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麗紗ちゃんは最狂メンヘラ  作者: 吉野かぼす
第三章 ちゃんと私を見て下さいよ先輩!
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特色者

「特色者が……狂人……」

「そうだ」


 私の呟きに、叔父さんははっきりとそう答える。


「……確かに全部辻褄は合いますが……」

「嘘、でしょ……そんな……」


 特色者は、全員狂人。

 という事は、もちろん私も狂人。


 嫌だ……いやだいやだいやだいやだ。

 そんな事、認められるか。あってたまるか。


 想像を遥かに超える重い真相に私は頭を抱えた。

 まるで私に罰を与えるかのように、次々と根拠が出されていく。


「特色者は、狂えば狂う程能力が強くなる。その一番の証拠は、桜月麗紗。彼女だ。彼女の恋色紗織が

あそこまで強いのはその為だ。彼女が狂っているのはよく知っているだろう?」


「叔父さん、私は精神力の強い人間が特色者だと考えていたのですが……」


「うーん、そこは私も考えたが……その場合麗紗という反例で否定されてしまうんだ。彼女は精神力という点ではあまりにか弱すぎる。だというのに強い。その説はおそらく間違いだ」


「ああ……あああ……」


 いやだ。

 嘘だ……嘘だそんなの……。


「識英凍牙もそうだ。彼は人格が変わると能力の強さが跳ね上がる。その能力の向上は狂気に比例していると言えるだろう。そこで試しに作ったのがこの染色解放銃だ」


 叔父さんは銃をポケットから取り出して見せる。


「染色解放銃には、私の能力……“メディカトランス”で作った精神を変化させる薬品を弾丸としている。これで秘密裏に犯罪者を対象として人体実験を行った所、弾丸を食らった人間は特色者となった……説は立証だ」


「なるほど。そういう事ですか……」

「そんな……そんなぁっ……!」


 もう完全に特色者が狂人だと証明されてしまった。

 これが真実なのか。


 じゃあ私の八重染琥珀も……。


「いやああああぁああああああぁあああああ!!!」


「取り乱すのも無理もない。だが本当の問題はここからだ。この事実が表に出た時、普通の人間が特色者を恐れ排斥を行う事。もしそれが起きれば……というのは言うまでもないな」


「桜月財閥……本当に何てことを……」

「……一体どこまで私達は追い詰められてるのよ!」


 私は叔父さんの話を聞きながら神を呪った。

 何で……こんな事になってるの? 


 意味が分からない。

 私が何をした! 


 叔父さんは頭を掻き毟る私に落ち着いた声で言う。


「重い現実だろう? だから私は知らない方がいいと言ったんだ。でも、知ろうとするのは大事な事だ。それに、私が言った説にも反例がある可能性は十分にありうる。説というのはそういうものだ。あまり執着してはいけないよ」


「……叔父さんは、それで冷静さを保っているんですね……」


「それはあるね。まあ、私の場合人より変わっているのは十分承知していたって所もあるけどね。狂人といっても、一口には言えないし」


「確かに……それにしても叔父さんは強いですね」

「そうでもないよ~。上層部には逆らえなかったし」


 叔父さんは自嘲気味に笑った。

 大人って色々大変なんだな。


 ていうか千歳も全然動じてないな。

 さすがは大人。


 私が少し普段の調子を取り戻してそんな事を考えていると、千歳が不思議そうな顔で叔父さんに聞いた。


「……それにしても財閥の人間が琥珀ちゃんを襲ってきたんでしょうか。大方、銃の実験の為なんでしょうけど……何でそこで琥珀ちゃんを対抗馬に選んだのかが気になるんですよね」


「うーん、能力レベルの高さとかで選んだんじゃないか? 君レベルいくつ?」

「戸籍に登録されている数値は6です。最近はレベル8とかと渡り合えていますけど……」


「登録上は6か……微妙な数字だな」

「数値を見て狙ったんだとしたらそこで矛盾が生じるんですよ」


「微妙って何ですか微妙って」


 人の能力に向かって微妙とは何だ。

 でも、狙ってきた理由が数値でも無いんなら――。


 どういう目的があったんだろう。

 私をターゲットにする事の、どこに利点があったんだろう。


「これだと情報が少なすぎるわ……とりあえず琥珀ちゃん、襲われても対応出来るように能力を鍛えるのよ。私も撃退出来る道具を用意しておくから」


「わ、分かった……」

「確かに、それが一番手っ取り早いかもしれないな」


 私は千歳の提案に頷いた。

 科学者にしては対策が脳筋すぎるような気もするけど……。


「さて……叔父さん、あと他に情報はありますか?」

「後は専門的な事だな。琥珀君にはもう伝える事は無いよ」


「分かりました……色々な事を教えて頂きありがとうございます」

「役に立てたのなら嬉しいよ……何かあったら千歳を通していつでも言ってくれ。私で良ければ相談に乗ろう」


「ありがとうございます……! では……」


 私は叔父さんにお礼を言って実験室を出た。

 特色者が、狂人かあ……。


 廊下の壁に寄りかかりながら私は思わずため息をついた。

 それはもし麗紗が暴走した時、私はどうする事も出来ない事を示している。


 おまけに私は狂人の烙印を押されてしまった。

 でも、そもそも麗紗は私が暴走しないようにまた言葉で落ち着かせればいい。


 あと、狂人だから何だ。

 私はそれでも今まで普通に生きてきた。誰にも文句は言わせない! 


「こうしてる場合じゃない……八重染琥珀を鍛えないと……」


 私はため息をかき消して、歩き出した。








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