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麗紗ちゃんは最狂メンヘラ  作者: 吉野かぼす
第三章 ちゃんと私を見て下さいよ先輩!
63/213

遊園地でーとその4

 観覧車の前に辿り着いた私達は早速列に並んだ。


「十分待ち……ここは全然待ちませんね」

「そうだね……まあ観覧車は普通なんだろうな……」


 この遊園地の最大のウリは凄い加速のジェットコースターと精巧に作られたリアルなお化け屋敷。


 他のアトラクションは大した事なく精々並んでも一時間くらいだ。


 それでも田舎の遊園地にしては滅茶苦茶頑張ってると思う。


「次の方どうぞ~」

「はーい」


 程なくして私達の番が回ってきた。

 職員の人が観覧車の扉を開け、私達はそこに入り椅子に向かい合って座った。


 座っていても若干浮遊感を感じる。

 不思議な感覚だ。


「おお……凄いです……」

「まあそんなに乗る機会無いもんね」


「そうですね……私実は観覧車乗るの初めてなんです。今まで乗った事が無くて……だから凄くドキドキしてます」


「へえ……だから乗りたかったんだね。そういえば私が観覧車最初に乗ったのはいつだったっけな……」


「でもそのドキドキの100%は琥珀先輩なんですけどねっ!」


「えっ……ってうおっ!?」


 麗紗はそう言い放ってまた私に抱き着いてきた。

 どんだけ私にくっつく気なんだこの子。


「麗紗……。暑いから離れて……」

「ええっ! 酷いですよ琥珀先輩! そんな理由で私を引き剥がそうと言うんですか!? 私恋人なのに!」


「えっ……」

「ど、どうしたんですか琥珀先輩……私はただ当たり前の事を言ったまでですよ?」


 ……今この子なんて言った?

 恋人? いつの間にそんな勘違いを……。


 そういえば麗紗は今日遊びに行くのをめっちゃデートって強調してたな。

 浮気とか言ってたし……つまり……。


 また恋人扱いされてるっ!

 ほんと懲りないなこの子!


「ねえ麗紗……前と同じ事言うけどさ……私いつ麗紗の恋人になったの……?」


「えっ……普通何回もデートしてたらいつの間に付き合っているものではないんですか……? もしかして私また勘違いをしてしまったんですか!?」


「そうだよ……」

「うわあああああああん! ひどい! 今度はちゃんと千歳に聞いたのに!」


「ええ……」


 泣いちゃったよ麗紗……。

 どうせ多分千歳に聞いた事を麗紗が曲解したんだろう。


 千歳なら一応常識はあるはず。

 でも最初殴り掛かって……いやここは深く考えないでおこう。


 私が麗紗の勘違いの原因を考えていると、麗紗はふと泣くのを止めて――。


 ――私の頭をぐいっと引っ張り、素早く唇を押し付けてきた。


「っ!?」

「私を勘違いさせた罰です。甘んじて受け入れてください……っ!」


 麗紗は驚く私に怒ったような表情でそう言った。

 でもその表情は一瞬で崩れ、ひどく恥ずかしそうで、泣きそうな表情に変わった。


 ……駄目だ、思考が追い付かない。

 本人も恥ずかしそうにしてるけど恥ずかしいのはこっちの方だよ!? 


 しかも何か私が悪いみたいな事に……。

 ていうかまだ唇に柔らかい感触が残って……。


 あああああああああ! 今どういう状況なんだよ!

 お互い顔も見れない。普通の友達同士のお出かけじゃなかったのかーっ! 


 誰かこの顔の熱と空気をどうにかして欲しい。

 そんな事を切に願っていると、私は観覧車がいつの間にか頂上に昇っていた事に気付いた。


「……おっ……ここ頂上じゃん……すごい景色……」

「……ほんと、ですね……」


 さっきまでの出来事も忘れて私達は頂上の風景に見惚れた。


 傾いてきている太陽が、澄んだ海をキラキラと光り輝かせている。


 人の手が掛かっていない自然が生み出した絶景がそこにあった。


 下を向けば歩いていた赤レンガの街並みや花壇、風車が小さく見える。


「すごい……」

「まるで琥珀先輩みたいに綺麗ですね。ふふっ」


「あのね――」

「――っ!」

「んっ!?」


 麗紗がそう冗談めかして言うと、また唇を重ねてきた。


 しっとりとした感覚が再び唇に伝わってくる。

 麗紗は唇を離すと、また顔を紅潮させて言う。


「すみません……ちょっと……景色に感動しちゃって、つい……」

「つい、じゃないよ……」


 もうただでさえ恥ずかしいのにそれを上乗せしてどうするのよ……。

 恥ずかしさで頭が爆発しそう……。


 観覧車が下に着くまでずっと私達はお互いの顔を見れなかった。

 観覧車から降りた私達は、遊園地を出て駅から電車に乗って血濡駅に戻った。


 夕日をバックに私達は横に並んで一緒に帰路を辿る。


「琥珀先輩……あの……その……わたし……うぅ……」

「…………」


 でもその間に会話は無かった。

 だって恥ずかしすぎるから……!


