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麗紗ちゃんは最狂メンヘラ  作者: 吉野かぼす
第一章 ここから私達の全てが始まったんですよね先輩!
8/213

初でーとその1

 土曜日の朝。

 私は麗紗ちゃんとの待ち合わせ場所である血濡駅に歩いて向かっていた。


 あれからは熊とか漢野みたいな奴に絡まれる事もなく平和に過ごせた。もうあんな風に騒動に巻き込まれるのは無いだろうな。

 それが普通の日常。私はそれを取り戻した!


 ……筈だった。

 でも残念な事に私は普通じゃなかったみたいだ。

 麗紗ちゃんと連絡先を交換したあの後、何度かRAINをしたのだ。


 なぜか不思議なくらい趣味が合って、私の好きなアニメや漫画や小説をあの子は全部知っていた。

 あの子は中々のオタクだった。その話で盛り上がって、凄く楽しかったのは言うまでもない。


 待ち合わせの場所とかも決められたし、そこまでは良かった。本当に。

 でも少しでも返事が遅れると……。


(せーんぱーい?)

(どうしたんですか?)

(何で無視するんですか?)

(何か冷たくないですか?)

(先輩?)

(寝ちゃったんですか?)

(それとも私が鬱陶しくなったんですか?)

(私は先輩にとっていらない存在なんですね)

(生まれてきてごめんなさい)


 ……とまあこんな感じのRAINを送ってくる。

 ちなみに少しでも、というのは十秒もしない間の時間だ。


 これだけでもかなりの恐怖なんだけど、それで起きてるよ、どうしたの大丈夫? 返信遅れちゃってごめんねと送ると……。


(もう先輩~! もうしっかりしてくださいよぉ~)

(心配したんですよ~)

(いくら私達に運命の赤い糸があるからって、私を無視するのは許しませんよ~?)

(それとも先輩は苦しんでいる女の子を見るのが好きなんですか?)

(でしたら私は幾らでも苦しんで差し上げますよ~)

(どうやったら私が苦しんでいる様を先輩にお見せ出来るのでしょうか?)

(あっそうだ!)


 そんな返事が返ってきた。

 最後のあっそうだ! で何を思い付いてしまったのかが本当に怖い。もちろん私はすぐにいやいやそんな事無いよやめて! と送った。そうしたらまあ一応納得してくれた。


 うん。その……何ていうか……。

 麗紗ちゃん、あの子はメンヘラなんだろうな……。はっきり言って人生で一番の恐怖体験だったかもしれない。あれからは出来るだけすぐに返事をするようにしている。


 あと電源切ってたとかお風呂入ってたとかの言い訳の用意ね。

 それでもたまにあの子の気分によってはヘラるのでよ~く気を付けないといけない。


 ……って私はメンヘラな彼女を持ってしまった彼氏か!

 なんか恋人みたいに扱われてる気がするし、境遇は大して変わらないけどさ……。


 ともかく、ここはちゃんと向き合って言わないと!そう決意を固めながら歩いていると、血濡駅の前に着いた。


 駅の前にはもう既に麗紗ちゃんが待っていた。集合時間の10分前には来た筈なんだけど……あの子この辺は偉いなあ。私は慌てて麗紗ちゃんの下に走った。


「おはよ! ごめん待った?」

「おはようございます先輩! 私も今来たところですよぉ。まだ十分前ですし」


 麗紗ちゃんは笑顔でそう言った。RAINの時のようなヘラっている様子はない。う~ん、あの態度はRAIN限定なのかな……。


 ……って何だ今のデートに来た典型的なカップルみたいな会話は!

 いつから私はこの子の彼氏になったんだよ!


「じゃあ行こうか」

「はい!」


 ぎゅっ。

 麗紗ちゃんはそれはもう元気よく返事をすると腕を絡ませて私に引っ付いた。気のせいか腕に柔らかいものが当たっているような気が……。


「あの……麗紗さん?」

「えへへ……このまま行きましょう♪」

「うん……そうだね」


 死ぬ程恥ずかしいけどまあこれ位するよね!

 私がスキンシップ激しい系の女の子と仲良くなった事無いから知らないだけで多分そういう女子は皆こういうのやってるんだと思う! 多分! なんか言うのもアレだし! 別に言うのが怖いとかじゃないよ?


 ともかく、麗紗ちゃんの行動に恐怖を……じゃなくて驚きながらも私達は歩き出した。

「それじゃあチェックアウトして来ますね」

「よろしく凍牙」

 血濡駅の近くのホテルにて。使用人達三人はロビーで佇んでいた。


「はあ……何で俺達がこんな事を……普通デートに遅れたくないからってわざわざ前日に市内のデートで待ち合わせ場所に一番近いホテル借りる奴が居るか? いねーだろ!!! 出張で大事なプレゼンがある会社員かあいつは!?」


「私が止めてなかったら駅前のオフィス買う気だったのよあの子。ほんと恋の力って凄いわね。あ~あ、私もあんな恋愛をしてみたいなぁ~」


「マジかよ!? ていうかあれはただ発想と恋愛感情がぶっ飛んでるだけだろ! 目を覚ませ!」


 麗紗の使用人の一人、鍬田耕一郎(くわたこういちろう)はもう一人の使用人、吉祥千歳(きちじょうちとせ)にそう叫ぶ。


 ホテルのチェックアウトに向かった使用人は識英凍牙(しきえいとうが)という名前だ。


 三人とも昨日の夜から麗紗のデートの準備に付き合わされ……いや、振り回されたと言った方が良いだろう。とにかく彼等は大変だったのである。


「いや~でもあんなに愛される事なんて中々無いわよ? 麗紗ちゃんってばセンパイと話を盛り上げる為にセンパイの好きなアニメとか漫画とか何日も徹夜して全部見たのよ? 大分数も多いのに。確かに色々と薬とかにも頼ってたし麗紗ちゃん本人もそのアニメとかを楽しんでたけど、これは麗紗ちゃんの必死の努力よ。一刻も早く報われて欲しいわ」


「いやそこまでされると逆にこえーよ! 頼むからせめて睡眠時間は確保して欲しいわ! 趣味合わせてくれるのは嬉しいけどよ……」


「耕一郎さん、いつまでも愚痴を言っていても何も始まりませんよ。さて、チェックアウト終わったので行きましょうか」


「ああ分かったよ。ここでそんな事言われてもな……ああ~ここからが本当の地獄だぜ……」

「まあ頑張りましょうよ……お嬢様のご命令ですから」

「はあ……どうしたらお前みたいにモチベが保てるのか知りてえよ……」


「耕一郎ちゃん忠誠心の欠片も無いものね。それも流石にどうかと思うわ」

「うるせえ! んな事言ってねえでさっさとアイツらの所に行くぞ!」

「は~い」

「そうですね」


ホテルを出て麗紗達の後を追う三人。

そう、彼等の激務は始まったばかりなのである……。








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