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麗紗ちゃんは最狂メンヘラ  作者: 吉野かぼす
第一章 ここから私達の全てが始まったんですよね先輩!
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助けと取引

唐突に語られる設定②

フリーズバレットは精密性に片寄った能力。

八重染琥珀とは真逆の性能だが、とある理由で彼は能力を鍛えているので威力もそこそこある。

「でもそんな私でも胸だけはどうしようもなくて……これを入れる以外に方法が無かったのよ~!」

「それであんなコンプレックスになっちゃったのね……偶然とはいえ本当ごめん……」


「いやいやいや! 私もさっきは大人げなさ過ぎたわ。あとそれよりも私があなたの力になれる事なんだけど……」

「ああそうそう! 千歳はどういう感じで私を助けてくれるの?」


 私は千歳に一番聞きたかった事を聞いた。

 使用人って立場だから流石に共闘まではしてくれないと思うけど……。


「えーと、私は悪いけど直接手を下す訳にはいかないの。そこはごめんね……でもあの子の行動パターンと能力なら分かるからそれを教えられるのと……あとはいこれ。先に渡しておくわね」

「何この薬……」


 千歳が手渡してきたその薬は王冠の形をしており、虹色に輝いていた。綺麗ではあるけれどなんか体に悪そう。

 あとやっぱり共闘は無理か……。まあ千歳が居てもあの子に勝てる気はしないけど……。


「その薬の名前は“キングビースト”。これを飲めば身体の機能の全部の性能を引き出す事が出来るわ。もちろん、能力もね」

「なっ……! 強すぎでしょ……!」


「あっでも身体への負担が大きいから気を付けてね。あと出来るだけ話し合いで解決して欲しいし」

「えっ……話し合い前提? 本当に会話通じるの? それ使って逃げるって選択肢は……」


「やってみたら? 逃げられるんならね。相手は天災なのよ?」

「やっぱり駄目かあ……うう、しっかりしてよ特色機動隊……」


 私はあの化け物と戦わなければならない自分の運命を呪った。

 ずっと推しを見ていたい人生だった……。


「あのね……凍牙も言ってたみたいに相手は天災だけど普通の女の子なのよ? ちゃんと言えば分かってくれるの。私の手助けが必要になる時は、あの子がちょっと暴走しちゃった時だけ……だから琥珀ちゃん、安心して」


「……そのちょっと暴走するが滅茶苦茶怖いんだよ……」


「そんなの当たり前よ。私も最初は緊張したし。だからそれを何とかする為に私が協力してるの。まあでも……どうしても怖いんなら一旦引くのも手よ。すぐに見つかっちゃうだろうけど、心の準備が出来るのは大きいわ」


「分かった……そうさせて貰うよ」


 あの子に怯える私に千歳はそう落ち着かせてくれた。

 そして千歳は更にこう続ける。


「あの子と話し合う事になったら……難しいとは思うけど怖がらずに本音をぶつけなさいよ。その方が伝わるわ。嫌いなら嫌いって素直に言いなさい。あと……あの子の能力なんだけど―――」

 あの後色々と千歳に麗紗ちゃんの事を教えて貰って、今日の所はひとまず家に帰ってあの子になんて言うか頭を整理する事に決めた。


 千歳も最後には、「本当なら私達が止めなきゃいけないんだけど、今のあの子の脳内ほぼ全部あなたで占められてるから……ごめんなさい……」と謝っていた。


 そして今は外に出られるもう一つの出口がある温室と実験室を繋いでいる通路を歩いている。


 ていうか思ったけど麗紗ちゃんがああなったのって元はと言えばあの子の両親の所為だよね? 

