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麗紗ちゃんは最狂メンヘラ  作者: 吉野かぼす
第二章 もう絶対に離しませんからね、先輩!
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拳銃

「いや~凄い力だ……これは……! 国家……いや世界中が束になっても勝てないだろうね……!」


 青白いディスプレイに映し出された映像を見ながら、吉祥金雀きちじょうえにしは子供のように目を輝かせた。


 その映像は、麗紗が天衣を蹂躙している映像。

 金雀はそれを何回も巻き戻し分析する。


「おそらく能力を使わずとも識英天衣を圧倒する事が可能だと考えられる……彼女に太刀打ちできる特色者はこの世に存在しないだろうね……本気で能力を出せば太陽系をも破壊してしまうかもしれない! それが十分あり得るだけに本当に恐ろしいよ、全く……!」


 金雀は狂ったような笑みを浮かべながらまた映像を巻き戻す。

 彼が何故この映像を入手出来たのかと言うと、桜月科学研究施設の所長という立場に居る為、そういったデータが自然と流れてくるからだ。


 因みにこの映像は異変を察知した警備ドローンが記録したものである。

 この映像は桜月財閥によって隠蔽され、その財閥の最上層部のみに映像が渡った。


 なお、映像を見た者はあまりのおぞましさにもれなく嘔吐するか失神するかのどちらかであった。

 その中で唯一平常を保つどころか何回もリピートできてしまうのが金雀である。


 彼の科学者としての探求心と好奇心が、それを可能にさせたのだ。


「ふう……いつ暴走するか分からないから至急対策を練ろと上層部の連中には言われたものの……そもそも対策なんて不可能じゃないか……千歳も私と同じ見解だし、私にはどうしようもないな~」


 金雀は自分よりも優秀な甥……もとい姪の顔を脳裏に思い浮かべる。

 叔父の金雀としては麗紗の屋敷に居る間に可愛い甥の身に何が起こったのか気になる所だった。


 だがあまり探ると殺されかねないので金雀はあえて触れない事にしている。


「ま、千歳が送ってくれた麗紗ちゃんのデータのお蔭でようやく能力の仕組みが解明出来たからいいかな……私の長年の謎が解決された以上もう世界が滅びてもいいかもしれない!」


 金雀は麗紗を止める事を半ば諦めていた。

 世界最高の科学力を持ってしても止められない。

 それが、麗紗という存在。


「と私は思うんだけどね……上層部は私の見解を言っても聞かないし……やっぱりここはちょっとお茶を濁しておくかね~」


 金雀はそうぼやきながら机の引き出しを開け、ポップで派手な色合いの一丁の“拳銃”を取り出す。


 “拳銃”とは言ってもそれは拳銃の形を象っているだけで、人を殺傷する機能は何一つ備えられていない。


「まだ試作段階だが……これなら上層部も一応納得してくれるに違いない。もしかしたら本当にあの子を止める手段となるかもしれないし」


 金雀は銃を見つめながらニヤニヤと笑う。

 彼にとって世界を救うなどという事は興味の外だったが、科学を進歩させる事はこの上なく楽しかった。


「これを完成させるにはもっと多くの特色者のデータが必要だ……千歳に協力を頼もう。もちろん上層部の連中にも手伝ってもらうけどね……」


 彼にはその銃を完成させられる自信があった。

 今はまだ完成に程遠くても。


 しかし、彼は非常に賢かったが他の人間は実に愚かだった。


 金雀の実験室の扉が強引に開かれ、特色者の男達が何人も入って来た。


「な、何だ!?」

「上からの命令だ。その銃の設計図と銃本体を渡せ」


「何を言っている!? これはまだ完成していないんだ! 安全性が全く……」

「いいから渡せ。さもなくば……」


 男達が、それぞれ能力を行使しようと身構える。

 金雀は溜息をつきながら両手を上げ、言った。


「お前達……この手際の良さ……私を監視していたね?」

「…………」


 黙る男達。

 上層部は、もし仮に金雀が重大な責任に怯えて逃亡してもいつでも連れ戻せるように対策していたのだ。


「まあそれはいいとして……これの代償も知っている筈だ。何故完成を待たないんだ? あの子がいつか世界を滅ぼす前に自滅する気なのか!?」


「時は一刻を争う。手段を選んでいる場合ではない、との事だ」

「そうか……馬鹿め」


「どう思おうが勝手だ。早くこちらに渡せ」

「はいはい……」


「よし、それでいい」


 金雀は呆れながらも銃と弾薬と設計図を男達の代表格に手渡した。

 代表格はそれを受け取ると大切に持っていた鞄にしまい、金雀に言う。


「ご協力感謝する。資金面であれば幾らでも支援しよう。いずれは、完成品が出来上がるのだろう? 貴殿の活躍に期待している。これは上層部からのお言葉だ。では」


「何が協力だ……!」


 金雀は去っていく男達の背中を忌々しく睨みながら拳を握り締めた。


「本当に馬鹿なのか……! 上層部は……!」


 人間は、追い込まれると手段を選ばなくなる。

 破滅の気配が迫っているのを、金雀は間近に感じたのであった。







これで二章は終わりです。

読んで下さり有難うございます! 

今章はちょっとメンヘラが控えめでした。クールダウン章でしたね。

お詫びと言っては何ですかここからどんどん上げていきますのでお付き合いして頂けると幸いです。

三章から、結構色々と真実が明かされます。


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