情報屋
翌日。
「上手い事言っておく、ね……」
私は教室の自分の席に座りながら何気なくそう呟いた。
あの後は色々と庭で黄玉の実験をして、それから麗紗と二人きりにされ百合モノのアニメを見せられて帰ったんだけど……。
「本当に千歳が麗紗を抑えられるのかな……」
一応RAINでは断れた。RAINでは。
でもあの麗紗だぞ……。
いや、ここは千歳を信用しよう……。
ちゃんとあの子を言いくるめてる所を実際に見ている訳だし。
「それなら……今の内に凍牙の件を何とかしないとな……」
またいつ麗紗が暴走するかも分からないし。
不発弾みたいな子だな本当に……。あの子に何年も仕えてる凍牙達は尊敬に値すると思う。
「黒萌早く来ないかな……あの子が来ないと話にならないのに……」
黒萌は結構遅めに学校に来るんだよな……。
とか思っていると。
「ふう、今日は早めに来れたわ!」
黒萌がいつになく早々と教室に入ってきた。
噂をすれば何とやらだな。
私はすぐに黒萌の下に行った。
「ねえ黒萌……朝っぱらから何だけどちょっと頼みがあってさ……」
「おっ? もしかして依頼? なら学校で話すのは無理よ! 私が情報屋ってバレちゃうし……RAIN交換しよ」
「あっそっか……確かに……じゃあ、はい」
黒萌がひそひそ声で私にそう言ってくる。
情報漏洩防止の為か……その辺はちゃんとしてるみたいだ。
「おっけ~。ふふっ、どんな依頼か楽しみにしておくわね!」
「ありがと!」
何やら悪辣な笑みを浮かべている黒萌。
この子に財閥の支社の社長の弱味を調べて欲しいなんて言ったらどんな顔をするんだろうとほくそ笑んだ。
*
*
*
(えええええええええ!? 桜月財閥の識英天衣の弱味!? 何であんたがそんな人の情報を……)
(ちょっと必要になったんだよ……)
(ま、まあいいや……早速調べてみるわ……)
(ありがとう)
学校が終わってから自分の部屋で黒萌と秘密の連絡をする私。
メッセージからでも黒萌の驚きの表情が目に浮かぶ。
こういう映画みたいな事をするのは滅茶苦茶楽しいな……! なんか凄くワクワクしてきた。
因みにこんなやり取りをRAINでしていいのかと黒萌に聞いたらその辺は黒萌のお爺ちゃんが何とかしてくれているらしい。
お爺ちゃん一体何者なんだ……。
(ある程度調べたから情報を打っていくわね)
(おお! よろしく!)
私が爺さんに気を取られている間に黒萌は一瞬でもう情報を集めてくれたみたいだ。
能力とはいえ早いな……。流石は情報屋って所かな?
(識英天衣……年齢は45歳で妻とは離婚……ここまではまあ普通なんだけど……)
(お? 何か特ダネあった?)
私のそのリプに少し間を置いてから黒萌はこんな事を送ってきた。
(この人……レベル10の特殊型特色者よ)
えっ……。
という事は。
識英天衣は麗紗と同じ強さを持っているって事か。
嘘だ……。
そんなの、強すぎる……。
凍牙があれだけ頭を抱えていた訳が、今分かった。
私がその事実に愕然をしていると、黒萌は大して気にもせず続けた。
(まあそれは置いといて。こいつ……全く犯罪とか浮気とかしてないわね……普通はこういう立場の人間って何かある筈なんだけどここまで何も無いのは珍しいわね……あ、でも敢えて言うなら死ぬ程臆病っていうかビビりっていうか……)
(ビビり? そんなレベル10なのに?)
臆病? レベル10でめっちゃ強い筈なのに一体どういう事なんだ。
(例えば……特に最近外国からミサイルが飛んでくるとかいうニュースも無いのに支社の地下にだだっ広い核シェルターが作られてるとか……)
(はあ?)
識英天衣のとんでもないスクープに私は思わず黒萌にそう聞き返した。
*
*
*
〇月×日
今日は琥珀先輩は来てくれない日でした。
寂しいです。虚しいです。苦しいです。
でも千歳が言ってました!
会えない時間が恋人同士の絆を深めるって!
……本当にそうなんですか、先輩。
永遠に側に居られるのが幸せなんじゃないですか。
この前血は貰い損なってしまったし、どうしたらいいんでしょう……。
琥珀先輩は私の世界なんです。
あの人無しではもう生きていけない。
でも先輩が会ってくれないという事は私に飽きてしまったという事。
そんなの……。
私死ぬしかないじゃないですか。
そう思って自分の首を能力で撥ねようとしたその時、私の脳内に天啓が降りたんです!
……先輩が私の事を嫌いでも、ずっとずっと見守って差し上げればいいんだって。
何でそんな簡単な事も分からなかったんでしょう!
これなら琥珀先輩を愚図から守れます!
これなら私の心は永遠に満たされます!
それじゃあ早速、実行しますか。
……ずっと私はお側に居ますからね、琥珀先輩♪