 私の本当の敵はあの子の両親なのかもしれない。


 とか考えながら歩いていると、通路の出口に辿り着いた。

 確か最後の使用人の一人が居たはず。


 その人の事を千歳に聞いても「ああ、あの人の事なら全然気にしなくて大丈夫よ」の一点張りだったんだよな……。


 本当に大丈夫なんだろうな……これで麗紗ちゃんクラスの特色者とかだったら怒るぞ千歳。

 そう思いながら出口を通り抜けると―――。


 見た事もない観葉植物や見た事はあるけど名前が出てこない鳥みたいな形をした花や巨大なサボテンなどが私を待ち受けた。


 ここが……温室……。


「豪華すぎるでしょ……何でこんなものが……」

 流石は桜月財閥の令嬢が住む屋敷だけはある。まるで植物園だ。

 などと思っていると何故かナスやトマトが植わっていた。


 いや何で? 雰囲気ぶち壊しじゃん……。

 少なくともこの温室作った奴は美的センスの欠片も無さそうだった。


「へっくしょい!!」

「ほあっ!?」


 そんな風に温室を見ていると突然大きなクシャミが聞こえ、驚いて変な声が出てしまった。


「あん? 誰かいんのか?」

「あ……どうも……」


「……誰だお前……あ、思い出した、お前アイツの婿か!」

「誰が婿だ! 冗談じゃない!」


 声の主はひょっこりと木々の中から出てきて出会い頭に失礼な事を言ってきた。

 その声の主は30代前半くらいの無精ヒゲが生えたおっさん。顔にはサングラスをかけており、甚兵衛で身を包んでいる。


 外見のインパクトが凄いおっさんだなオイ……最後にとんでもない奴が出てきやがった。

 何だコイツ……。


「まあいいや不審者じゃなきゃ何だっていい。植物見たきゃ好きにしろ。おっと、くれぐれも荒らすんじゃねえぞ! もしあそこのサボテンとかを倒しでもしたらお前こやし塗れにしてやるからな!」


「さらっと恐ろしい事を言うな! あと私はここを見に来たわけじゃ――」

「あ? じゃあお前ここに何しに来やがったんだ? まさか逃げる気か?」

「なっ……!」


 しまった。

 コイツこんな見た目と言動に反して意外と鈍くない……! まさか、千歳が何も言わなかったのは罠……!? 


「悪ィな、これでお前をただで通す訳にはいなくなったぜ……!」

「くっ……」


 私の行く手に仁王立ちするおっさん。

戦うしかないのか……かなり強そうだけど大丈夫かな……。


 いや、勝つ。それしかないんだ!

 私は八重染琥珀を発動させる準備を―――。


「おいお前俺と取引しろ。俺がお前を見逃がしてやるからお前は俺が見逃したって事はアイツに絶対に言うなよ。アイツに俺の事を聞かれたらちゃんと上手く隙を付きましたって言うんだ。な? 悪い話じゃねえどころかお前だいぶ得してるだろ? お前はアイツから逃げたい。俺はお前なんか放っておいてさっさと三国志が読みたい。な、利害が一致してんだよ。ほら、『私はちゃんと隙を付いてここから逃げました』って言え! それで皆が幸せになるんだ! おら!」


「………………」


 そう言って携帯の録音画面を差し出してくるおっさん。

 何だコイツ……。さっきまで戦う気マンマンだった私のやる気を返せ。


 でも、確かにおっさんの言っている事は私にとっては得でしかない。突っ込み所は多いけどここは素直に従うか……。


「えーと、私はちゃんと隙を付いてここから逃げました。これでいい?」

「よし、お前は賢い奴だな。ほら、さっさと行けよ。出来るだけ早く逃げた方がいいだろ?」


「何か釈然としないけどとりあえずありがとう……」

「おう、頑張って逃げろよ~」

 そうして私はおっさんに見送られながらももう一つある奥の温室へと走っていった。







唐突に語られる設定③

悟りのスピカを持つ黒萌の身体能力は、俊敏性に長けている反面パワーはあまり無い。

それでもレベル7の身体強化型程度にはある。

(力が上がり続ける漢野は例外)

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