイツ。さっさと本気出せよ~」

「よそ見すんじゃ無いわよクソが!」


「おお悪い悪い。ごめんよ~」


 耕一郎はぼーっと千歳の戦況を見ながら、真乃の蹴りをひらりと避ける。


「“魚雷”」

「お前いいかげん変えろよその名前~。さすがの俺でもそこまで酷くは無いぜ……“百姓一気”」


「名前とか役所に登録出来りゃ何でもいいんだよ~。てかお前の能力名も大概じゃね?」


 榎葉が無気力に放った赤い魚雷を、耕一郎は桑一本で全て叩き落した。

 そして空中に高く跳び上がり魚雷の爆発を回避する。


 今回ばかりは、流石の耕一郎も本気を出していた。


「ちっ、相変わらずつえーな……」

「ふん! 馬鹿ね! 空中戦は私の領域よ!」


 攻撃が外れ舌打ちする榎葉に対し、真乃は鼻を鳴らして仕掛けに行く。

 足にバネを発現させ、蹴りを一閃。


「うおっ! びっくりした~」

「はぁ!? 嘘でしょ!?」


 だが真乃と耕一郎では圧倒的なまでのレベルの差があった。

 彼女の蹴りは耕一郎にいとも容易く受け止められてしまう。


「は、離せ!」

「いいぜ」


「え――がぁっ……!」


 耕一郎は真乃の足から手を離し、真乃の体に土袋を振った。

 銃弾のような破裂音が響き真乃を地面に突き落とす。


「ぐうっ……! あのクソ野郎……っ!」

「真乃! 大丈夫か!?」


「隙あり!」

「どわっ!?」


 倒れ伏す真乃に駆け寄る榎葉。

 そんな彼女に向けて耕一郎は容赦なく土袋を投げつける。


 榎葉の体が宙に舞い、近くの木に衝突した。

 真乃に続き榎葉もどさりと倒れる。


「ず、ずりいぞ……」

「喧嘩にズルいもクソもない。いつも言ってただろ?」


「……お前そういうとこだぞ」


 睨む榎葉に、耕一郎はそう言い放つ。

 榎葉はそう言えばこんな奴だったと思い出し、ため息を付いた。


「やっぱり耕一郎ちゃん強いわね……だいぶ卑怯だけど……私も負けてられないわ! “モルアディクト”」


 耕一郎の善戦ぶりを見た千歳は攻撃に耐えながら薬を出し、それをつみれに向けて投げた。

 白い薬剤はつみれに当たると同時に爆発し、四方に濃い煙を発生させた。


「な、何よコレ……! 煙幕!?」

「本当の戦いはここからよ」


 千歳の“モルアディクト”が出せる薬は治療薬の範囲には収まらない。

 ニトログリセリンや塩酸なども出す事が可能なのだ。


 故に彼女は下手な戦闘向きの能力以上に戦う事が出来る。

 ちなみに能力レベルは9だ。


 千歳は銃に赤外線スコープを取り付け、標準を定める。


「あなたの能力はハリセンで出した衝撃波を確実に相手に当てられる能力ってとこでしょう? でも、相手が見えていない状態だとどうなるのかしらね?」


「……このクソ女ッ!」

「もう遅いわよ」


 千歳の推測が図星だったのかつみれは慌てて煙の中から出ようとした。

 しかしその時にはもう既に千歳は引き金を引いていた。


 白い煙幕の中を紅蓮の炎が飛翔する。


「ぎゃあああああああああ!!!」

「焼き焦げなさい、ヒステリック女さん♪」


「グっ……アイツまデ……!?」


 倒れる右近の耳に、煙の中で誰かが倒れる音が聞こえた。

 音の主が誰なのかは火を見るよりも明らかだった。


「おお、やるじゃねえか」

「ふふっ、ありがとう耕一郎ちゃん。それじゃあさっさと早く麗紗ちゃんの所に行くわよ!」


「おう! 急ごうぜ!」


 そうして、二人が麗紗達の下に向かおうとしたその時だった。


「きゃああああああああああああ!!!」


「えっ……麗紗ちゃん!?」

「なんでアイツがあんなとこに……」


 麗紗の悲鳴が、空高くから聞こえてきたのは。

 声がした方向を見ると、麗紗が空高くで背中に糸で象られた羽を出して浮いているのが見えた。


 ――息を絶え絶えにして口から血を垂らしながら。


「ウソ……あっちに行った特色者ってそんなに強いの……?」

「おい千歳……何だよあれ……」


「え?」


 耕一郎が、麗紗が飛んできた方向を指差す。

 指差した先には――。



 琥珀らしき人影が、不敵な笑みを湛えながら空中に悠然と立っていた。








特色者は普通の人間よりも夜目が効きます。

だから二人は夜でも上空の麗紗が見えるのです。

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