決闘
「ようこそ琥珀先輩! どうぞ上がってくださいっ!」
「おじゃましま~す……」
黒萌と仲良くなりつつも学校を終えた私は麗紗の屋敷に来ていた。
つまり三日連続。
もちろん最初は断ろうと思ったんだけど……。
(え? 来てくれないんですか先輩?)
(寂しいな……)
(あっ、そうだ! 私が琥珀先輩の家に行くというのはどうですか!?)
(琥珀先輩もお疲れでしょうし、私が行けば問題はありませんね!)
(ご挨拶もしておきたいですし!)
(何ならご飯は私が作りますよ!)
と、言われた。
この子親父達の前で何をしでかすか分からないからそれも丁重に断った。
そしたら……。
(……先輩は私と遊びたくないんですね)
(私と遊んでもつまらないんですね)
(もう私に飽きたんですね)
(分かりました)
(いくら先輩が優しいからといって厚かましい事を言ってすみませんでした)
(先輩が私を嫌いになっても私は先輩の事を想い続けていますから……)
(明日はずっと一人で居ますね)
って返されてすごくいたたまれなくなって結局押し切られた。
これ以上どうしろって言うんですか!?
まあいいや……ここのお菓子めっちゃ美味しいし……。
私は麗紗にぐいぐいと背中を押されつつも一人の時間を諦めた。
そうしてリビングに入ると、甘い香りがしてくる。
この香りは……。
「今日はクッキーですよ~」
「おお~っ! 頂きま~す!」
やっぱりクッキーだったな。
私がそれに手を伸ばそうとするとまた麗紗がその手を遮って。
「もうっ! 琥珀先輩! いつも私がやるからいいって言ってるじゃないですか~」
「ああ……ごめんごめん、美味しそうでつい……」
「……それなら許してあげます。はい、あ~ん」
「ん……うまっ!」
「きゃ~っ!(食べてる時が一番かわいいな琥珀先輩……)」
またあ~んをしてくる。
すっかり慣れた私は何の迷いもなくクッキーを味わう。これもまた美味しい。
「琥珀先輩、チョコもありますよ? あ~んっ!」
「ん……美味しい……」
「えへへ……これも全部私の手作りなんですよ!」
「毎回思うけど本当凄いよね……今度作り方教えてよ」
「えっと……その……(どうしよう……ずっと私のクッキーを食べて欲しいけど先輩と一緒に作るのもいいなあ……なんて究極の選択なの!)」
「あれ……どうしたの……」
何故か頭を抱える麗紗。
今困らせるような事言ったかな私……。
私がそんな麗紗におろおろとしていると、凍牙が厨房から出てきてこう言った。
「あっ、どうも琥珀さん。あれ、お嬢様? どうか致しましたか?」
「いや何でもないの……その……琥珀先輩が……」
「……あなたお嬢様に何かしたんですか!? 駄目ですよ!? いくらお嬢様があなたの事が好きとはいえやっていい事と悪い事があります! “フリーズバレット”!」
「いや勘違いだって! いきなり能力ぶちかまそうとしないでくれる!?」
麗紗の言葉に凍牙が目の色を変えて私に能力を撃とうとする。
こいつ……シスコンならぬ麗コンだな……。
前から思ってたけど完全にヤベー奴だ……。
「まあ、お嬢様が急に思い悩みになるのはいつもの事です。あなたが何かをした訳ではないだろうとは思いました」
「じゃあ尚の事能力使おうとするな! お前使用人の中じゃ一番強いだろ!」
「それは失礼しました……でも私は使用人の中では一番未熟ですよ? 耕一郎さんはもちろん、千歳さんも私より圧倒的に強いですし……」
「え? 私千歳と戦った時はあんた程は苦戦しなかったけど……」
「それは……あなたが強くなったのでは……」
「マジで?」
「はい。まあ千歳さんが本――」
「凍牙……何私抜きで先輩と喋ってるの……? あなたまさか先輩に惚れたの? いくら長年仕えているとはいっても目に余るわ。一回力の差を分からせてあげた方がいいかしら?」
「いえ、ご安心を。私は琥珀さんには全く女性としての魅力を感じませんよお嬢様」
「即答すんなクソ野郎! もうちょっとマシな言い方があるでしょ! ていうかお前敬語使ってる癖にめちゃくちゃ失礼じゃねーか!」
「おっと失礼しました」
「……ちょっと嫉妬した私がバカだったわ。それよりも琥珀先輩、まだまだおかわりはありますよ~」
凍牙のあんまりな言い方に麗紗も拍子抜けして私の口の前にクッキーを差し出す。
何でこんな使用人雇ってんだろ。料理は上手いけどさ……。
耕一郎に至っては本当にどういう目的で雇ったのかが分からない。
髪の毛緑色だったし多分特色者なんだろうけど……。
私が差し出されるクッキーを頬張りつつもそう考えていると、凍牙が何やらじーっと私の方を見て言った。
「……そんなに食べて太りませんか、琥珀さん」
「本当失礼だなこの野郎……」
「凍牙、あなた今月の給料減らすわよ……」
「お嬢様、それは困ります。それよりもたまには外で運動しませんか?」
「!? もしかしてアレをやるの? いいわね!」
「アレって何麗紗? テニスでもやるの?」
「決闘の事ですよ琥珀さん」
「不良かお前等! ここ財閥令嬢の屋敷だよね!? 誰だよこれ最初に提案した奴!」
「確か耕一郎だった筈です。大丈夫ですよ琥珀先輩、やり方は私が教えてあげますから! 一回やれば楽しさが分かりますよ!」
「あの元ヤン野郎! 箱入りのお嬢様になんてもん教えてやがる!」
「さっ、善は急げです。行きましょう先輩♪」
「いやああああああ! 私お淑やかな女の子なのに~!」
「この前の借りは返させて頂きますよ、琥珀さん♪」
「うわああああああ! こいつ言い出しっぺなだけに戦う気マンマンだー!」
そうして私は流れを変える事も出来ずに為すがまま屋敷の外へと連れて行かれたのであった……。
唐突に語られるキャラのコンセプト的なもの:弥栄琥珀編
初の女主人公なので割と作者に似たキャラにしようとして意外と似なかった人。限界オタクになったのはその辺が理由だったりします。今はどちらかと言うと少年漫画の主人公っぽい気が……。書きながら思った以上にイケメンな性格になっててびっくりです。
能力は作者自身そこそこ強いぐらいの奴が努力やら発見やらで強くなるのを見ているのが好きなのでこんな感じで落ち着きました。
付与する、という所にオタクの布教、を掛けてたり掛けてられていなかったりします。
八重染は八面六臂の活躍をする的な意味で付けました。




