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麗紗ちゃんは最狂メンヘラ  作者: 吉野かぼす
第三章 ちゃんと私を見て下さいよ先輩!
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真実

 千歳は急いで画面をタップして電話に出る。


「はい、千歳です。叔父さん、どうしたんですか!?」


『ちょっと研究の事で色々と話したい事がある。事情があって電話口や私の研究室では話せないからできれば君の研究室で話したいんだが……』


「噂をすれば何とやらですね。私も今叔父さんの事について話していた所です。銃の使用を目の当たりにした可愛い女の子と一緒にね」


 女の子って……私の事か。

 絶対その可愛いって一言はいらないでしょ……。


 ていうか千歳の叔父さんも同じ目的みたいだ。

 本当にすごいタイミングで来たな。


『なっ……! 本当か!? 思ったより動きが早かったな……話というのは銃の事もある。いつなら話せる?』


「ちょっと待ってください」


 千歳はそこで一旦話すのを止め、麗紗に聞いた。


「麗紗ちゃん、今から叔父さんをここに呼ぶけどいいかしら?」

「何のおかまいもできないけど、それでもいいならね」


「よし。ありがとう麗紗ちゃん。そんな訳で今来たらどうです?」

『分かった。すぐに行く。その可愛い女の子は引き留めておいてくれ。その子にも事情を説明しないとな』


「ええ。あと言っておきますが、その子彼女居ますからね」

『それは尊い。またね』


 そうして通話が切れた。

 今からここにあの銃を作ったかもしれない人が来るのか……。


 ていうか彼女って何だよ千歳!

 尊いって何だよ千歳の叔父さん!


 大分クセが強そうだな。

 さすが千歳を屋敷に送り込んだ人だ。


 千歳の性別が変わった事についてはどう思ってるんだろう。

 あんまり気にしてなさそうだけど。


「それはそうと琥珀先輩、もうすぐ凍牙の怪我も治りそうなんですよ」

「あっ、確かにもうすぐ一週間経つもんね」


 麗紗が私の方を振り向いてそう言う。

 もう凍牙が動けなくなって5日くらい経ったな。


 デートとかですっかり忘れてたけど。

 あいつ影薄いな。


「来週の土日……私の島に泳ぎに行きませんか?」

「あ~あのこはく島?」


「そうです。名前はもう変えましたけど」

「変えるの早っ。うーん、久々に泳ぎたい気もするし行こうかな」


「やったあ~!! 琥珀先輩といっしょに泳げる~っ!!!」


 麗紗が私の返事に飛び跳ねて喜んだ。

 初めて遊びに行った時もこの位喜んでたな。


 どんだけこの子は私の事が好きなんだ……。


「琥珀先輩! 私の島には別荘もあるんですよ! なんなら泊まり込みでどうですか!?」

「え? あ? マジで?」


 麗紗がぴょんぴょん跳ねながら私にそう言ってくる。

 島持ってる位だからそりゃ別荘もあるよね。


 にしても泊まり込みかぁ……。

 色々準備とか大変そうだな……。


 そう迷っていると、麗紗が私の思考を読んで。


「準備とかは凍牙と耕一郎が全部やってくれますよ。琥珀先輩はただ楽しむ事だけを考えてくれればいいんです!」


「本当? ならお言葉に甘えて泊まろうかな」

「きゃーっ!! やったあー!!! 琥珀先輩だいすきっ!」


「うわっ!? ちょ!?」


 麗紗がいつもの如く私に飛び付いてきた。

 私は抱き枕じゃないんだぞ麗紗……。


「琥珀ちゃん……それのどこが付き合ってないって言えるのよ?」

「こ、これは不可抗力でしょう!?」


 その様子を見た千歳が私にそう突っ込んでくる。

 向こうから勝手にやってきてるだけだからね!? 


