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麗紗ちゃんは最狂メンヘラ  作者: 吉野かぼす
第二章 もう絶対に離しませんからね、先輩!
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推しの力

トラクターが凄まじい勢いで地面に激突する。

ズガアッッン! と轟音が響き砂煙が辺りに立ち込める。


「やったか?」

「そういうのをフラグっていうのよ耕一郎」

「へっ、ずいぶんと用語が達者になったじゃねえか!」


 砂煙が消えると、左腕一本でトラクターを抑えている麗紗の姿が見えた。

 ええ……あの子どんだけ強いんだよ……。


「まだまだぁ! オラオラどんどん行くぜ! ぶっつぶれちまえ!」


 耕一郎がトラクターを何個も作り出して麗紗にぶつけまくる。

 あの……仮にも上司だよね? 

 大丈夫なのかこれ。


「えいっ! とうっ! やあっ!」

 トラクターの嵐を麗紗は可愛いらしい? 掛け声を上げながら拳一つで防いでいく。トラクターは麗紗の拳に当たった瞬間弾け飛んでいる。


「ねえちょっと、同じレベル10にしては差がありすぎる気がするんだけど……麗紗だけやたら強くない? あの子まだ能力すら使ってないじゃん……」


「いやまあその……お嬢様ですから……」

「おい答えになってないぞ!」


 麗紗の所為でかなり霞んでるけど耕一郎はレベル10能力者って言うのは間違いない。

 能力の規模としてはレベル10の領域だと思う。なのに麗紗はその攻撃をあっさりいなしている。


 私の時は殆ど攻撃すらして来なかったからともかく、何でここまで強いんだろう。

 そもそも能力のレベルが上がる条件って何だ? 


 私がそう思考に耽っていると……。


「ああ~! 腹が減って力が出ねえ~っ! 畜生……!」

「私の勝ち~!」


 いつの間にか勝負が付いていた。

 耕一郎の能力は体内の炭水化物から農具を作り出す能力だから出し過ぎると腹が減って動けなくなるのか。本当能力自体は強いのに色々ダサいな……。


「よし、それじゃあ次は凍牙と琥珀ちゃんの番ね~!」

「行きましょう」


「もう私の番なの!? まあいいや……出よ」

 勝負服あるから痛くないらしいし、ここは皆に合わせよう。


「琥珀先輩がんばって~! きゃーっ!」

「う、うん……」


 麗紗が私に黄色い声援を送ってくる。

 なんかむず痒いな……でもちょっと嬉しい!


 私は応援で微妙に気合が入りつつも庭の中央に立って凍牙と向き合った。

「よし……レディ……ファイト!」

 また千歳がコングを鳴らし、私達の決闘が始まった。


 まず私が八重染琥珀を使って瞬時に距離を取る。

 凍牙は微動だにしない。何か仕掛けてるんだろう。


 でもそれは私も同じ事だ。

 私は八重染琥珀で両足を加速して凍牙に詰め寄った。

 しかし。


「きゃっ!?」

 何枚もの透明な壁に遮られてしまった。


 仕掛けてたのはあの氷か……! 厄介だな……! 

「引っ掛かりましたね!」


 透明な壁から氷弾が降り注ぐ。

 私はそれを八重染琥珀で自分の体に勢いを付けその弾幕から逃げた。


「なっ……! 躱した……!? 今までの琥珀さんなら絶対に食らっていた筈……」

 凍牙が何やら驚いているが知った事じゃない。


 私はまた足を加速させて間合いを詰め。

 拳を前に突き出して邪魔な透明な壁を全て破壊した。


 見えないんなら全部壊せばいいだけだ! 

 そして凍牙を八重染琥珀で勢いを増させた拳で殴りつける。


「くっ!」

 凍牙は咄嗟に氷を出して防ごうとする。でも私の拳はそれも貫き凍牙の体に届く!


「なっ!? やはり一昨日戦った時より明らかに威力が上昇している!」

「そうかもね! 知らんけど!」


 凍牙の体が衝撃のあまり後ろに下がる。

 私は今度は全身に八重染琥珀を発動させ、空中に浮かんだ。


 麗紗がそれを見てぽつりと呟く。

 同時に凍牙も驚いて目を剥いた。


「あれは琥珀先輩が私を止めたときの……!」

「……あの時はまだ本気を出していなかったのか……? ここまで多彩だとは……」


 私は八重染琥珀のエネルギーをしっかり行き渡らせながら足を前に突き出し、凍牙に教えてあげた。


「それは違うよ……私はあの時本気を出し切ってたよ。今の私が強いのは……我が推し、ストームのおかげよ! 食らえ推し活蹴り!!!」


 体全体を凄まじい速度で加速させ、全体重を懸けて凍牙を蹴り飛ばした!


「がはあああああああああっ!!!」

 凍牙は障壁まで吹き飛ばされ、勝負服が破けた。


 か、勝った……のか? 

 私があまりのあっけなさに勝利の実感が湧かず千歳の方を振り向くと、千歳はこくりと頷き。


「琥珀ちゃんの勝ち!」

「きゃ~っ! 琥珀先輩、さっすが~!」


「うん麗紗、凍牙が浮かばれないからあんまり言わないであげて……」


 私の勝利にはしゃぐ麗紗をよそに、私は八重染琥珀の異様な成長に自分でも驚いていた。

 そんな私に千歳が肩に手をポンと置いて聞いてきた。


「ねえ……琥珀ちゃんの“八重染琥珀”って……放出型なの?」

「うん……そうだよ。レベルは6だけど……何かめっちゃ強くなってる気がする……」


「そうよね……それもあるんだけど……ちょっとあなたの能力で調べたい事があるの。この試験管のなかに八重染琥珀を注いでくれないかしら?」

「ああ……分かった」


 調べたい事ってのは何だろう。

 気になりつつも私は言われるまま千歳の試験管に八重染琥珀を注ぐ。


「ありがとう。ちょっと私いまから調べてくるから決闘はまた今度やるわね」

「う、うん……」

「またね~千歳~」


 千歳はそう言って急ぎ足で研究所に戻ってしまった。


「一体何だったんだ……」

「千歳はよく調べたいものがあるって研究所に籠っちゃうんですよ~やっぱり科学者ですし、好奇心が凄いんでしょうね~」


「確かに……」

 千歳の凄い過去を思い出しながら科学者という人種は不思議な人種だなとしみじみ思った。








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