 麗紗がごにょごにょと何かを呟くけれど、声が小さくてよく聞こえなかった。


 全く、色々とどうしてくれるんだよ……。


 そんな風に歩いていると、分かれ道が見えてきた。

 右が麗紗の屋敷の方向で、左が私の家の方向に進む道だ。


 つまり私達はここで別れる事になる。

 私は恥ずかしい気持ちを抑え、麗紗の方を見て言う。


「……こ、ここでさよならだね……」

「うぁっ!? ……はっ! そ、そうですね! それじゃあまた……」


「うん……じゃあね」


 私達の挨拶は凄くカタコトになってしまう。

 そこで今日のデートは終わった。


 筈だった。


「こ、琥珀先輩!」

「え?」


 私が歩き始めたその時、麗紗から突然声を掛けられた。


 何だろうと思っていると。


「今日……琥珀先輩のお蔭でとっても楽しかったです! ま、また私と……で、デートして下さいねっ! ではっ!」


 麗紗は大声で、時々言葉を詰まらせつつもとびきりの笑顔でそう言って走り去っていった。


 急に何かと思ったら……全く。


「私も……大変だったけど楽しかったよ、麗紗」


 麗紗に聞こえない音量で、私はぽつりと呟く。

 私があの子を邪険に出来ないのは、ああいう所があるからかもしれない。


 まあ、また付き合ってあげよう。

 大変だったけどね。


「ふう……それはそれとしてやっと家に帰れるーっ!」


 でも今日はめっちゃ疲れた。

 明日が休みで良かったよ本当に……。


 もう今日は勉強とかする気になれないな……。

 帰ったら寝よ。


 などと思っていたのがいけなかったんだろうか。

 前の方から、二人組の男女がこちらに近付いてくる。


 男の方は、マッシュルームのような髪型で、割と整った顔にニヤニヤと薄笑いを浮かべている。


 女の方は可愛い感じの顔で、髪をツーサイドアップにしており、優しそうな雰囲気を漂わせている。


 どちらも黒髪で、一般人である事を示していた。 


 リア充か……爆発してくれ。

 兄妹とかかもしれないけどね。


 ていうか何で私の方に寄ってくるんだ? 

 何となく逃げようと早歩きしていると。


「おお~やっと見つけたぜターゲットのJK!」

「はあ……見つけられたのはいいけどなんでこの子と戦わないといけないの……」


「しょうがないだろ~。そういう指示なんだから~」


 男はそうヘラヘラと言いながら懐から不思議な銃を取り出す。


 それは、ポップで派手な色合いをしていた。

 おもちゃか何か? ていうかターゲット? 戦う? 


「つみれ~文句言ってる場合じゃねーだろ? 時間は一刻を争うって羽田さんが言ってただろ?」


「……しょうがないか……ごめんね。ちょっと大人の仕事に協力してもらうわ」


「……何なのあんた達」


 女の方が申し訳なさそうに銃を取り出す。

 そして二人は銃の撃鉄を引く。


『『安定解除(セーフティアンロック)』』


 すると無機質な機械音声が流れ、ズレた電子音が鳴り響いた。まるで特撮の変身アイテムのようだ。


 二人は銃を自身に向け、ニヤリと笑って言い放つ。


「「変身!」」


 二人が同時に引き金を引くと、色々な色が混ざった得体の知れないペンキのような液体が銃口から発射された。


 その液体は二人の体に浸透し、すぐに消え、その次の瞬間二人の髪の毛に何筋かメッシュが入った。


 男は黄色のメッシュ、女には白のメッシュが。

 何だこれ……ただのカラーリング剤には見えない。


 あの銃はどういう道具なんだろう?

 そう疑問に思っていると。


「「あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは」」


 二人が――狂ったように笑い始めた。









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― 新着の感想 ―
[良い点] 百合が尊いのです… もうね、麗紗はずっとキスしてれば琥珀堕ちると思うんだけど。
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