 何を勘違いしているんだよ……全く。

 抵抗しない私も私なんだけどね。


 そう心の中でちょっと反省していると、今度は麗紗がほっぺを膨らませてぷりぷりと私に怒った。


「もう! 琥珀先輩のヘタレ!」

「いやそういう問題じゃないんだけど」


 いやヘタレとかじゃなくて。

 こうやって流されてる私はヘタレなのかもしれないが。


 そんな風に喋っていると、千歳の叔父さんが屋敷の玄関にやってきた。

 千歳の叔父さんだと長いから叔父さんでいいかな。


「迎えに行ってくるわ。二人は待っててね」

「うん」

「分かったわ」


 千歳は叔父さんを迎えに玄関に行き、しばらくして叔父さんを研究室に連れて来た。


「お邪魔しまーす……ここが千歳のラボか。整理されているじゃないか」

「叔父さんは散らかし過ぎなんですよ」 


 叔父さんは束ねた白髪を揺らしながらきょろきょろと物珍しそうに研究室を見回した。

 銀縁眼鏡を掛けていていかにも頭が良さそうなイケメンだ。


 歳は三十代前半くらいかな。

 絵に描いたような科学者って感じだ。


「ま、それは置いといて……この子が銃の行使を見たっていう可愛い女の子かい?」

「そうです。本当に何があったのか事情を説明してください」


「ああ。もちろんだ。だがその前に……部外者を巻き込む訳にはいかないんだ。すまないが君には席を外してもらいたい」


「……それもそうですね。分かりました」


 叔父さんに言われ研究室を出ていく麗紗。

 まあ、確かに部外者と言えば部外者だ。


 でも席を外させたのはやっぱり桜月財閥が絡んでいるから、だろう。

 これで桜月財閥が何か仕出かしているのは決まったな。


 麗紗が出ていくのを見送ると、叔父さんは私の方を振り返って爽やかに言う。


「さてと……自己紹介がまだだったね。私の名前は吉祥金雀。一応科学者だ」

「私は弥栄琥珀っていいます。よろしくお願いします」


「ああ、こちらこそよろしくね。では早速本題に入ろう。まず君が見た銃の事だ」


 叔父さんは爽やかな表情から至って真剣な表情に切り替え、説明を始める。


「あの銃って一体何なんですか?」

「あれは私が発明したものだ。名前は染色解放銃ダイングアンロックガンと名付けた」


「染色解放銃……」


 私はあの銃の名前を反芻する。

 結構率直なネーミングだな。


「染色解放銃は撃った人間を狂人にする代わりに特色者にする効果がある……それは君自身が体験した筈だ」


「はい……」 

「何であんな物が出てきてしまったんです? 安全性の欠片も無いでしょうに」


「……桜月財閥が介入して私からあれを無理矢理奪い取ったんだ……桜月麗紗の対抗策にと……」


「えっ……」

「対抗って……そんな事必要ないでしょう!? 何で……」


 叔父さんの説明に言葉を失う私とは対照的に千歳の声には怒りが含まれていた。


 叔父さんは静かに説明を続ける。


「……いずれ国家や世界にその牙を剥く可能性がある化け物だと、上層部はお考えになったようだ。下手に動く方が余程危ないというのに……」


「そんな……」

「これだから冷静さを失った人間は……」 


 麗紗はそんな理由もなく人を傷つける子じゃないと私は思ってる。

 だから一緒に遊びに行ってる。先輩として、面目を保とうとしてる。


 それなのに……大人達は……。


「だが一番の問題は財閥が銃を持って暴走する事じゃない。それで特色者の本質が明るみに出るのが不味いんだ」


「……えっ?」

「……どういう事ですか?」


 そう聞く私達に、叔父さんは真剣な表情を更に険しくして私達に問う。


「この事実は、間違いなく君達は知らない方が良い。科学者である千歳はまだしも、狙われたという事以外何の関係も無い君は特にだ。それだけ重い事実なんだ。それでも知りたいかい?」


「私は知りたいと思いますが……」

「どうしよう……」


 特色者の真相知らない方がいい。

 大人である叔父さんが言うからには、高校生の私にとってはその重さに耐えられないかもしれない。


 でも……ここで真相を聞かない事は、現実から逃げる事でもある。


 それに、もし麗紗が暴走してしまった時に抑える方法もそこから掴めるかもしれない。


 私は覚悟を決め、叔父さんに頼んだ。


「……真相を、知りたいです」

「……分かった。本当に良いんだね?」


 叔父さんはそう念を押して、少し間を置いてから言い放った。


 ずっと謎だった、真実を。


「特色者になる条件は、狂人になる事。それが特色者の本質だ」







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