海でーとその3
あ……確かに……。
耕一郎も私達のいる所からだいぶ離れた所で泳いでいる。
そしてはぁはぁと息を荒げている麗紗。
これは……絶対何かされる奴じゃん!
私がそう思った時には、もう既に麗紗は私に飛びかかっていた。
「はぁはぁ……これで水着の琥珀先輩を独り占めできますっ! ふへへ……琥珀先輩の感触を私にたっぷりと堪能させてくださいぃ!」
「うわああああああ! 麗紗の理性が崩壊したぁーっ! 元からそんなに無いけど!」
ヨダレを垂らしながら私の身体に手を回してぎゅっと抱きしめてくる麗紗。
甘い匂いのする頭をすりすりと私の胸にこすりつけてくる。
生暖かいぬるっとした肌の感触が水着越しに麗紗から伝わってきた。
いつもは服を着てるから肌を直に感じる事はないけど、今は薄い布一枚しかないのだ。
私は麗紗の感触をより濃密に、そして繊細に感じていた。そのせいかなんだか頭がクラクラする。
「ちょ、ちょっと麗紗……離れて……」
「嫌です……もっと……もっと堪能させてください……ふふふっ……骨の髄まで琥珀先輩を味わわないと気が済まないんです……はぁはぁ……!」
「も、もう……! 駄目だってぇ……」
私が止めても麗紗は全く私から離れようとしない。
それどころか私をもっと強く抱きしめてくる。
完全に暴走してる!
これは不味い……なんか変な気分になってきたし!
どうやって止めたらいいんだ……ああ、頭が働いてくれない……。
「こはくせんぱい……いいにおい……ふへへ……」
「や、やめて! 私のにおい嗅がないで麗紗! くすぐったいってぇ……」
麗紗が目をとろんとさせながら私のにおいをくんかくんかと嗅いできた。麗紗の息が私の肌をまさぐってくる。
ど、どんどん行動がエスカレートしてない!?
このままじゃ……っ! でも全然離れてくれないっ!
私がそう焦っていると、麗紗が興奮の絶頂を迎えた顔で――。
「こはくせんぱぁい……おいしそう……も、もうがまんできない……いただきまぁす……」
「――っ!?」
私の肌を、ぺろりと舐めた。
全身の神経が逆立ち、ぞわっと寒気が駆け巡る。
これ以上はもうアウトだ! ていうか既にアウトだけど!
何としてでも麗紗を引き剥がさないと――!
私の貞操が危ない!
ていうか何でこんな事に……!
「離れて麗紗! そらあっ!」
「ぺろぺろ……ちょっとしょっぱ――きゃっ!?」
私は八重染琥珀で全身に勢いを付け、麗紗を引き剥がそうとした。
だがそれでも麗紗は引っ付いたままだ。
「嘘でしょ!? あんっ! 今舐めないで! 制御があっ……」
「びっくりさせないでくらさいよぉ……ぺろぺろ……おいし――ひゃあっ!?」
麗紗に舐められた刺激で八重染琥珀の制御が出来なくなってしまった。
八重染琥珀の効果が切れ、私達は海の中にどぼんと落ちた。
「んぶっ……ぷはっ! おっ! 剥がれた……って麗紗!?」
「ぶくぶくぶく……」
すると麗紗はようやく私を開放した。
とまあ、そこまでは良かったんだけど麗紗が海の中で溺れてしまっている。
あんだけ強いのに泳げないんかい!
さっきまでの出来事も忘れて私は慌てて麗紗を海の中から引き揚げた。
「ちょっと大丈夫!? ここ腰ぐらいの高さしか無いよ!?」
「ぷはっ……こはくせんぱぁい……ぎゅーっ」
「……オラァッ!」
「むー!」
引き揚げた瞬間、麗紗は再び懲りずに抱き着いてきたので私はもう一度自分の身体ごと麗紗を海の中に漬けた。
麗紗はまた溺れて私から手を放した。
全く……頭の中お花畑すぎる……。
私はすこし間を置いてから麗紗を救出した。
「これで頭は冷えた?」
「ご、ごめんなさい……」
私が首ねっこを掴みながら麗紗にそう聞くと、麗紗は震え声で謝った。
麗紗は水に弱いのか……これはいい事を知った。
今度暴走した時には水を使おう。
そんな事を考えていると、麗紗が涙目で顔を紅潮させながらこう言った。
「本当にすみませんでした琥珀先輩……思わず興奮してあんなはしたない事を……」
「はあ……びっくりしたよ全く……特に舐められた時は」
「わ、私が言うのも何ですけど掘り返さないでください!」
「うん、本当にあなたが言える事じゃないよそれは」
私の嫌味に麗紗はさっきまで自分がしていた事を思い出して顔をさらに赤くした。
一応反省してるかな……でも今ここで私が何か言った所でどうせまた暴走するだろう。
麗紗とはそういう生き物だ。
自信を持って言える。私はもう達観した。
「もう次からは絶対やらないでね」
「ゆ、許してくれるんですか琥珀先輩……ありがとうございますっ!」
そう言って麗紗は私に抱き着いた。
さっき私なんて言ったっけ……?
「はいはい引っ付かないの。それより早く泳ぐよ……って麗紗あなた泳げないじゃん……」
「あっ、大丈夫ですよ! 別荘の中に浮き輪がありますから! 置いてきちゃったので取ってきますね」
「うん何でそんな大事な物忘れてきちゃったの?」
「琥珀先輩の水着姿でいっぱいいっぱいだったので。てへ☆」
「てへ☆、じゃないんだよ……」
舌をペロリと出して別荘に戻る麗紗。
何であんなに私の事を脳内に満たせられるのかな……。
ふと私は麗紗にほぼ素肌で抱きしめられた感覚を思い出して身体が熱くなった。




