誕生その3
「あ~出てきたはいいけど何しよっかなぁ~」
「…………」
水色の不気味なオーラを身に纏い薄笑いを浮かべる峠。
天衣はそのあまりの異様さに動けずにいた。
(何だ……? 能力が暴走しているのか? だとしたら本気を出す必要があるな……だがここまでの力とは……レベル10の域じゃないか……)
じっと天衣が様子を窺っていると、峠は突然こう言った。
「いいや何でもいい! 今のうちにハシャギまくってやるぜー!」
「ぬあっ!?」
そして一瞬で屋上を覆い尽くす程の巨大な氷山が現れた。
天衣は慌てて床を蹴って跳ぶも右足が氷に侵されてしまう。
「なんて力――」
「そぉい!」
「があっ!?」
峠は天衣に驚く間も持たせず氷山をひっくり返して天衣にぶつけた。
圧倒的な質量の前に天衣はどうする事もできず隣のビルに氷山もろとも叩き付けられた。
ビルが卵の殻のように割れ、天衣はそこに磔になり、氷山が地面に落下して突き刺さる。
峠はその様子を見てゲラゲラと笑った。
「ぎゃはははは! 最近のビル脆すぎだろぉ! 震度1でも壊れんじゃねーの!? まるでガキが作った砂の城みてーだなぁ! いや、そっちのが丈夫かぁ! 間違えてごめんなガキ共!」
「戯けた事を言うな。子供が大人に勝つ事などある筈もない。もちろん貴様もだ!」
天衣はビルの壁を蹴って宙に浮かび、峠に踵落としを食らわせる。
峠の頭に踵が直撃し――。
「オレは踵落としよかダルマ落としの方が好きだぜ。上手いこと凍らせて固めりゃ絶対勝てるからな。お前とはやってやんねーけど!」
「のわっ!」
天衣は突如出現した巨大な氷の惑星に弾き飛ばされた。
(こいつはどういう思考回路をしているんだ……いやそれよりも力では確実に負けている……また攻撃パターンを見破る必要があるな。この調子だと何回もループさせられる事になりそうだ……全く、何故私がこんな事を……)
鬱々とした気分になりつつも天衣はそう心に決め、氷の惑星を峠に投げ返した。
「ぬん!」
「あ? 投げ返しやがったか……そういやちょっと喉乾いてきたな……食うか」
峠は投げ返された惑星を口で受け止め、ガリガリとかみ砕いてしまった。
だがそれは峠でも支えきれずズウン! と轟音を立てて床に落ちてしまう。
「ああっ! オレの氷がぁ! オマエやりやがったな!」
「コイツ……手に負えん!」
「いやその前に三秒ルールだ! こいつはまだ食える……ってもう四秒経っちまったー! これじゃあこの氷はもう食えねえ……」
「意味が分からん。死ね!」
巨大な氷が床に落ちて落ち込む峠に天衣は飛び蹴りを放つ。
渾身の力で放たれたそれを峠は軽々と左手で受け止め。
「やってくれるじゃね~か……そんなオマエにはいいもん見せてやるよぉ……オレのトドメの、必殺技だぁ!」
「なにっ!?」
「ドラゴンバレットォ!!!」
些か不完全な形をしており、ビルと同じサイズの氷の竜を右手から出し突進させた。
竜は顎を開き、冷気と疾風を撒き散らしながら天衣に食らい付いた。
「ぐっ……ぐああああああああ!!! “コンフォートウィンク”」
氷の竜に食われる前に天衣は能力を使い、時を巻き戻した。
全ての事象が過去に引きずり込まれる。
「あ~出てきたはいいけど何しよっかなぁ~」
「…………」
水色の不気味なオーラを身に纏い薄笑いを浮かべる峠。
天衣はその異様さに動けずにいた……のではない。
峠の攻略方法について考えていた。
(さて……奴の大体の攻撃パターンは大体予想出来る……おそらく奴は凍牙が持っていた精密性を無くしている……威力はあれど攻撃自体はとても単調……故にそこを突いてやれば大した事は無い!)
天衣はそう結論付け、攻撃に備え拳を構える。
「いいや何でもいい! 今のうちにハシャギまくってやるぜー!」
「はっ!」
峠がそう言うと一瞬で屋上を覆い尽くす程の巨大な氷山が現れるが、それを知っている天衣は素早く空中に浮きあがり回避する。
「ふん」
「そぉい!」
峠は氷山をひっくり返して天衣にぶつけようとした。
だが天衣はその氷山を蹴って峠に送り返した。
「当たらない攻撃など無意味!」
「うおぅ! 帰ってきたか!」
峠は氷の山を氷で方向を変えさせ、隣のビルに激突させた。
ビルの壁が氷によって破壊される。
「ぎゃはははは! 最近のビル脆すぎだろぉ! 震度1でも壊れんじゃねーの!? まるでガキが作った砂の城みてーだなぁ! いや、そっちのが丈夫かぁ! 間違えてごめんなガキ共!」
(さして未来の変更は無い……おそらくほぼじ攻撃が来るだろう……)
天衣はゲラゲラと笑う峠を見ながらそう確信し、
また前回と同じ台詞を吐いた。
「戯けた事を言うな。子供が大人に勝つ事などある筈もない。もちろん貴様もだ!」
天衣はビルの壁を蹴って宙に浮かび、再び峠に踵落としを食らわせる。
峠の頭に踵が直撃し――。
「オレは踵落としよかダルマ落としの方が好きだぜ。上手いこと凍らせて固めりゃ絶対勝てるからな。お前とはやってやんねーけど!」
「それを待っていた」
「あ?」
天衣は氷の惑星を全力で受け止め、峠の上に落とす。
「ぬん!」
「あ? 投げ返しやがったか……そういやちょっと喉乾いてきたな……食うか」
そして氷の惑星を食べようとする峠の背後に回り込み、首筋に向けて当て身を放った。
「とうっ!」
「どわっ!? ぐっ、罠か……!」
「効かないだと!?」
峠は完璧な当て身に倒れそうになるも辛うじて持ちこたえた。
これで決まると高を括っていた天衣は少し狼狽する。
(私の攻撃では決定打に欠けるようだ……だが奴もこの状態は消耗が激しい筈だ……ここは持久戦で粘るしかあるまい)
天衣は考えを改め峠から距離を取り次の攻撃に備えた。
「やってくれるじゃね~か……そんなオマエにはいいもん見せてやるよぉ……オレのトドメの、必殺技だぁ!」
「ここで来るか……いいだろう」
「ドラゴンバレットォ!!!」
巨大な氷の竜が天衣に牙を剥く。
天衣は高く跳んでその竜から逃れる。
標的から逸れた氷の竜はそのまま真っ直ぐに突き進み隣のビルを刺し貫いた。
「やはり追尾性は無かったようだな」
「なっ……オレの必殺技がぁ~! 避けるなんて卑怯じゃねーか! 必殺じゃ無くなっちまうだろぉ!?」
「ふん……知らんな……」
「クソッ……お互い決定打に欠けるってのか……あともう一押しなんだよなぁ~」
峠がそうぼやいたその時。
下の階から足音が響いてきた。
「この音は……羽田君か?」
「その童顔クソ女ならもう倒したよ!」
「オマエは……!」
そう言い放って出てきたのは……琥珀だった。
「真打ち、登場よ……!」




